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あっきぃ様②
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「陸は、大人たちに紛れるようにして隠れていました。
すぐに見つかる場所でしたが、1人で隠れることが怖かったのでしょう。
朔太郎は猛ダッシュで良い隠れ場所に向かい、里美もどこかへ行っていました。
僕はもう幸太が探し始めていると思って、少し遠くまで行くことにしました。
選んだのは民家の塀の裏です。
大人たちはワイワイと祭りに出払っているので、家に人はいません。
都会では不法侵入になるんでしょうが、村では子供が入ってきて怒るような大人はいませんでした。
陸の『灯りがあるところ』というルールに従い、玄関先の外灯を付けている家を選びました。
どれほど待ったでしょうか。
もしかしたらここに隠れるのはルール違反かもしれないと不安になったりして。
いっそのこと大人たちのところへ行って、自分から見つかろうかと思った時、遠くでドアをコンコンとノックする音が聞こえてきました。
幸太がここまで探しに来たんだ!
ただ気になったのは、祭りをやっている方じゃなくて山側から聞こえることです。
コンコン、コンコン。
音は僕が隠れている家に近づいてきます。
何で幸太は何も喋らないんだろう?
ノックするってことは家の中にいると思っているのか?
コンコン、コンコン。
塀の裏に張り付いていれば、気付かれないかもしれない。
僕はできるだけ体を平べったくして、気配を消しました。
コンコン。
ついに僕のところまで来ました。
玄関に意識を向けて、息を飲んだ瞬間。
『ねぇ』
僕はびっくりして体を勢いよく塀から離しました。
『ねぇ、信ちゃん』
声の主は里美でした。
『なんや里美か……。いつからそこにいた?』
里美はどういうわけか、門塀の出入口を通らず僕の横に立っていたんです。
『もしかして塀を乗り越えたんか!?』
ビビっていることを隠すのに必死で、里美の沈んだ様子に気付きませんでした。
『幸ちゃん見てない? お母さんのところに行ったけど、いなかった……。山に入ったかもしれん』
『幸太が? 朔と陸を呼んで捜――』
里美は僕の言葉に被せるようにして言いました。
『朔ちゃんたちはもういいから、信ちゃん、一緒に探しに行こうや』
僕は山に入るのが怖くて返事ができませんでした。
夜の山が危険だってことは、子供でも分かります。
まずは大人に相談するべきだと反論しました。
『ダメだよ。お父さんたちにあっきぃ様ごっこがバレるやろ』
僕の父は怒るとそれはそれは怖い人で、僕は父に殴られるのと山に入るのと、天秤にかけました。
そしてちょっとだけ山で幸太を捜して、すぐに下りて別の場所を捜すことに決めました。
山の入口では、里美の持つ懐中電灯がお地蔵さんを照らします。
それだけでビクッとしてしまうほど、怯えていました。
『早く。幸ちゃんが心配や』
陸のように臆病者のレッテルを貼られたくない一心で、山へと入りました。
『幸ちゃんは祠にいると思うんや』
『祠って何?』
里美は山に入るのが怖くないしっかり者なうえに、物知りだと感心しました。
『この道を真っ直ぐ行った先にある、って菊ばぁが言っとった。神様がおる場所やから怖くない』
懐中電灯だけが頼りの真っ暗な山の中。
里美の先導でようやく祠を見つけました。
(この小さな祠の中に幸太がいると思ったんか。
やけに小さいし、幸太でも入らんやろ)
と思いましたが、一応里美の前に出て声をかけてみました。
『幸太ー? おるかー?』
やっぱり幸太はいません。
別のところを捜そうと振り返ると、そこにいたのは里美ではなく、全身をオレンジ色に発光させた何かでした。
『あっ、あっ』
僕は驚きのあまり声を出すことができませんでした。
ソイツは
『〇※hdofmひぉvotj×nndあじぉsl……』
と何語か分からない言葉を発してながら、僕の体を掴んで祠に押し付けました。
『痛っ、離せや』
ソイツは父よりも強い力で、猿のような毛むくじゃらの腕と鋭い爪で体の自由を奪います。
『ぎゃnkgおnsalug〇yyjakk……』
オレンジ色に発光し続けるのっぺらぼうの顔が笑ったような気がしました。
翌朝、僕は祠の中で発見されました。
発見が遅れたのは、僕の姿をした偽物が朔太郎たちと遊んでいたからです。
気付けばソレがいなくなって、僕が行方不明になったと大騒ぎになりました。
村の年寄りが祠で見つけた時、僕はボストンバッグに全身を入れる芸人のように、無理やり体を押し込めて眠っていたそうです」
すぐに見つかる場所でしたが、1人で隠れることが怖かったのでしょう。
朔太郎は猛ダッシュで良い隠れ場所に向かい、里美もどこかへ行っていました。
僕はもう幸太が探し始めていると思って、少し遠くまで行くことにしました。
選んだのは民家の塀の裏です。
大人たちはワイワイと祭りに出払っているので、家に人はいません。
都会では不法侵入になるんでしょうが、村では子供が入ってきて怒るような大人はいませんでした。
陸の『灯りがあるところ』というルールに従い、玄関先の外灯を付けている家を選びました。
どれほど待ったでしょうか。
もしかしたらここに隠れるのはルール違反かもしれないと不安になったりして。
いっそのこと大人たちのところへ行って、自分から見つかろうかと思った時、遠くでドアをコンコンとノックする音が聞こえてきました。
幸太がここまで探しに来たんだ!
