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行間13 御褒美

第99話 神様が与えてくれた御褒美 (後編)

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「あるよー」
「ふーん」

 満里奈は何気なく答えたのだが・・・エミーナがを言ったのに気付いた!

 満里奈は『バン!』とテーブルを叩いたかと思ったら立ち上がった!
「ちょ、ちょっとエミーナちゃん!今、何て言ったのよ!」
「落ち着けマリナ、ボクには何がなんだかサッパリ分からないぞ」
「どうしたもこうしたも無いわよ!さっき『たまごかけごはんを食べたい』って言ったら『あるよ』って言ったでしょ!」
「なーんだ、その事か」
「『なーんだ、その事か』じゃあないわよ!お兄ちゃんに言わせれば毎日のように夢に出てくる物なのよ!!」
 満里奈はテーブルの反対に座っているエミーナに唾がかかるんじゃないかという位に絶叫してるけど、エミーナはニコニコ顔だし、ルシーダは「まあまあ」と言って満里奈を宥めてるけどルシーダもニコニコ顔だ。
 満里奈は渋々と言った表情で席に座ったけど、そんな満里奈にエミーナは
「・・・ボクもキャミさんから聞いただけで、行った事ないと最初に断っておくけど、ニュクス諸島出身の人が先月ファウナに開いた店のメニューに『タマゴカケゴハン』という物がある」
「ニュクス諸島?」
「ヒューゴボス帝国領の島だけど、この島には東方のイズモの国やモンゴリア帝国出身の人の子孫が住んでいるから、大陸西方にありながら東方の文化を色濃く残している。そのニュクス諸島出身の人が先月ファウナの漁港近くにオープンした店が『イズモ亭』で、大陸西方では非常に珍しい食べ方なんだけど、魚を生で、しかも独特の黒いソイソースに緑色のスパイスを使って食べるとか、魚をフライみたいに油で揚げながらフライとは違う料理とか、緑色のストレートティーとか、とにかくファウナでは初めての料理を提供しているとして話題になってるらしい」
「その黒いソイソースって、もしかして『醤油しょうゆ』じゃあないの?緑色のスパイスが『山葵わさび』、フライみたいのが『天婦羅てんぷら』で緑色のストレートティーが『緑茶りょくちゃ』じゃあないの?」
「マリナの世界の『ショーユ』とイズモ亭の黒いソイソースが同じ物なのか分からないけど、キャミさんが言うには、真っ白く炊き上げた米に玉子を生でかけて、そこに黒いソイソースをかけた『タマゴカケゴハン』というのが一番人気らしいぞ」
「うっそー!?」
「あー、でも、漁港で働く人たち向けだから朝からやってるけど、昼前には品切れで早々に店仕舞いするほどだから、朝早くから並んでないと食べられないぞ」
「明日行く!」
「ちょ、ちょっとマリナ、落ち着けー」
「これこそが神様がウチとお兄ちゃんに与えてくれた御褒美よ!」
「だーかーら、落ち着けっていってるだろ」
 満里奈は立ち上がって興奮してるからエミーナは苦笑いしながら宥めてるし、ルシーダもココアも「まあまあ」と満里奈を宥めている。でも、なんだかんだ言ってルシーダもココアも興奮している。
「・・・それじゃあ、明日は早起きしてアツモリも連れて『イズモ亭』へ行くか?」
「「「 賛成! 」」」
 エミーナの提案に、満里奈だけでなくルシーダもココアも右手を高々と上げて賛成した。

 そのまま4人はジンジャエールのジョッキを手に持った。
「・・・それじゃあ、今回の仕事の打ち上げを兼ねて」
シルバーになれなかった残念会を兼ねて」
「財宝を手に入れた記念会を兼ねて」
「神様が御褒美を与えてくれた感謝を兼ねて」
「「「「 カンパーイ! 」」」」
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