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讃歌の日
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オリヴァーと今まで通り話せるようになり、充実した日々が続いた。
クロエからもらったネックレスは私に勇気をくれた。
肌身離さず着けているが、心なしか小さくなったように感じる。
少しは成長して気持ちも大きくなったということだろうか。
相変わらず複雑な薬は失敗してしまうが、少しずつ出来ることが増えた。
自立したいと強く思うようになってからは、座学も実践もモチベーションが高い。
今日も図書館に行こうと街に出ると、噴水の周りで人だかりができている。
「これなんかはどうだい? 年代物だから酒好きには堪らないよ!」
「そこの奥さん、あっちよりウチの店の方が安いよ!」
マーケットがあるブロックを飛び出して、店主たちが商売をしている。
「今日は『讃歌の日』じゃよ」
近くにいたソフィアが教えてくれた。
彼女は以前腰が痛いとオリヴァーを訪ね、代わりに私が薬を作ったのでちょっとした顔見知りだ。
「あっソフィアさん、腰の調子はいいみたいですね。ところで『讃歌の日』って?」
「この国に昔から伝わる行事だよ。普段世話になっている人に敬意を示して贈り物をするんじゃ。かつては文字通り讃歌を披露していたが、物が豊かになった今の時代、各々が好きな贈り物を選ぶのが習わしとなっとる」
図書館でパラスリリーのことは調べたつもりだったが、まだまだ新しい発見は残されている。
ソフィアはキャンディーを3粒渡した。
紅茶の味が上品だと、今パラスリリーの若い女性を中心に人気のキャンディーだ。
「サクラちゃんにはこれをあげようね」
「もったいないですよ~! お孫さんも好きなキャンディーじゃないんですか?」
「少しくらい良いんだよ。あんたには世話になってるからね」
ありがたくキャンディーを受け取ると、ソフィアは家へと帰っていった。
「ありがとうございまーす。お気をつけてー!」
露店には食べ物だけでなく、衣類や雑貨など様々なジャンルの商品が並べられている。
興味津々で人だかりに割って入ると、大荷物を持った人物がいる。
――アリアだ。
「アリア~! すごい量だね」
アリアは私に気付くと荷物を煩わしそうにしながら駆け寄った。
「あなたも買いに来たの?」
「それが『讃歌の日』のこと今さっき知って……」
世話になった人ばかりで、誰に贈るべきか分からない。
「せっかくだしドクターに贈ったらいいじゃない。もう諦めたんでしょう? やましい気持ちがないなら問題ないことよ~?」
売り言葉に買い言葉になってしまう。
「そ、そうだよ? ただ何を贈っていいか迷っちゃうな~」
挑発的だったアリアは私の言葉を聞きホッとした表情を浮かべる。
「元気になって良かった。『讃歌の日』は日頃の感謝を伝える良い機会よ。愛情も友情も尊敬も全部ひっくるめて、サクラが贈りたい人に贈りたい物を選ぶといいわ」
荷物の量から察するにアリアにはたくさん気持ちを伝えたい人がいる。
まるでバレンタインデーで義理チョコを買い込んでいるみたいだ。
「サクラにもちゃんと用意してるわよ。でも今はちょっと忙しいから明日にでも研究所へ持っていくわ! 楽しみにしててー」
もちろん私だってアリアには贈る予定だ。
(私ももらったんじゃ恩返しにならないなぁ)
できる女は去り際のセリフも胸にグサリと突き付けるものだ。
「あっ、そうそう。ドクターは今頃色んな人からもらってるだろうから、変な物選んだら埋もれちゃうわよ~。じゃあ、ばいばーい~」
オリヴァーへの贈り物のハードルが上がってしまった。
(とりあえずオリヴァーは置いといて、アリアへの贈り物を探そう)
クロエからもらったネックレスは私に勇気をくれた。
肌身離さず着けているが、心なしか小さくなったように感じる。
少しは成長して気持ちも大きくなったということだろうか。
相変わらず複雑な薬は失敗してしまうが、少しずつ出来ることが増えた。
自立したいと強く思うようになってからは、座学も実践もモチベーションが高い。
今日も図書館に行こうと街に出ると、噴水の周りで人だかりができている。
「これなんかはどうだい? 年代物だから酒好きには堪らないよ!」
「そこの奥さん、あっちよりウチの店の方が安いよ!」
マーケットがあるブロックを飛び出して、店主たちが商売をしている。
「今日は『讃歌の日』じゃよ」
近くにいたソフィアが教えてくれた。
彼女は以前腰が痛いとオリヴァーを訪ね、代わりに私が薬を作ったのでちょっとした顔見知りだ。
「あっソフィアさん、腰の調子はいいみたいですね。ところで『讃歌の日』って?」
「この国に昔から伝わる行事だよ。普段世話になっている人に敬意を示して贈り物をするんじゃ。かつては文字通り讃歌を披露していたが、物が豊かになった今の時代、各々が好きな贈り物を選ぶのが習わしとなっとる」
図書館でパラスリリーのことは調べたつもりだったが、まだまだ新しい発見は残されている。
ソフィアはキャンディーを3粒渡した。
紅茶の味が上品だと、今パラスリリーの若い女性を中心に人気のキャンディーだ。
「サクラちゃんにはこれをあげようね」
「もったいないですよ~! お孫さんも好きなキャンディーじゃないんですか?」
「少しくらい良いんだよ。あんたには世話になってるからね」
ありがたくキャンディーを受け取ると、ソフィアは家へと帰っていった。
「ありがとうございまーす。お気をつけてー!」
露店には食べ物だけでなく、衣類や雑貨など様々なジャンルの商品が並べられている。
興味津々で人だかりに割って入ると、大荷物を持った人物がいる。
――アリアだ。
「アリア~! すごい量だね」
アリアは私に気付くと荷物を煩わしそうにしながら駆け寄った。
「あなたも買いに来たの?」
「それが『讃歌の日』のこと今さっき知って……」
世話になった人ばかりで、誰に贈るべきか分からない。
「せっかくだしドクターに贈ったらいいじゃない。もう諦めたんでしょう? やましい気持ちがないなら問題ないことよ~?」
売り言葉に買い言葉になってしまう。
「そ、そうだよ? ただ何を贈っていいか迷っちゃうな~」
挑発的だったアリアは私の言葉を聞きホッとした表情を浮かべる。
「元気になって良かった。『讃歌の日』は日頃の感謝を伝える良い機会よ。愛情も友情も尊敬も全部ひっくるめて、サクラが贈りたい人に贈りたい物を選ぶといいわ」
荷物の量から察するにアリアにはたくさん気持ちを伝えたい人がいる。
まるでバレンタインデーで義理チョコを買い込んでいるみたいだ。
「サクラにもちゃんと用意してるわよ。でも今はちょっと忙しいから明日にでも研究所へ持っていくわ! 楽しみにしててー」
もちろん私だってアリアには贈る予定だ。
(私ももらったんじゃ恩返しにならないなぁ)
できる女は去り際のセリフも胸にグサリと突き付けるものだ。
「あっ、そうそう。ドクターは今頃色んな人からもらってるだろうから、変な物選んだら埋もれちゃうわよ~。じゃあ、ばいばーい~」
オリヴァーへの贈り物のハードルが上がってしまった。
(とりあえずオリヴァーは置いといて、アリアへの贈り物を探そう)
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