壺の中にはご馳走を

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驟雨

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 小雨だった雨が本降りに変わった。

「お客さんも雨が降ってると来づらいでしょうね~。一応タオル用意しておきます。ってアレ……?」

 雨が止んだ。

「早かったな」

 と茉美がつぶやいた。


 扉が開く。

「失礼しまーす」

 にっこりと笑う白いワンピースを着たゆるふわ女子だ

 その様相からは恐怖や不安を抱えているようには見えない。


「初めまして、朝井春花です。

 私、神様に愛されているんです。

 小さい頃から恵まれてるなーって思うことはあったんですけど、この前、それが確信に変わりました。


 そうですねぇ……。

 まずは土岐耕一との出会いからお話します。


 土岐耕一とは婚活パーティーで出会いました。

 私は25歳までに結婚する予定なので、婚活は早い方がいいんです。


 土岐は45歳で、婚活パーティーに来る男性としては珍しくありません。

 婚活ではおじさんでもモテます。

 年収や職業を重要視する婚活女子がほとんどですから。


 土岐も狙っている参加者が多かったです。

 プロフィールには税理士と書かれてありました。


 でも私は土岐にもう一つの魅力を感じていました。

 話す内容というか、雰囲気というか……。

 アンニュイで口数も少ないけど、どこか人と違うものを持っていたんです。

 必死に愛想を振りまく他の男性参加者より、大人の余裕があってこちらが色々と想像しちゃうんですよ。


 土岐に狙いを定めた結果、カップル成立に成功しました。

 そこからデートの約束をするのですが、連れて行かれた場所もおしゃれでした。

 不思議と容姿も良く見えるんですねー。

 ただの中年男なのに。


 3回目のデートに土岐が提案したのは、登山でした。

『大丈夫だよ。初心者向けで、登山客がたくさんいるからね』

 私は了承しました。


 当日は土岐にリードされる形で、登山コースを歩きました。

 山の中腹で土岐が

『君は初心者コースじゃ余裕みたいだねぇ。中級者コースに行ってみようか?』

 私はいい気分になっていたので、中級者へのレベルアップを望みました。


 土岐は周りをキョロキョロと見渡し、

『他の登山客がうるさいからね』

 と、人目を避けて私の手を引いてコースから外れました。


 ズンズンと木々の間を通り抜けますが、それらしいコースには出ません。

『ねぇ、土岐さん? 登山は上に進むものでしょう? どうして横に歩いているの?』

 という問いかけに対する返事はありませんでした。


 それから何度か話しかけましたが、土岐は黙々と歩きました。

 繋いだ手がじっとりと汗ばむと共に、土岐の息遣いが荒くなっているのが分かりました」
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