壺の中にはご馳走を

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寝たきりの祖母

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「あけましておめでとうございます」

 年明け一発目の茉美の髪色は……、赤と白のグラデーションだった。


「今年も頼む、真也。お年玉はいるか?」

「嫌だな~、そんな歳じゃないですよ!! 今年は父方のおばあちゃん家に行ってたんですよ。田舎のゆっくり流れる空気も良いですねぇ」



 本日の客も真也と同様、年末年始を田舎で過ごしたようだ。

「若田虎太郎。社会人2年目。


 この年末年始、母親の実家へ赴いた。

 母親は俺が幼い頃に男を作って出て行ったから、その親戚とは全く関わりもない。


 じゃあ、何で実家に行くことになったかといえば、オヤジに頼まれたからだ。

『頼む!! 今まで理由を付けて断ってきたが、今年だけ、今年だけで良いから、顔を出してやってくれないか?』

 頭を下げるオヤジの手には10万円が握られていた。


 金で息子を売ったと思わないで欲しい。

 色々苦労かけたから、オヤジの頼みならと承諾した。


 母親の実家はかなりの田舎で、スマホはほとんど電波が入らないような場所だ。

 人はそれなりにいるが、年寄りばかり。

 便利さからどんどん置いていかれ、若い人が寄り付かないから、さらに廃れる。

 典型的な限界集落だな。


 父親がプリントアウトした地図を持って歩いている時、通行人にジロジロ見られた。

 俺が不審者にでも見えたんだろう。



 目的の家は、ただでさえ田舎道のさらに奥の舗装されていない道路の先にあった。

 周りに家は見当たらず、だだっ広い敷地に存在感のある平屋が建っていた。

(おいおい、まさか、俺にここを継げって言うんじゃないだろうな)

 俺はすぐにでも帰りたかったが、その日のバスは1本も残っていなかった。



 最初に出迎えたのは、偶然玄関から出てきた婆さんだった。

 その人は俺の叔母だという。

『あらぁ~、虎太郎ちゃん。こんなに大きくなって~。私のこと覚えてる? お婆ちゃんは部屋で寝とるから、早く家に入り~』

 みたいなことを言って、俺を家の中へ押し込んだ。


 ……キツイ方言を使っていたから、所々俺の脳内で補完して話してるが、意味はこんな感じだったと思う。


 広々とした応接間には、たくさんの年寄りが集まり談笑していた。

 驚いたことに、そいつらは全員俺と血縁関係にある親戚らしい。


 応接間に入るやいなや、喜びと歓迎の声が上がった。

 ただその中で1人の爺さんだけは

『フンッ! 都合の良い時だけ帰って来おって』

 と不機嫌そうな顔でつぶやいた。

 俺は嫌々顔を出しに来てすぐにでも帰りたいのに、とムッとした。


 叔母に連れられ、祖母の部屋に行った。

 祖母は寝たきり状態で、呼吸器のような医療機器は使っていなかった。

 ベッドの上で流木が乗っているみたいな、死の瀬戸際だと思った。


『お婆ちゃんねぇ、虎太郎ちゃんにもう一度会いたいって、いつも言ってたんよ。耳は聞こえてると思うけん、話しかけてやって』

 かける言葉が見つからなかった。

 俺にとっての祖父母は父方の2人だけだし、無責任な母親を産み育てた老いぼれだと怒りさえ感じた。


 その日は、1泊だけ世話になることを叔母に伝えた。

 そしてさらに驚くことになる。

 応接間にいた年寄り全員が、その家に住んでいるのだ。

 確かに部屋数はありそうなデカイ家だが、まるで老人ホームだ。


(こいつらの墓の管理をさせるために呼びつけたのか?)

 そうならば、たまったもんじゃない。

 俺は親戚連中との交流をなるべく避け、非協力的な人物を装った」
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