壺の中にはご馳走を

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呪いの代償

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 真也は緑茶と饅頭を置きながら、机の上のビー玉を見た。

 3つのビー玉はそれぞれ赤、青、黄色。

 ノスタルジック気分に浸る真也に、古藤千代が言った。

「私もこれに魅入られたんだよ。もう随分と前のことだけどね」

 皺くちゃの顔は、笑っているか困っているのか分からない。

「真也、怖がりのお前は見ない方がいいんじゃないか」

 茉美の言葉で、ただのビー玉ではないことを悟った。


 古藤千代はビー玉を机の置いたまま話し始めた。

「夢見町と山内町、2つの町は長らく争いが絶えなかった。
 
 歴史的には夢見町は被差別部落、隣接する山内町は部落の人たちに酷いことをしてきたそう。
 
 
 私が生まれたのは、山内町。
 
 身分制度が撤廃された後のことだったが、差別感情が簡単に拭えるわけではない。

 山内町の人間は、難癖を付けては夢見町の人間に暴行を働いた。

 被害者の中にはお腹を大きくした妊婦もいたという。


 そんな蛮行を夢見町の人間が黙っているわけがない。

 夢見町長は、長同士で話し合おうと持ちかけた。

 だが山内町長は断った。

 夢見町の人間が平穏に暮らすことには無関心であり、山内町内の不満が外へ向くのが好都合だと考えた。


 話し合いで解決できないと知った夢見町の人間は、やがて山内町の衰退を望むようになる。

 そうして呪いに手を出し始めた。

 
 呪いと言っても、特別な力を持った者はいない。

 だから凄惨な現場を見せつけることで、山内町の人間に自分たちが呪われていると認識させることにした。


 最初に犠牲となったのは、家畜の豚だった。

 頭を切断され、腹が割かれていた。

 腹の中には子豚が5頭ほどいて、別の5頭は養豚場の柵に突き刺さった状態で見つかった。


 山内町の人間は夢見町の仕業だと思った。

 証拠はなく当時は呪いの可能性も否定できなかったが、そう思うことにした。

 そして見せしめに夢見町の豚を20頭殺した。

 山内町の人間は、夢見町の子供が見ているのもお構いなしに惨殺した。


 次に夢見町が動いたのは、正月。

 山内町では正月を祝っていたが、夢見町の人間は警戒心が緩むこの時を待っていた。

 酒に毒を盛ったのだ。

 これで毒入りのお屠蘇を飲んだ一家が全滅した。


 山内町の人間は仕返しとして、一家の遺体を隣接する夢見町側の道に捨てた。

 祖父母の額には『呪』、父母の背中には『殺』、娘の腹には『怨』という刺青が彫られていた。

 夢見町ではこれを呪物だと捉え、山内町側の道に投げた。

 互いが遺体の押し付け合いをすること数十回、遺体が腐敗臭を放つようになった頃、ある少女が現れた」
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