66 / 72
寝たきりの祖母
しおりを挟む
「あけましておめでとうございます」
年明け一発目の茉美の髪色は……、赤と白のグラデーションだった。
「今年も頼む、真也。お年玉はいるか?」
「嫌だな~、そんな歳じゃないですよ!! 今年は父方のおばあちゃん家に行ってたんですよ。田舎のゆっくり流れる空気も良いですねぇ」
本日の客も真也と同様、年末年始を田舎で過ごしたようだ。
「若田虎太郎。社会人2年目。
この年末年始、母親の実家へ赴いた。
母親は俺が幼い頃に男を作って出て行ったから、その親戚とは全く関わりもない。
じゃあ、何で実家に行くことになったかといえば、オヤジに頼まれたからだ。
『頼む!! 今まで理由を付けて断ってきたが、今年だけ、今年だけで良いから、顔を出してやってくれないか?』
頭を下げるオヤジの手には10万円が握られていた。
金で息子を売ったと思わないで欲しい。
色々苦労かけたから、オヤジの頼みならと承諾した。
母親の実家はかなりの田舎で、スマホはほとんど電波が入らないような場所だ。
人はそれなりにいるが、年寄りばかり。
便利さからどんどん置いていかれ、若い人が寄り付かないから、さらに廃れる。
典型的な限界集落だな。
父親がプリントアウトした地図を持って歩いている時、通行人にジロジロ見られた。
俺が不審者にでも見えたんだろう。
目的の家は、ただでさえ田舎道のさらに奥の舗装されていない道路の先にあった。
周りに家は見当たらず、だだっ広い敷地に存在感のある平屋が建っていた。
(おいおい、まさか、俺にここを継げって言うんじゃないだろうな)
俺はすぐにでも帰りたかったが、その日のバスは1本も残っていなかった。
最初に出迎えたのは、偶然玄関から出てきた婆さんだった。
その人は俺の叔母だという。
『あらぁ~、虎太郎ちゃん。こんなに大きくなって~。私のこと覚えてる? お婆ちゃんは部屋で寝とるから、早く家に入り~』
みたいなことを言って、俺を家の中へ押し込んだ。
……キツイ方言を使っていたから、所々俺の脳内で補完して話してるが、意味はこんな感じだったと思う。
広々とした応接間には、たくさんの年寄りが集まり談笑していた。
驚いたことに、そいつらは全員俺と血縁関係にある親戚らしい。
応接間に入るやいなや、喜びと歓迎の声が上がった。
ただその中で1人の爺さんだけは
『フンッ! 都合の良い時だけ帰って来おって』
と不機嫌そうな顔でつぶやいた。
俺は嫌々顔を出しに来てすぐにでも帰りたいのに、とムッとした。
叔母に連れられ、祖母の部屋に行った。
祖母は寝たきり状態で、呼吸器のような医療機器は使っていなかった。
ベッドの上で流木が乗っているみたいな、死の瀬戸際だと思った。
『お婆ちゃんねぇ、虎太郎ちゃんにもう一度会いたいって、いつも言ってたんよ。耳は聞こえてると思うけん、話しかけてやって』
かける言葉が見つからなかった。
俺にとっての祖父母は父方の2人だけだし、無責任な母親を産み育てた老いぼれだと怒りさえ感じた。
その日は、1泊だけ世話になることを叔母に伝えた。
そしてさらに驚くことになる。
応接間にいた年寄り全員が、その家に住んでいるのだ。
確かに部屋数はありそうなデカイ家だが、まるで老人ホームだ。
(こいつらの墓の管理をさせるために呼びつけたのか?)
そうならば、たまったもんじゃない。
俺は親戚連中との交流をなるべく避け、非協力的な人物を装った」
年明け一発目の茉美の髪色は……、赤と白のグラデーションだった。
「今年も頼む、真也。お年玉はいるか?」
「嫌だな~、そんな歳じゃないですよ!! 今年は父方のおばあちゃん家に行ってたんですよ。田舎のゆっくり流れる空気も良いですねぇ」
本日の客も真也と同様、年末年始を田舎で過ごしたようだ。
「若田虎太郎。社会人2年目。
この年末年始、母親の実家へ赴いた。
母親は俺が幼い頃に男を作って出て行ったから、その親戚とは全く関わりもない。
じゃあ、何で実家に行くことになったかといえば、オヤジに頼まれたからだ。
『頼む!! 今まで理由を付けて断ってきたが、今年だけ、今年だけで良いから、顔を出してやってくれないか?』
頭を下げるオヤジの手には10万円が握られていた。
金で息子を売ったと思わないで欲しい。
色々苦労かけたから、オヤジの頼みならと承諾した。
母親の実家はかなりの田舎で、スマホはほとんど電波が入らないような場所だ。
人はそれなりにいるが、年寄りばかり。
便利さからどんどん置いていかれ、若い人が寄り付かないから、さらに廃れる。
典型的な限界集落だな。
父親がプリントアウトした地図を持って歩いている時、通行人にジロジロ見られた。
俺が不審者にでも見えたんだろう。
目的の家は、ただでさえ田舎道のさらに奥の舗装されていない道路の先にあった。
周りに家は見当たらず、だだっ広い敷地に存在感のある平屋が建っていた。
(おいおい、まさか、俺にここを継げって言うんじゃないだろうな)
俺はすぐにでも帰りたかったが、その日のバスは1本も残っていなかった。
最初に出迎えたのは、偶然玄関から出てきた婆さんだった。
その人は俺の叔母だという。
『あらぁ~、虎太郎ちゃん。こんなに大きくなって~。私のこと覚えてる? お婆ちゃんは部屋で寝とるから、早く家に入り~』
みたいなことを言って、俺を家の中へ押し込んだ。
……キツイ方言を使っていたから、所々俺の脳内で補完して話してるが、意味はこんな感じだったと思う。
広々とした応接間には、たくさんの年寄りが集まり談笑していた。
驚いたことに、そいつらは全員俺と血縁関係にある親戚らしい。
応接間に入るやいなや、喜びと歓迎の声が上がった。
ただその中で1人の爺さんだけは
『フンッ! 都合の良い時だけ帰って来おって』
と不機嫌そうな顔でつぶやいた。
俺は嫌々顔を出しに来てすぐにでも帰りたいのに、とムッとした。
叔母に連れられ、祖母の部屋に行った。
祖母は寝たきり状態で、呼吸器のような医療機器は使っていなかった。
ベッドの上で流木が乗っているみたいな、死の瀬戸際だと思った。
『お婆ちゃんねぇ、虎太郎ちゃんにもう一度会いたいって、いつも言ってたんよ。耳は聞こえてると思うけん、話しかけてやって』
かける言葉が見つからなかった。
俺にとっての祖父母は父方の2人だけだし、無責任な母親を産み育てた老いぼれだと怒りさえ感じた。
その日は、1泊だけ世話になることを叔母に伝えた。
そしてさらに驚くことになる。
応接間にいた年寄り全員が、その家に住んでいるのだ。
確かに部屋数はありそうなデカイ家だが、まるで老人ホームだ。
(こいつらの墓の管理をさせるために呼びつけたのか?)
そうならば、たまったもんじゃない。
俺は親戚連中との交流をなるべく避け、非協力的な人物を装った」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる