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伊豆、仁義なき女たちの戦い(中編)
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「海の家での食事といえば、やっぱりラーメン・カレー・焼きそばが定番だね! どれもたくさん作ってあるから、一杯食べるんだよ」
「わ~い! リク、どれから食べる?」
「どれからって言われても……どれも十皿ずつないか?」
普段は混雑している海の家の食事スペースに、ラーメンなどが大量に置かれていた。腹はたしかに空いているが、ここまでの量を食べきれる自信はない。すると助け船のつもりなのか、須佐之男と月読が手を伸ばしてきた。
「俺達もちょうど腹が減っていたんだ、ありがたくいただくよ」
だが二人の手をおばちゃんは払いのけると、鬼のような形相で二人を睨みつける。
「誰が食って良いと言った? あんたらは海に潜って、スベスベマンジュウガニあたりを捕まえて喰えば良い」
「……俺達に死ねと言うのか、大気都 姫」
「どうせ喰っても死にゃあしないよ。でも残ったのを食べる分には、うるさくは言わないから安心おし。まあラーメンはスープを吸って、麺が伸びきっているだろうけどね」
麺が伸びきったラーメンを食わせるのは流石に忍びなく、陸達はラーメンから優先して食べることにした。
「そういえば月読先生は、授業何を担当しているんだ? 受けた記憶がないんだが」
「主に化学よ。君は生物を選択してたから、オネェさんの担当じゃないの。ゴメンネ」
オネェ教師に残念がられても嬉しくない、ここで飯も食べずにまた酒を飲み始めた天照が月読に話しかける。
「月読博士、例の試作品は完成したのですか?」
「はい姉上、今回の旅行で性能を確認する予定です」
そう言いながら月読は、ウミに船の形をあしらったペンダントを渡した。
「ウミちゃん、最終日に試作品の評価試験を行うわ。協力してちょうだい」
「リョウカイ! ああ、最終日が待ち遠しいネ♪」
「評価試験?」
陸の疑問に対して、クゥが月読の代わりに答える。
「ウミに新しい装備を追加したの、その性能を確かめるためにこの海岸を貸し切りにして試験を行う。何を追加したのかは、ワタシもまだ知らない」
「さて本日は懇親旅行の最終日ですが……あいにくの空模様となっております」
「あいにくというか、すでにどしゃ降りだろ」
天照のあいさつに陸がツッコミを入れた。空には暗雲が広がり、滝のような雨が朝から降り続いている。これだけ雨が降っている中で評価試験を行うと、正しい性能を引きだすことが出来ないかもしれない。そう考えたのか天照は携帯を取り出すと、どこかに電話をかけ始めた。
「……ええ、そうです。大土肥海水浴場付近の海域の天気を、快晴にしてください。はいお手数をおかけします」
天照が電話を切ると同時に、空を覆っていた雨雲が瞬く間に晴れわたる。彼女の電話の相手が誰か気になった陸は、その相手の名を聞いてみた。
「もしかしてあのどしゃ降りを晴れに変えたのは、今の電話の相手?」
「はい、そうです。住吉の神には、あとで勝湖のワインでも贈ってあげないと……」
海上交通の守り神である住吉の神の力で、この海岸一帯の天気を変えさせたらしい。陸が唖然としていると、海上に多数の黒い球体が姿を見せる。
「お~! あれが評価試験で使う的か、ずいぶんと大量に用意するんだな?」
「そんな訳ないでしょ! あれは全部、正真正銘本物のデモンです!?」
「マジかよ!? ここから見るだけでも、百以上あるぞ!」
陸が驚くのも無理もない。これまで一つずつ出なかったデモンが、一気に百体以上出現しようとしているのだ。おまけにどれが爵位をもつデモンなのかも分からない、これだけの数の敵を倒すには火力が少なすぎる!
「ツクヨミ! 例の新装備、この場で試してみることにするヨ」
「危険よウミちゃん! もしものことがあったら、危ないわ」
「あれだけの数のデモンが実体を得たら、どれだけの被害が出るかワカラナイ。普段役に立てない分、ここで働かせてもらうわ」
月読が止めるのも聞かず、ウミは一直線に海岸へ走り出した。そしてペンダントを取り出すと、お約束の言葉を口にする。
「変身!」
ウミの変身もクゥと同じく、身体の線がはっきりと分かるものだった。だが変身の途中で月読の手で目を塞がれ、最後まで見ることが出来ない。
「はい、そこまで。若い男の子の視線に晒すのは忍びないわ、そんなに見たいのなら今晩私の変身する姿を……」
「断固として拒否します!」
そんなくだらない言い争いをしていると、ウミの変身が終わったのか月読が塞いでいた手を離した。そしてウミの本当の姿を見た陸は、その場で腰を抜かしてしまう……。
「……ウミ。それがお前の本当の姿なのか!?」
『リク、驚いた? エヘヘ、これがワタシの本当の姿なのだ♪』
海上に姿を見せているのは一隻の船。アメリカ海軍タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の二十七番艦、ポート・ロイヤルだった!
