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第8話 新たな食料(モンスター)を求めて
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「今までずっとタダで宿に泊まらせてくれて有難うございました!」
「よせよ、息子達の命の恩人に返す礼としてはまだまだ足りねえからよ。時々は後ろの姉ちゃんと一緒に飯でも食べに来てくれ、うんとサービスするからよ」
「宿を出ると言ってもこのルピナスで住む家が見つかったからですし、また親父さんの作る飯を食べに来ますよ」
「おう、そうしてくれ!」
ギルドから新しい家に帰る途中、必要な食材を買いながら立ち寄ったミシェルの実家の宿でハジメは親父さんと話をしていた。しかし親父さんは勿論だが宿の客達もハジメの後ろに居る女性がベルンウッドの愛人だとは全く気付いていなかった。
前領主グエンバルムと商人ベルンウッドによる人身売買事件を解決した報酬として、ハジメには金貨50枚と1件の家が与えられた。更にその功績の大きさから冒険者登録を仮登録から本登録に切り替えられランクもGからEに格上げされた、ただしEとなれたのは指名依頼の前にゴブリンを喰いまくっていたのが主な原因だった。そしてハジメにはギルドからの報酬とは別に公爵家からも有名な刀匠に作らせた1本のナイフが贈られた、当初代理人の執事から金銭を渡されそうになったのを固辞した為だ。
「何も知らなかったとはいえ、結果的に俺がした事は公女に死の恐怖を与えただけだ。謝礼を渡される事は何1つしていない、それでも何か渡さないと世間体を保てないならモンスターを捌くのに使えそうなナイフを1本くれ」
そして渡された刀匠が打ち上げた渾身の逸品は多少無茶な使い方をしても決して刃こぼれしないらしい、ミリンダから鑑定額を聞かされたハジメは泡を吹いて気絶しそうになった。ルピナスの家を数件分買える金額だったからだ。
不敬罪で斬首にされそうになっていた公女は現在、勇者と一緒に絶賛逃亡中で送られる刺客を勇者は次々と返り討ちにしているらしい。聞く所によると素手で大穴を作ったとか魔術師の魔法を跳ね返したあげくそれよりも高位の魔法を見せ付けて追い払った等ふざけた能力のオンパレードを勇者はどうやらシスティナから与えられている様だ。
「あなたも十分ふざけた能力を持っていると思うのだけど?」
ギルドの応接間でミリンダに茶化されながら、ハジメは1枚の書面にサインしていた。
「はい、これで手続きは全て終了よ。あなたは現時点をもって彼女セシリア・ドゥーチェの身元保証人となったわ、この書面に記入されている金額をあなたは保釈料並びに彼女の賠償金の代わりとして支払った。セシリア・ドゥーチェにはハジメ・サトウの家から1人で出る事が出来ない束縛術が常時掛けられています、彼女が同額を支払うかあなたがその書面を破棄しない限り術が解ける事は有りません。命の恩人から逃げ出そうとは思わないでしょうけど、一応念の為だからこれ位我慢してね」
ハジメが書面を受け取ると隣に座っていたセシリアの首に一瞬だけ茨の紋様が浮かび上がった、どうやら書面を受け取った事でセシリアへの束縛術が発動したらしい。するとセシリアがハジメの方に身体を向けて主従の誓いを言ってきた。
「この度はこんな私の命を救ってくれて本当に有難う御座いました、お礼になるかは分かりませんが私の身体を好きにして構いません。今から私はあなたの所有物です」
(奴隷制度は廃止されていると言っていたけど実際はこんな形で存続させている訳ね、ベルンウッド達のしていた人身売買もこれを上手く利用していたって暗に種明かしをする辺りこのギルド長は相変わらず曲者だ)
そう考えながらハジメは受け取ったばかりの書面を窓から放り投げた、そして・・・
「発火」
書面が灰になった瞬間、セシリアの首に掛けられた束縛術も粉々になって砕け散った。
「えっ!?」
呆然としているセシリアの顔をミリンダがニヤニヤしながら見ていた、俺ならきっとこうすると既に予想していたのだろう。
「はい、これで君は完全に自由の身となったよ。これからは愛人なんてならずに誰か好きな人でも探して小さな幸せを見つけると良いよ」
