壺の中にはご馳走を

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カラカラさん

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 世間がクリスマスムードに浸る中、ティサは通常営業だ。

「ティサはクリスマスっぽい飾り付けしないんですか? 僕がしましょうか?」

「いいんだよ、ウチは。何でもかんでも世間に流されるもんじゃない」


 ティサを訪れる人に、クリスマスムードなどないのも事実。

 伊達浩史も祓いを受けて、優雅にクリスマスを迎えたかったのかもしれない。


 温かいブラックコーヒーにひと息付き、本題に入った。

「私は長年勤めた会社を定年後、非常勤で警備員をしています。

 夜勤は給料が高いことから、割に良い仕事といわれます。


 しかしある会社だけは、夜勤をやりたがる人が少ない。

 そこは2人配置されるのですが、私と中島君がお馴染みのメンバーとなっています。

 他の人が何かと理由を付けて断るので、私たちに押し付けられるように回ってくるのですよ。


 中島君は私よりずっと若い先輩ですが、先輩風を吹かせるなんてせず、とても好青年です。

 私が夜勤を断らないのは給料が良いからで、初めてその会社に回された時、なぜ皆が夜勤をしたがらないのかを中島君が教えてくれました。

『伊達さん、知らないから来たと思うんですけど、怖いのが苦手なら僕が全部見回りしますよ! ここはね、かつて防空壕だったところに建っているそうです。……だから、いわゆる出る会社なんですよ。僕は平気なんですけど、やっぱり見ちゃうと良い気はしませんね』

 私は幽霊を信じていませんでしたし、この歳で怖がって若者に仕事を押し付けるのも不躾だなと思い、中島君の気持ちだけ受け取りました。


 中島君は正直者です。

 新人の私を怖がらせようとしたのではありません。

 本当に出るんですよ。

 お腹をパンパンに膨らませた手足がガリガリの子供。

 上から何十本もの髪の毛を落としてくる、天井にへばりついた女。

 そういう経験を腐るほどしました。


 でも彼らは危害を加えることはありません。

 防空壕と聞いていたので、恐怖より同情してしまうわけです。

 突然現れたことによる驚きと冷や汗を我慢すれば、やはり割の良い仕事でしょう。


 中島君も同じ考え方をしているのだと思います。

 私たちは世間話をする仲になり、彼が見回りから帰ってくると、何を見たかを詳細に話してくれるようになりました。

 そうやって私たちは幽霊を見ることを普通にしていきました。


 しかし普通を作り上げてしまうと、異常なものから目を逸らせなくなる。

 私の場合、『カラカラさん』が異常の類に入ってしまったのです」
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