スライムばかり食べてた俺は、今日から少し優雅な冒険者生活を始めます。

いけお

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第57話 町を襲う巨人の群れ(前編)

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『セシリア様、オークを2体見つけてきました!』

「偉いわねヒッポちゃん、はいご褒美のオークの兜焼きよ。とりあえず塩コショウで味付けしてみたけど、好みじゃ無かったら遠慮無く言ってね」

『いえ、セシリア様の作られる料理はどれも絶品です最高です!』

「オークの頭の部分を食べる人が居なかったから丁度助かるわ、おかわりが欲しければ教えてね」

『はいっ!』

満足気な表情(?)で兜焼きを啄み始めるヒッポちゃんことヒッポグリフ、出会ってからまだ1日しか経っていないのにすっかりセシリアの料理の虜となっている。少しでもセシリアの役に立ちたいとオークを1体ずつ両方の前脚で掴んで持ってくる際も首を切って血抜きしながら運んできた。お陰で良い状態で食材を保存出来るのだが、この駄馬はセシリアの恋人で現在婚約者でもあるハジメには容赦が無かった。

「ハジメ、ちょっと良いかしら?」

「どうかしたのか?セシリア」

「ええ、まだ数日分の余裕は有りますけどアグナードさんの分の食事が少し心許無くなってきたので」

「そうか・・・・明日明後日で村か町を見つけたら立ち寄って水と食料の補充をするか」

「お願いします」

(やれやれ・・・アイツも一緒にゴブリンやオークを喰えばこんな心配をしなくても済むのに)

そんな事を考えながらハジメは夢中でオークの頭を喰っている駄馬に話しかけた。

「お~い、ヒッポちゃんちょっと良いか?」

ゲシッ! ヒッポちゃんが前脚でハジメの頭を叩いた。

『誰がヒッポちゃんだ!?ヒッポグリフ様と呼ばんか、この礼儀知らずが!』

「セシリア達は良くて、何で俺だけこんな目に遭わないとならないんだ!?」

『アグナード殿だって【ヒッポグリフ殿】と呼ぶのだ、貴様もそれ位は真似よ』

「はいはい、駄馬殿言われた通りに致しますよ」

ドスッ!! 今度は嘴で腹を突き刺してきた、危うく腹に大穴が開く所だった。

「うぐぅっ!! 分かりました、以後気を付けますヒッポグリフ様・・・」

『分かれば良いのだ、それで我輩に何の用だ?』

「アグナードの分の食料が少なくなってきたから、セシリアが途中でどこか村か町を見つけたら立ち寄って欲しいそうだ」

『了解したとセシリア様に伝えておいてくれ』

「伝えておきますよ、ヒッポグリフのヒッポちゃん」

その後、セシリアが止めに入るまで命からがら逃げる羽目になったハジメだった・・・。



翌朝、セシリアが朝食を作る間行く先の様子を見に行ったヒッポグリフが慌てた様子で戻ってきた。

『セシリア殿!ここから10km程先に在る町で黒い煙が幾つも立ち昇っている、何者かの襲撃を受けている様だ』

「何ですって!? ハジメ!ランさん達も急いで起きて」

セシリアに急かされてようやく起きたハジメ達はヒッポグリフの説明を聞いて、のんびりしていられない事を悟る。

「どうやらゆっくり朝飯を食べている余裕は無さそうだ、町を襲っているのが人かモンスターかまでは見ていないんだよな?」

『ああ、我輩1人ではどうにもならないかもしれないのでな。救援に向かうのなら数は多い程良い』

「その通りだ、ヒッポグリフ急いで現地に向かってくれ!御者台には俺とラン、そしてミリンダの3人が座って何時でも戦闘に加われる態勢を整えておく。サリーネは馬車の中に篭って賊等がもしも侵入してきたらマリアとアグナードを守ってやってくれ」

「分かりました」

「ハジメ、私は誰に守ってもらえば良いのですか?」

セシリアが少しだけ拗ねた顔を見せるが、身を挺して守ってくれそうな奴が1体居る。

「安心しろ、俺も居るしお前が可愛がっているヒッポちゃんだって居るだろ?セシリアは戦闘が終わってから皆で食べる美味い飯を頼む」

「それじゃあ、腕を揮いますか!でも何か有ったらすぐに呼んで下さいね」

「ああ、良い食材がもしも居たらすぐに声を掛けるよ」

「頼みましたよ、ハジメ」

会話が終わるとヒッポグリフが翼を羽ばたかせながら駆け出した、すると馬車は見る見るうちに空へ上がっていった。

「おい!まさか空から行く気か!?」

『無論だ、こちらの方が早いからな。のんびり地上を駆けた方が良いのか?』

「いや、早く着く方が良いに決まっている。だが、俺やランとミリンダを振り落とさない様に頼むぞ」

『そんな真似する筈無かろう、もう少し飛ばすからしっかり摑まっておけよ!』

更にスピードを増して空を駆けるヒッポグリフとそれに曳かれる馬車、襲撃されていた町の上空に到着するまでに10分も掛からなかった。



上空に到着したハジメ達の眼下に広がっていたのは身長3m近い巨大な人型モンスターの群れが丸太を棍棒の代わりにして町の城壁を壊してる光景だった。

「あの巨大なモンスター達は一体何だ!?」

ハジメは初めて見る巨人の姿に驚いた、しかしミリンダは冷静にそのモンスターが何なのかをハジメに教える。

「あれはトロールです、大きな体躯と怪力の持ち主で最も厄介な所は驚異的な再生力を持っていて腕を斬ってもすぐに繋がってしまう事です」

ミリンダの説明を聞いていると、トロールの1体が上空に居るハジメ達の乗る馬車に気付くと地面に落ちていた1m位の大きさの岩を両腕で持ち上げると馬車に向けて投げてきた!

「うわっ危な!」

ヒッポグリフが間一髪で避けたので被害は無かったが、直撃すればただでは済まない。町の中を見ると、ハジメ達が来るまでに幾つも既に投げ込まれたらしく岩の下敷きとなり息絶えている人の姿が複数在った。そして城壁の1ヶ所がとうとう壊されトロール1体が通れるだけの隙間が出来てしまう。

「もう時間が無い、急いで連中の目を俺達に引きつけよう。これ以上町の人に犠牲を出す訳にはいかない」

最初に城壁を通り抜けようとしたトロール目掛けてハジメは全魔力を込めた魔法を叩き込んだ。

「クリスタルブリザード!」

水晶の様に硬くなった鋭く尖った氷柱が空から降り注いだ、トロールは弁慶の立ち往生の様な姿となったがそれでもその驚異的な生命力でまだ腕を動かして身体に刺さった氷柱を抜こうとしている。だが、これもハジメの想定の内だ。

「アイスブリッド!」

今度は氷の弾を無数に撃ち出してトロール諸共壊された城壁を氷の壁で埋めた、これで少しの間は町への侵入を防げる筈だ。

「ここからのお前らの相手は俺達だ」

少し離れた場所に馬車を下ろさせると、御者台に乗っていたハジメ・ラン・ミリンダの3人はゆっくりとトロールの群れに向かって進み出した。馬車の守りをヒッポグリフに託して、ハジメ達とトロールとの町の存亡を賭けた戦いが始まった。
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