異世界では香りに包まれて幸せに暮らします

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ついに上陸 ナリスバーグ!!

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 出航から7日目――。

 私たちはナリスバーグに到着した。

 イワンさんの予想では2週間かかる航路だったが、サイス率いる死神リーパー海賊団に曳航してもらい、リスクを考慮せずに最短ルートを辿ることができた。

「わあー、ナリスバーグっておしゃれで素敵ですね!」

 ナリスバーグの首都マクラービスは都会的で、パラスリリーでは見られない自動車が走っている。
 道のあちこちに大道芸人がいて、音楽や歓声で溢れる都市だ。

「なんだか空気が重いな……」

「それは自動車の排気ガスっていう煙ッス。あの乗り物が自動車で、周辺の国にもああいう乗り物や機械がたくさんあるッス」

 仕事で疲れ果て、街の騒音に嫌気が差したことを思い出す。
 必ずしも利便性の向上が豊かさには直結しない。


「オリヴァー、イワンさん! まずは服を買いに行きましょう!」

 キャボット家から没収した財産の中にナリスバーグの紙幣も大量にあり、ここでの買い物は苦労しない。

 ナリスバーグに倣った衣装を身にまとい、私たちは街中を見物する。


 なぜこのようなお気楽な時間になったかというと、サイスの協力が関係している。

「俺たちァ目立たねぇところに停泊させなきゃならねぇ。それに一緒に行動するワケにもいかねえなァ。俺たちァ俺たちで、おめぇたちはおめぇたちでこの街を楽しもうぜェ。俺の部下が接触するまでは自由時間だ。ガーハッハッハー!」

 
 というわけで、私たちは有益な情報が飛び込んでくるのを期待しながら観光を楽しんでいる。

「ナリスバーグは幾度となく戦争に勝ってきた大国で、先の大戦では自分も同じ陣営で侵攻したッス。同盟国として交流があったッスから、この国のことは結構知ってるッス」

 イワンはナリスバーグの土地勘もあるようだ。
 リチャードはその辺りも加味して任せたのだろう。

 何せ私たちが海賊の手を借りるなんて予想していないだろうから。

「遊んでるってバレたらリチャードさんに怒られちゃいますね」

 オリヴァーもイワンもいたずらな笑みを浮かべる。

「ドクターにおすすめの場所があるッス」


 イワンが見せたかったのは、庭園だった。

「クリムシュ庭園ッス。都市発展に伴う緑地減少の懸念を訴え続けていたクリムシュ氏の遺産ッス」

 都市のど真ん中、ここだけ切り取られたように緑が残っている。

 よく手入れされた植物はアーティスティックにレイアウトされ、今もクリムシュ氏が守りたかった自然は維持されている。

「あれはパラスリリーじゃなかなか手に入らない花だ!」

 オリヴァーは子供のようにはしゃぐ。

「良い薬の材料になるはずだ! でも種を持ち帰るとリチャードに燃やされるだろうなあ」

 パラスリリーにはたくさんの舶来品があるが、種や生花は例外だ。
 安易に持ち込んで既存の生態系に悪影響が出かねない。

「精油を売っているお店があるといいですね」

 お土産の話までして、本当に修学旅行のような浮かれた気分だ。
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