応接間からそのまま出ようとするハジメの服の袖をセシリアが手を伸ばして握った。
「あの・・・でしたら、私をハジメ様の家政婦として雇って頂けませんか?」
「はいっ!?」
「私がベルンウッドの愛人であった事はルピナスの人達に知れ渡っております、そんな私を急に雇ってくれる場所なんて有りません。ですから、ほとぼりが冷めて住人が忘れるまで傍に置いてください」
確かに今回の騒動でセシリアが愛人だった事は多くの住人の耳に入ってしまった、もし雇ったとしても妾にしたのを誤魔化す為と思われるかもしれない。周囲から奇異の目で見られるのを避けたい人はセシリアを雇う事はしないだろう、ここら辺の配慮が確かに足りなかったなとハジメは思った。
「分かったよ、君の住む家もいずれは見つけないといけないけど暫くの間はウチで住み込みで働くと良いよ。どうせ俺1人しか居ないから部屋は余っているしね、あと済まないけど濃い化粧や如何わしい服装で家の中を歩かれても困るから化粧を落として普通の格好に戻してもらっても良いかな?」
「はい、かしこまりました」
家に帰る前にミリンダに適当な服を用意して貰ってから、ハジメはセシリアを連れてギルドを出た。染めていた髪を戻し化粧を落としたセシリアの顔はどこか純朴そうに見えた。
「そうだ、家にまだ食材の買い置きが無かったから市場に寄りながら帰ろう」
「はい」
露天を幾つか回り、2人で食べていくのに必要な分を買い揃えていく。持ち切れない分は露天商に後で運んでくれる様に頼んで2人は食堂に入ると早い夕食を済ませる事にした。
「こういう所で食事するのも本当に久しぶりです」
セシリアがどこか嬉しそうな顔でパンを食べているのを見たハジメはベルンウッドの愛人となった経緯を聞いてみた。
「どうしてセシリアはあいつの愛人になんてなったんだ?」
一瞬セシリアの動きが止まったが、彼女は少しずつ事情を話してくれた。
「私の住んでいた村は立ち寄る人も少なく畑も痩せていて貧しい生活が続いていました、そして母親が体調を崩したのがキッカケで私はルピナスに母親の治療費を稼ぐ為に出てきたのです」
「・・・・・」
「ですが、田舎から出てきた私をこの町の人は安い賃金で働かせようとしました。そこで少しでも高い賃金の場所を探していく内に連れ込み宿を兼ねた酒場で働く様になり、そしてベルンウッドの目に留まったのです」
「母親の体調はもう回復されているのか?」
「ええ大分、だけど妹達の食べていく分だけでも私が少しでも稼いであげないと。お金は一杯貢いでもらったけど着る服や化粧品とか彼の好みに合わせてたから実際に実家に送れたのは大した金額じゃなかったわ」
(ミリンダの事だから、きっと彼女が愛人となった事情は既に把握していたんだろうな)
でなければハジメを身元保証人にして解放しようとはしなかっただろう、恐らくそんな気がする。食事を終えた2人は今まで世話になっていた宿の親父さんに軽く挨拶を済ませると閑静な住宅街に向かった、ここにミリンダから報奨として与えられた家が在る。リビングとキッチン、そして部屋が5つあり風呂とトイレまで有った。
初めて見た時にビックリしたのはトイレの仕組みだ、家の敷地内に大きな樽を埋めておいてそこに出した物が流れ落ちる。すると樽の中には森で捕まえたピンクスライムが入れてあり、それを食料代わりに食べるので詰まる心配も不要だそうだ。
(俺が喰った奴も、喰われていなければ今頃誰かのトイレの後始末に使われていたのかもしれないのか・・・)
モンドール村では排泄物は貴重な肥えとして使われていたので、ここで村と町の生活水準の差を思い知らされる結果となった。
翌朝、セシリアの作った朝食を頂いたハジメはその料理の腕に舌を巻いた。
「たったこれだけの調味料でこんなに美味しく作れるの!?」
「素材本来の味を引き出すには調味料もほんの少しだけで良いのです、濃い味付けは調味料を自由に使える程裕福だという事を周囲に見せ付けたい金持ちのする事です。浮いた分は晩酌の時に出すお酒で還元させて頂きます」
「お酒は節約しないんだ?」
「良い酒と安物の酒の味の違いを知っておく事は今後のハジメ様の為になると思いますので。これから身分の高い方と接する機会が増えた時に安酒の味しか知らないと馬鹿にされてしまいますから出来る限り良い酒を見つけておく様にします」
