壺の中にはご馳走を

文字の大きさ
10 / 72

あっきぃ様

しおりを挟む
 真也が茉美と初めて会った時、長い黒髪が美しいと思っていた。

 どうやら茉美は頻繁に髪色を変えているようで、黒髪の次は金髪、先週は赤髪だった。
 
 今週は――。

「茉美さんてウィッグがお好きなんですか? ブラックとホワイトのツートンカラーって1週間でできるものですか?」

「乙女のおしゃれを詮索するな」

 茉美は自分のことをあまり話したがらない。



「はぁー美味しかった! 僕、甘い物に目がないんですよ」

 北条信吾はアイスクリームを満足そうに食べ、歳が近そうなことから、真也は気が合いそうだと思った。

「ミルクにこだわるアイスクリームは格別ですよね。喜んでいただけて何よりです!」


「美味しいもので元気をもらったことですし、早速話していこうと思います。


 僕はすごい田舎の出身で、コンビニまでは車で1時間もかかる村に生まれました。

 都会には都会の良さが、村には村の良さがあるんですよ。

 村のお年寄りからもらった知恵は、今でも役に立っています。


 村の信仰? で『あっきぃ様』っていうものがありました。

 名前がキャッチーで可愛いから、子供たちからも愛される存在でした。


 子供たちは『あっきぃ様ごっこ』で遊ぶのがいつものことで、まぁ簡単に言えば鬼ごっこです。

 でも普通の鬼ごっこと違うのは、じゃんけんで勝った人が鬼、つまりあっきぃ様になって、残りを追い掛け回します。

 大人たちはあっきぃ様を遊びに使っちゃいけないと、この遊びを禁止しましたが、僕たちは普通の鬼ごっこをするフリをしてあっきぃ様ごっこを続けました。


 子供たちにはもう1つ楽しみがありました。

 9月に村全体で行う祭りです。

 夜通し飲めや歌えの大騒ぎで、この日だけは子供も夜更かしが許されます。


 その年の祭りもいつものメンバーで集まっていました。

 朔太郎は勇敢でリーダー的存在、対して陸は臆病で女の子にも喧嘩で負けてしまうタイプ。

 里美は僕たちと同じ小学2年生とは思えないほど、しっかり者でした。

 里美の弟、幸太は3つ下で、でも負けん気だけは強くて、里美に付いて来ては早く走れるように頑張っていました。


 最も心踊ってはしゃぎたくなる祭りの夜。

 朔太郎が

『あっきぃ様ごっこしようや』

 と言って、僕たちは賛成しました。


 じゃんけんの結果、幸太があっきぃ様になりました。

 里美は幸太を気にかけて

『幸ちゃん、疲れたらお姉ちゃんが代わるね』

 と言ったので、まずは幸太があっきぃ様で問題ないと思いました。


『じゃあ、20秒数えたら追いかけて来て!』

 僕たちは思い思いの方へ走ります。


 最初は追いかけられて逃げるのを楽しんでいたけど、だんだんつまらなくなったんです。

 やっぱり幸太は体力がなくて追いかけるのをすぐに諦めてしまうし、大人たちにぶつかって、危ないぞとゲンコツを食らったりしたものですから、僕たちは再び1ヶ所に集まりました。


 そこで朔太郎が小声で言いました。

『俺、いいこと思いついた。あっきぃ様ごっこで、かくれんぼするんや。俺たちが隠れて、幸太が探す。これなら足が遅い幸太でもできるやろ』

 暗闇を恐れる陸らしい提案もありました。

『隠れていい場所は、灯りがあるとこだけってルールにしようや! 遠くに行き過ぎたら幸ちゃんも見つけられん』

 幸太が100を数え切る前に、それぞれ隠れ場所を探しました」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...