魔術師見習い、ニッポンの侍の末裔を召喚する(?)

三毛猫 ポチ

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アツモリ、強敵と相まみえる

第88話 夢にも思わなかったよ

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 突然の呼び掛けに、敦盛たちは声がした方向を見た。

 そこは円形の部屋だった。ドーム状の高い天井を持ち、広さだけで言ったら敦盛の高校の体育館の倍くらいある広い部屋だ。壁のあちこちに『魔法の照明マジックライト』に似ている宝玉ジュエルがあるから、眩しいくらいだ。
 その中央に階段があり、上がった先にはテーブルが置かれて、そのテーブルを前にして初老の男性が椅子に座りながら敦盛たちに話し掛けてきたのだ。

「・・・レパード子爵」
 バネットはその初老の男性を見た時、そう呟いたのを敦盛はハッキリ聞いた。
 だが、そのテーブルの上には2つの玉が置かれていた。1つは何も変哲のない水晶玉のようだが・・・もう1つは黒く光っている!
 その正体に気付いた人がいた!シルフィだ。
「アツモリ、あれは、あの水晶は黒水晶くろすいしょうだ!」
「黒水晶?」
「恐ろしいまでの禍々しさを放っている。後ろにいる闇の精霊シェードたちがソワソワしてる程だ!」
「という事は・・・」
「あれが全ての元凶、瘴気の源だ!」
 シルフィはそう言って不機嫌さを隠そうともしない。

 その黒水晶を前にしてレパード子爵が立ち上がった。
「うーん、人の屋敷に勝手に入り込んだのは感心せぬが、あの部屋から自分の力で出てきたのは感心の一言に尽きる!どうせグロリア大公に金で雇われた連中なのだろ?国を腐らせている元凶ともいうべき大公に尻尾を振るより、魔王を倒す方が遥かに意義があって国の、いや世界の為になるのは間違いないぞ。どうだ、ワシに仕える気はないか?」
「断る!」

 レパード子爵は柔和な表情で敦盛たちに話し掛けてきたけど、その提案をバネットが何の躊躇もなく拒否した。
「そう答えると思ってたから気にしておらぬから安心せよ。でも、正直に言うが、ここに来るとは夢にも思わなかったよ、セレナ」
「「「 へっ? 」」」
 敦盛とココア、それとシルフィはレパード子爵が言った言葉の意味が最初は分からなかったから、互いの顔を見合わせた程だ。
 だが・・・その意味に気付いた!

「「「 ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ! 」」」

 いきなり敦盛たちは一斉に大声を上げると同時にバネットの方を見たけど、そのバネットはレパード子爵を真っ直ぐ見たままだ。
「・・・はーーー、ホント、君は真面目過ぎる。ワシに面と向かって反対してきたのはセレナ、君だけだよ。まあ、ワシの事を君が真剣に心配してくれたのは嬉しいのだが、ワシは国の、いや、世界の現状を憂いた上での決断だ。それを笑い飛ばす者たちには世界の現状が分かってないとしか思えない。そんな中でセレナ、君だけはワシに面と向かって反対してくれた」
「そのセレナという名、確かに許可したのは認めますが、今のあなたに言われると腹立たしいにも程があります!」
「はーー、ホントに君は自分に正直だ。なら、殿下と呼べば気が済むのか?」
「好きにしなさい」
 バネットはレパード子爵を一瞥しながら言ったが、今の発言は、自分がセレナ王女だと認めたも同然だ。
「・・・今の世界の現状を見れば、ワシが言った事が正しかったというのが証明されたような物だ。これでもなお、殿下はワシが間違ってると言いたいのかな?」
「現実的な問題として、実用化するのが限りなくゼロに近いのは王国魔術師協会が確率論として論文を纏めていました!そんな事に国の予算を、いや、尊い命を使うのを諫めたかっただけです!」
 バネット、いやセレナ王女はレパード子爵を見たまま半ば絶叫したが、そのレパード子爵は「はーー」とため息をついたかと思ったら両手を開いて肩を窄めた。
「・・・ま、殿下がそこまで言うのなら仕方ない。不出来な弟子に罰を与えねばならないな」
「そちらこそ、人の命を弄んだだけでなく、結果として国を、いや、世界を窮地に陥れている現状を全く省みようとしない!あなたを師として、いや、教育係として尊敬していた、このわたくしの顔に泥を塗ったとしか思えない行為には、わたくし自ら引導を渡すしかありません!」
「はーー・・・ホントに君は真面目すぎる。もう少し肩の力を抜きたまえ。そうでないと長生きできないぞ」
「お黙りなさい!セレナの名においてレパード子爵、あなたを国家反逆罪並びに死者の魂をもてあそんだ殺人罪及び詐欺罪、並びに王族に対する侮辱罪で、この場で処刑する!」 

 セレナ王女はそう言って聖剣を両手で構えて突進しようとしたが、それをココアが腕を抱え込むようにして押さえて前へ行かせない。
「放しなさい、ココア!」
「違います!これは罠です!」
「どういう事ですか!」
「前へ進めば死にます!」
 そう言ってココアは自分の首にかけていた護符アミュレットをセレナに見せたが、たしかに護符アミュレットの矢印は前方2、3メートルくらいの床を示している。つまり、怒りに任せて突進したら何らかの魔法の罠マジックトラップが作動したのだ。
 セレナは『ハッ!』という表情をしたけど、すぐさまレパード子爵を睨んだ。その表情からは王宮で見せるセレナ王女の雰囲気は全く感じられず、むしろ怒りに満ちた剣士バネットの表情そのものだ。
「ほー、よくぞ気付いたな。褒めて使わすと言いたいが、所詮は魔法道具マジックアイテムに助けられただけの事。単なる偶然に過ぎぬ!」
 そう言うとレパード子爵はニヤニヤしながらココアを見たから、ココアは「ペッ!」と唾を吐いたほどだ。
「それについては認めます。ですが、子爵様に1つ質問させて下さい」
「いいだろう。ワシも退屈しておったところだから、1つどころか2つでも3つでもいいぞ」
 レパード子爵は尚もニヤニヤしながらココアを見てるが、逆にココアの目は恐ろしいほどに冷たい目をしている。敦盛でもここまで冷たい目が出来ないから、逆にココアに恐怖を感じているほどだ。

「単純な質問です。あなたは本当に子爵様なのですか?」
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