準備を整えたハジメが町の外に向かおうとすると、セシリアが小さな包みを手渡してきた。中を見るとサンドイッチが入っている。
「ハジメ様はその・・・モンスターを食べられると聞いております。ですが、お口直しにこちらもどうか食べてください」
言い終えるとセシリアは家の奥に走り去るとドタバタと大きな音がしだした、部屋の掃除を始めているのだろうがハタキの音が何だか荒っぽい。
(これって何だか新婚夫婦みたいな雰囲気だな・・・)
ハジメも急に気恥ずかしくなると奥に居るセシリアに向かって声を掛けた。
「それじゃあ行ってくるよ、夕方位には帰るから!」
「分かりました、お帰りをお待ちしています」
家を出たハジメは軽い足取りで町の外へ出て新しい狩場へと向かった。
森の中に足を踏み入れたハジメは本日のお目当てのモンスターを探し始めた。
「スパイダー、スパイダー。蜘蛛は確か味がカニに近いって聞いた覚えが有るのだけど似ていてくれると助かるんだよな」
今日の目的は蜘蛛系モンスターがカニの味かどうかを確かめる為では無い、ハジメは自分でも糸を出せる様になるのかどうかを確かめたいのだ。ベルンウッドの屋敷に忍び込む際に身体を液状化させて壁を抜けたが、他にも幾つか方法を作っておきたい。でもどうせならカニ風味であれば食べやすくて助かるという安直な考えではあるが、もし考えている通りの能力を手に入れる事が出来れば大きな力となるだろう。
そうして探し始めてみたが、まず最初に見つけたのはスパイダーでは無くて白い蛇ホワイトスネークだった。早速頂いたナイフで頭を飛ばして血抜きをして骨を取り除き、発火で軽く炙ると香ばしい匂いが周囲に広がった。
「いただきま~す」
早速食べてみると、味はウナギとアナゴの中間みたいな感じだった。ホワイトスネークに養殖物が存在するとは思えないので、間違い無く天然物の味だ。
(ワサビ醤油誰か作ってくれないかな?)
そんな事を考えていると、ホワイトスネークの白焼きの匂いに惹かれてきたのか1匹のコボルトが姿を現した。ゴブリンが鶏肉風味だったのでコボルトも何かの肉の味に違いない、勝手にそう判断したハジメはコボルトを倒して火を通すとその腕に齧り付いた。
「これ、ビールが凄く欲しくなる味だ」
コボルトはビーフジャーキーの味でした・・・。
今回手に入れた能力=【熱感知】・【嗅覚向上】
「よせよ、息子達の命の恩人に返す礼としてはまだまだ足りねえからよ。時々は後ろの姉ちゃんと一緒に飯でも食べに来てくれ、うんとサービスするからよ」
「宿を出ると言ってもこのルピナスで住む家が見つかったからですし、また親父さんの作る飯を食べに来ますよ」
「おう、そうしてくれ!」
ギルドから新しい家に帰る途中、必要な食材を買いながら立ち寄ったミシェルの実家の宿でハジメは親父さんと話をしていた。しかし親父さんは勿論だが宿の客達もハジメの後ろに居る女性がベルンウッドの愛人だとは全く気付いていなかった。
前領主グエンバルムと商人ベルンウッドによる人身売買事件を解決した報酬として、ハジメには金貨50枚と1件の家が与えられた。更にその功績の大きさから冒険者登録を仮登録から本登録に切り替えられランクもGからEに格上げされた、ただしEとなれたのは指名依頼の前にゴブリンを喰いまくっていたのが主な原因だった。そしてハジメにはギルドからの報酬とは別に公爵家からも有名な刀匠に作らせた1本のナイフが贈られた、当初代理人の執事から金銭を渡されそうになったのを固辞した為だ。
「何も知らなかったとはいえ、結果的に俺がした事は公女に死の恐怖を与えただけだ。謝礼を渡される事は何1つしていない、それでも何か渡さないと世間体を保てないならモンスターを捌くのに使えそうなナイフを1本くれ」
そして渡された刀匠が打ち上げた渾身の逸品は多少無茶な使い方をしても決して刃こぼれしないらしい、ミリンダから鑑定額を聞かされたハジメは泡を吹いて気絶しそうになった。ルピナスの家を数件分買える金額だったからだ。
不敬罪で斬首にされそうになっていた公女は現在、勇者と一緒に絶賛逃亡中で送られる刺客を勇者は次々と返り討ちにしているらしい。聞く所によると素手で大穴を作ったとか魔術師の魔法を跳ね返したあげくそれよりも高位の魔法を見せ付けて追い払った等ふざけた能力のオンパレードを勇者はどうやらシスティナから与えられている様だ。