『それじゃあ早速、新装備の実験開始!』
ウミが叫ぶと同時に警報音が鳴り響き、艦上のミサイル・セルの蓋が開く。そして彼女に搭載されたトマホークミサイルが次々と発射された。
『た~まや~! 記念すべき第一射だから、トマホークを百二十二セル全ての発射口から射ち出してみたネ♪』
「あれが全部トマホーク!?」
大土肥海岸防衛戦の幕は、空を覆い尽くすミサイルを合図に開かれたのである……。
「わ~い! リク、どれから食べる?」
「どれからって言われても……どれも十皿ずつないか?」
普段は混雑している海の家の食事スペースに、ラーメンなどが大量に置かれていた。腹はたしかに空いているが、ここまでの量を食べきれる自信はない。すると助け船のつもりなのか、須佐之男と月読が手を伸ばしてきた。
「俺達もちょうど腹が減っていたんだ、ありがたくいただくよ」
だが二人の手をおばちゃんは払いのけると、鬼のような形相で二人を睨みつける。
「誰が食って良いと言った? あんたらは海に潜って、スベスベマンジュウガニあたりを捕まえて喰えば良い」
「……俺達に死ねと言うのか、大気都 姫」
「どうせ喰っても死にゃあしないよ。でも残ったのを食べる分には、うるさくは言わないから安心おし。まあラーメンはスープを吸って、麺が伸びきっているだろうけどね」
麺が伸びきったラーメンを食わせるのは流石に忍びなく、陸達はラーメンから優先して食べることにした。
「そういえば月読先生は、授業何を担当しているんだ? 受けた記憶がないんだが」
「主に化学よ。君は生物を選択してたから、オネェさんの担当じゃないの。ゴメンネ」
オネェ教師に残念がられても嬉しくない、ここで飯も食べずにまた酒を飲み始めた天照が月読に話しかける。
「月読博士、例の試作品は完成したのですか?」
「はい姉上、今回の旅行で性能を確認する予定です」
そう言いながら月読は、ウミに船の形をあしらったペンダントを渡した。
「ウミちゃん、最終日に試作品の評価試験を行うわ。協力してちょうだい」
「リョウカイ! ああ、最終日が待ち遠しいネ♪」
「評価試験?」
陸の疑問に対して、クゥが月読の代わりに答える。
「ウミに新しい装備を追加したの、その性能を確かめるためにこの海岸を貸し切りにして試験を行う。何を追加したのかは、ワタシもまだ知らない」
「さて本日は懇親旅行の最終日ですが……あいにくの空模様となっております」
「あいにくというか、すでにどしゃ降りだろ」
天照のあいさつに陸がツッコミを入れた。空には暗雲が広がり、滝のような雨が朝から降り続いている。これだけ雨が降っている中で評価試験を行うと、正しい性能を引きだすことが出来ないかもしれない。そう考えたのか天照は携帯を取り出すと、どこかに電話をかけ始めた。
「……ええ、そうです。大土肥海水浴場付近の海域の天気を、快晴にしてください。はいお手数をおかけします」
天照が電話を切ると同時に、空を覆っていた雨雲が瞬く間に晴れわたる。彼女の電話の相手が誰か気になった陸は、その相手の名を聞いてみた。
「もしかしてあのどしゃ降りを晴れに変えたのは、今の電話の相手?」
「はい、そうです。住吉の神には、あとで勝湖のワインでも贈ってあげないと……」
海上交通の守り神である住吉の神の力で、この海岸一帯の天気を変えさせたらしい。陸が唖然としていると、海上に多数の黒い球体が姿を見せる。
「お~! あれが評価試験で使う的か、ずいぶんと大量に用意するんだな?」
「そんな訳ないでしょ! あれは全部、正真正銘本物のデモンです!?」
「マジかよ!? ここから見るだけでも、百以上あるぞ!」
陸が驚くのも無理もない。これまで一つずつ出なかったデモンが、一気に百体以上出現しようとしているのだ。おまけにどれが爵位をもつデモンなのかも分からない、これだけの数の敵を倒すには火力が少なすぎる!
「ツクヨミ! 例の新装備、この場で試してみることにするヨ」
「危険よウミちゃん! もしものことがあったら、危ないわ」
「あれだけの数のデモンが実体を得たら、どれだけの被害が出るかワカラナイ。普段役に立てない分、ここで働かせてもらうわ」
月読が止めるのも聞かず、ウミは一直線に海岸へ走り出した。そしてペンダントを取り出すと、お約束の言葉を口にする。
「変身!」
ウミの変身もクゥと同じく、身体の線がはっきりと分かるものだった。だが変身の途中で月読の手で目を塞がれ、最後まで見ることが出来ない。
「はい、そこまで。若い男の子の視線に晒すのは忍びないわ、そんなに見たいのなら今晩私の変身する姿を……」
「断固として拒否します!」
そんなくだらない言い争いをしていると、ウミの変身が終わったのか月読が塞いでいた手を離した。そしてウミの本当の姿を見た陸は、その場で腰を抜かしてしまう……。
「……ウミ。それがお前の本当の姿なのか!?」
『リク、驚いた? エヘヘ、これがワタシの本当の姿なのだ♪』
海上に姿を見せているのは一隻の船。アメリカ海軍タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の二十七番艦、ポート・ロイヤルだった!
『それじゃあ早速、新装備の実験開始!』
ウミが叫ぶと同時に警報音が鳴り響き、艦上のミサイル・セルの蓋が開く。そして彼女に搭載されたトマホークミサイルが次々と発射された。
『た~まや~! 記念すべき第一射だから、トマホークを百二十二セル全ての発射口から射ち出してみたネ♪』
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