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本物との遭遇③

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 海賊たちの宴に入っていくと、普段飲まない酒に気分が高揚したオリヴァーが手招きする。

「お~い、サクラ~!こっちにたくさん美味しい物があるよ~」

 パラスリリーで珍味と言われていた「デンキ鴨のステーキ」や十年に一度しか収穫できない「チャピオンバナナ」など高級レストランのようなラインナップ。

 おまけに怖いと思っていた海賊たちも、サイスの一声で友好的になり楽しくもてなしてくれる。

 海賊の一員になったつもりで、飲めや歌えやの大騒ぎに興じた。

(会社のつまらない飲み会とは大違いね!)


 旗ァ掲げ海に出りゃ~ 俺たちゃ無敵の海賊団~
 金持ち風情の圧政にゃ~ とびきりデカい砲弾を~
 アホィ! アホィ!
 進めよ進め~ 海賊船~


 宴は時が経つのを忘れさせ、あっという間に辺りは暗くなった。

 イワンは肩を組むほどサイスと仲良くなっている。

「事情を話したらナリスバーグまで船を引っ張ってもらうことになったッス」

 サイスは相変わらずの笑い声で、私たちへの協力を申し出る。

「ガーハッハッハー! それだけじゃねぇ。おめぇらが探してる男の情報は部下に探らせる。俺たちの情報網は海だけじゃねぇんだ!」

 協力者は多い方が良いし、彼らなら非合法の界隈にも詳しい。
 不穏な動きを見せているウォルトンの行動を読みやすいかもしれない。

 私たちが怪しまれないように調査するより効率的だ。


「ありがとうございます!」

「ガーハッハッハー!いいってことよ! その兄ちゃんが起きねぇように気ィ付けなきゃなぁ」

 サイスの目線が私の顔から下に移る。

 酔っ払って眠り込んだオリヴァーを膝枕していたのだ。
 オリヴァーはむにゃむにゃ言いながら、顔を膝に擦り付けるようにして寝ている。

「こっ、これはっ……!!」

 海賊たちがヒューヒューと冷やかす。

「自分がドクターを背負うッス。もう船に戻って体を休めるッス。今日は皆ありがとうッス~」

 オリヴァーが眠る中、死神リーパー海賊団に宴と協力のお礼を言って、各自部屋へと帰るのであった。
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