「あなたも十分ふざけた能力を持っていると思うのだけど?」
ギルドの応接間でミリンダに茶化されながら、ハジメは1枚の書面にサインしていた。
「はい、これで手続きは全て終了よ。あなたは現時点をもって彼女セシリア・ドゥーチェの身元保証人となったわ、この書面に記入されている金額をあなたは保釈料並びに彼女の賠償金の代わりとして支払った。セシリア・ドゥーチェにはハジメ・サトウの家から1人で出る事が出来ない束縛術が常時掛けられています、彼女が同額を支払うかあなたがその書面を破棄しない限り術が解ける事は有りません。命の恩人から逃げ出そうとは思わないでしょうけど、一応念の為だからこれ位我慢してね」
ハジメが書面を受け取ると隣に座っていたセシリアの首に一瞬だけ茨の紋様が浮かび上がった、どうやら書面を受け取った事でセシリアへの束縛術が発動したらしい。するとセシリアがハジメの方に身体を向けて主従の誓いを言ってきた。
「この度はこんな私の命を救ってくれて本当に有難う御座いました、お礼になるかは分かりませんが私の身体を好きにして構いません。今から私はあなたの所有物です」
(奴隷制度は廃止されていると言っていたけど実際はこんな形で存続させている訳ね、ベルンウッド達のしていた人身売買もこれを上手く利用していたって暗に種明かしをする辺りこのギルド長は相変わらず曲者だ)
そう考えながらハジメは受け取ったばかりの書面を窓から放り投げた、そして・・・
「発火」
書面が灰になった瞬間、セシリアの首に掛けられた束縛術も粉々になって砕け散った。
「えっ!?」
呆然としているセシリアの顔をミリンダがニヤニヤしながら見ていた、俺ならきっとこうすると既に予想していたのだろう。
「はい、これで君は完全に自由の身となったよ。これからは愛人なんてならずに誰か好きな人でも探して小さな幸せを見つけると良いよ」
応接間からそのまま出ようとするハジメの服の袖をセシリアが手を伸ばして握った。
「あの・・・でしたら、私をハジメ様の家政婦として雇って頂けませんか?」
「はいっ!?」
「私がベルンウッドの愛人であった事はルピナスの人達に知れ渡っております、そんな私を急に雇ってくれる場所なんて有りません。ですから、ほとぼりが冷めて住人が忘れるまで傍に置いてください」
確かに今回の騒動でセシリアが愛人だった事は多くの住人の耳に入ってしまった、もし雇ったとしても妾にしたのを誤魔化す為と思われるかもしれない。周囲から奇異の目で見られるのを避けたい人はセシリアを雇う事はしないだろう、ここら辺の配慮が確かに足りなかったなとハジメは思った。
「分かったよ、君の住む家もいずれは見つけないといけないけど暫くの間はウチで住み込みで働くと良いよ。どうせ俺1人しか居ないから部屋は余っているしね、あと済まないけど濃い化粧や如何わしい服装で家の中を歩かれても困るから化粧を落として普通の格好に戻してもらっても良いかな?」
「はい、かしこまりました」
家に帰る前にミリンダに適当な服を用意して貰ってから、ハジメはセシリアを連れてギルドを出た。染めていた髪を戻し化粧を落としたセシリアの顔はどこか純朴そうに見えた。
「そうだ、家にまだ食材の買い置きが無かったから市場に寄りながら帰ろう」
「はい」
露天を幾つか回り、2人で食べていくのに必要な分を買い揃えていく。持ち切れない分は露天商に後で運んでくれる様に頼んで2人は食堂に入ると早い夕食を済ませる事にした。
「こういう所で食事するのも本当に久しぶりです」
セシリアがどこか嬉しそうな顔でパンを食べているのを見たハジメはベルンウッドの愛人となった経緯を聞いてみた。
「どうしてセシリアはあいつの愛人になんてなったんだ?」
一瞬セシリアの動きが止まったが、彼女は少しずつ事情を話してくれた。
「私の住んでいた村は立ち寄る人も少なく畑も痩せていて貧しい生活が続いていました、そして母親が体調を崩したのがキッカケで私はルピナスに母親の治療費を稼ぐ為に出てきたのです」
「・・・・・」
「ですが、田舎から出てきた私をこの町の人は安い賃金で働かせようとしました。そこで少しでも高い賃金の場所を探していく内に連れ込み宿を兼ねた酒場で働く様になり、そしてベルンウッドの目に留まったのです」