ただ気になったのは、祭りをやっている方じゃなくて山側から聞こえることです。
コンコン、コンコン。
音は僕が隠れている家に近づいてきます。
何で幸太は何も喋らないんだろう?
ノックするってことは家の中にいると思っているのか?
コンコン、コンコン。
塀の裏に張り付いていれば、気付かれないかもしれない。
僕はできるだけ体を平べったくして、気配を消しました。
コンコン。
ついに僕のところまで来ました。
玄関に意識を向けて、息を飲んだ瞬間。
『ねぇ』
僕はびっくりして体を勢いよく塀から離しました。
『ねぇ、信ちゃん』
声の主は里美でした。
『なんや里美か……。いつからそこにいた?』
里美はどういうわけか、門塀の出入口を通らず僕の横に立っていたんです。
『もしかして塀を乗り越えたんか!?』
ビビっていることを隠すのに必死で、里美の沈んだ様子に気付きませんでした。
『幸ちゃん見てない? お母さんのところに行ったけど、いなかった……。山に入ったかもしれん』
『幸太が? 朔と陸を呼んで捜――』
里美は僕の言葉に被せるようにして言いました。
『朔ちゃんたちはもういいから、信ちゃん、一緒に探しに行こうや』
僕は山に入るのが怖くて返事ができませんでした。
夜の山が危険だってことは、子供でも分かります。
まずは大人に相談するべきだと反論しました。
『ダメだよ。お父さんたちにあっきぃ様ごっこがバレるやろ』
僕の父は怒るとそれはそれは怖い人で、僕は父に殴られるのと山に入るのと、天秤にかけました。
そしてちょっとだけ山で幸太を捜して、すぐに下りて別の場所を捜すことに決めました。
山の入口では、里美の持つ懐中電灯がお地蔵さんを照らします。
それだけでビクッとしてしまうほど、怯えていました。
『早く。幸ちゃんが心配や』
陸のように臆病者のレッテルを貼られたくない一心で、山へと入りました。
『幸ちゃんは祠にいると思うんや』
『祠って何?』
里美は山に入るのが怖くないしっかり者なうえに、物知りだと感心しました。
『この道を真っ直ぐ行った先にある、って菊ばぁが言っとった。神様がおる場所やから怖くない』
懐中電灯だけが頼りの真っ暗な山の中。
里美の先導でようやく祠を見つけました。
(この小さな祠の中に幸太がいると思ったんか。
やけに小さいし、幸太でも入らんやろ)
と思いましたが、一応里美の前に出て声をかけてみました。
『幸太ー? おるかー?』
やっぱり幸太はいません。
別のところを捜そうと振り返ると、そこにいたのは里美ではなく、全身をオレンジ色に発光させた何かでした。
『あっ、あっ』
僕は驚きのあまり声を出すことができませんでした。
ソイツは
『〇※hdofmひぉvotj×nndあじぉsl……』
と何語か分からない言葉を発してながら、僕の体を掴んで祠に押し付けました。
『痛っ、離せや』
ソイツは父よりも強い力で、猿のような毛むくじゃらの腕と鋭い爪で体の自由を奪います。
『ぎゃnkgおnsalug〇yyjakk……』
オレンジ色に発光し続けるのっぺらぼうの顔が笑ったような気がしました。
翌朝、僕は祠の中で発見されました。
発見が遅れたのは、僕の姿をした偽物が朔太郎たちと遊んでいたからです。
気付けばソレがいなくなって、僕が行方不明になったと大騒ぎになりました。
村の年寄りが祠で見つけた時、僕はボストンバッグに全身を入れる芸人のように、無理やり体を押し込めて眠っていたそうです」
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