「母親の体調はもう回復されているのか?」
「ええ大分、だけど妹達の食べていく分だけでも私が少しでも稼いであげないと。お金は一杯貢いでもらったけど着る服や化粧品とか彼の好みに合わせてたから実際に実家に送れたのは大した金額じゃなかったわ」
(ミリンダの事だから、きっと彼女が愛人となった事情は既に把握していたんだろうな)
でなければハジメを身元保証人にして解放しようとはしなかっただろう、恐らくそんな気がする。食事を終えた2人は今まで世話になっていた宿の親父さんに軽く挨拶を済ませると閑静な住宅街に向かった、ここにミリンダから報奨として与えられた家が在る。リビングとキッチン、そして部屋が5つあり風呂とトイレまで有った。
初めて見た時にビックリしたのはトイレの仕組みだ、家の敷地内に大きな樽を埋めておいてそこに出した物が流れ落ちる。すると樽の中には森で捕まえたピンクスライムが入れてあり、それを食料代わりに食べるので詰まる心配も不要だそうだ。
(俺が喰った奴も、喰われていなければ今頃誰かのトイレの後始末に使われていたのかもしれないのか・・・)
モンドール村では排泄物は貴重な肥えとして使われていたので、ここで村と町の生活水準の差を思い知らされる結果となった。
翌朝、セシリアの作った朝食を頂いたハジメはその料理の腕に舌を巻いた。
「たったこれだけの調味料でこんなに美味しく作れるの!?」
「素材本来の味を引き出すには調味料もほんの少しだけで良いのです、濃い味付けは調味料を自由に使える程裕福だという事を周囲に見せ付けたい金持ちのする事です。浮いた分は晩酌の時に出すお酒で還元させて頂きます」
「お酒は節約しないんだ?」
「良い酒と安物の酒の味の違いを知っておく事は今後のハジメ様の為になると思いますので。これから身分の高い方と接する機会が増えた時に安酒の味しか知らないと馬鹿にされてしまいますから出来る限り良い酒を見つけておく様にします」
準備を整えたハジメが町の外に向かおうとすると、セシリアが小さな包みを手渡してきた。中を見るとサンドイッチが入っている。
「ハジメ様はその・・・モンスターを食べられると聞いております。ですが、お口直しにこちらもどうか食べてください」
言い終えるとセシリアは家の奥に走り去るとドタバタと大きな音がしだした、部屋の掃除を始めているのだろうがハタキの音が何だか荒っぽい。
(これって何だか新婚夫婦みたいな雰囲気だな・・・)
ハジメも急に気恥ずかしくなると奥に居るセシリアに向かって声を掛けた。
「それじゃあ行ってくるよ、夕方位には帰るから!」
「分かりました、お帰りをお待ちしています」
家を出たハジメは軽い足取りで町の外へ出て新しい狩場へと向かった。
森の中に足を踏み入れたハジメは本日のお目当てのモンスターを探し始めた。
「スパイダー、スパイダー。蜘蛛は確か味がカニに近いって聞いた覚えが有るのだけど似ていてくれると助かるんだよな」
今日の目的は蜘蛛系モンスターがカニの味かどうかを確かめる為では無い、ハジメは自分でも糸を出せる様になるのかどうかを確かめたいのだ。ベルンウッドの屋敷に忍び込む際に身体を液状化させて壁を抜けたが、他にも幾つか方法を作っておきたい。でもどうせならカニ風味であれば食べやすくて助かるという安直な考えではあるが、もし考えている通りの能力を手に入れる事が出来れば大きな力となるだろう。
そうして探し始めてみたが、まず最初に見つけたのはスパイダーでは無くて白い蛇ホワイトスネークだった。早速頂いたナイフで頭を飛ばして血抜きをして骨を取り除き、発火で軽く炙ると香ばしい匂いが周囲に広がった。
「いただきま~す」
早速食べてみると、味はウナギとアナゴの中間みたいな感じだった。ホワイトスネークに養殖物が存在するとは思えないので、間違い無く天然物の味だ。
(ワサビ醤油誰か作ってくれないかな?)
そんな事を考えていると、ホワイトスネークの白焼きの匂いに惹かれてきたのか1匹のコボルトが姿を現した。ゴブリンが鶏肉風味だったのでコボルトも何かの肉の味に違いない、勝手にそう判断したハジメはコボルトを倒して火を通すとその腕に齧り付いた。
「これ、ビールが凄く欲しくなる味だ」
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