夏霧と君と、

せせらぎ

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前編

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神門  (みかど) ♂ 110歳  

御歳110歳を迎える見た目は高校生。(実際はおじいちゃん)好きな食べ物はミルクキャラメル

麦屋 空  (むぎや そら )♀ 高校生1年16歳

本作の主人公。都会から田舎の方へ祖母の家に遊びに来た。人にあまり心を開かない。好きな食べ物はキャラメルマキアート。

及川 鈴夢 (おいかわ れむ)♀ 高校1年生 16歳

都会に憧れる、村育ち村出身のギャルな女の子。彼氏持ち。最近の悩みはヘアアイロンが壊れたこと。村唯一の女子。好きな食べ物はフルーツの紐飴。

海未   (うみ)  ??? ♀ 年齢不詳

詳細不明 小さな女の子に見えるが…?

逢坂 潤  (おうさか じゅん) ♂ 高校3年生 18歳

逢坂香霧の兄であり、村唯一の18歳。ふざけてるように見えて1番しっかりしている。サッカー部キャプテン。THE 陽キャ。好きな食べ物は餃子。

逢坂 香霧 (おうさか こうむ)♂ 高校2年生 17歳

逢坂潤の弟。兄のせいで目立つのがすごく嫌だが、兄の事は嫌いではない。無口で人に懐きにくい。サッカー部所属。好きな食べ物はinゼリーのラムネ。


N  ナレーション  性別は問いません。


舞台はめちゃくちゃ田舎、と思って頂いて構いません。
思い出のマーニーくらい。小中高が全て合併して、子供が余りいない集落、村出身の子供達のお話です。


♂3 ♀3 不問 1 の台本となっております。






_______________







N : 空は仏壇の前で手を合わせていた。
空は、祖母の家に遊びに来ていた。 
実家の居心地が好きではないからだ。親に、祖母の元へ夏休みに遊びに行くむねを伝えた時、母親の顔は酷かった。


実の親だというのになぜそんなに否定をするのかは、空には分からなかった。



仏壇のおりんの音が空には何故か、心地よかった。すると突然誰かに肩を叩かれた。



N : 『空ちゃん、こんな遠くまでごめんなさいね。空ちゃんは麦茶嫌いじゃない?大丈夫?』



N : 肩を叩いた主は祖母であった。お盆の上には麦茶が2つと空の大好きなお菓子が並べてあった。



空 :「ありがとう、おばあちゃん。嫌いじゃないよ、居間で食べるね。」




家では味わえない高待遇に空は、いつもより少し気分が高揚こうようしていた。


______



N : 世間話や、向こうの学校での話に祖母と話に花を咲かせるていると祖母は懐から小さい紙を取りだした。




N : 『これ、お隣の五十嵐いがらしさんから貰ったのよ。よければ明後日のお祭いってらっしゃいな。』




N : 祖母はお祭の参加する為のチケットを空に渡した。




空 :「私、貰っても誰と…」(遮るように)



N : 『楽しんでらっしゃいね。あら、郵便屋さんだわ。』




空 : おばあちゃんのことは大好きだけど、人の話を遮って自分の話をする所、お母さんとそっくりだ。




N : 空は裏口からこっそりと抜け出し、家を後にした。



______




N : 炎天下の中、自転車を押しながら歩く男女のグループ。談笑だんしょうしながら、いつもより早い日の出てる時間に、彼らは辺りが田んぼだらけの道を歩いていた。



鈴夢 : 「どうしよう、明日彼氏とお泊まりなんだけど~~!!下着迷うんだけど何色がいいかな!!!?」


潤 : 「うわ、そういうの男に聞くなよ…。いや、俺が推す下着の色はな…。まずは堂々の第5位!」


香霧 : 「それ何時間かかるんだよ兄さん…。」


潤 : 「いや、黒も悩みどころだな…。でも鈴夢に黒はないだろ!!もってなさそう!」


鈴夢 : 「は?!めっちゃ失礼なんですけど!持ってるし!」


香霧 : 「え、意外。」


鈴夢 : 「香霧まで何よー!!このえろガキ兄弟!!当てにならないんだけどー!こんな時に女の子が居たらなあ…。」


潤 : 「お前それ言い出して何年だよ!??それ小学生の頃から言ってねえ?」


香霧 : 「確かにずっと言ってる気がするかもしれないな…。てかあっつ…。」


潤 : 「いやほんとそれ、暑すぎて鈴夢の下着の話なんか構ってらんねえよほんとによ~~」


鈴夢 : 「ほんと、こういう時男って頼りにならないんだけど! こんな時に女の子がいれ、ば….。って、あそこにいる子女の子じゃない!?」


N : 鈴夢が指を指した先には水色のワンピースに麦わら帽子を被った少し小柄な女の子が歩いてきていた。


鈴夢 : 「おーい!!!…あれ反応ないや。私走ってくる!!!!」


香霧 : 「え、」


潤 : 「え、なんそれめちゃ面白そう!あ、先行くなー!!」


N : 鈴夢と潤は走って、少女の元へ向かった。香霧は呆れながら少し小走りで2人の後についていった。




ちりん。



N : 小さな鈴音がした。香霧は気になって後ろを向いたが、そこには1匹の鈴をつけた黒猫であった。 香霧はまた前を向いて2人の後を追った。



海未「もう12ねんたったんだね、まってたよ。おねえちゃん。」




______



N : 空の目の前に男女が迫ってくる、異様な光景であった。逃げた方がいいのか、いや逃げれるのか、片足を少し引きづるとサンダルで地面が少しえぐれた。



鈴夢 : 「私の方が先!つかまーえた!!」


空 : 「えっ、あの…。」


潤 : 「お前早くねえ…???」


香霧 : 「兄さん、自転車忘れてくのはやめてよ…。」


N : 目の前に立つ珍しい制服を着た見知らぬ男女3人が、空に向かって走って向かってくる。2人は汗をかいて辛そうな顔している。

空には全くの理解のできない不思議な状況であった。


空 : 「あの、どちら様ですか…?」



鈴夢 : 「あ、何も言ってなかった!!私の名前は……。」




______



N : 一通り自己紹介を終えた後、日が暮れてきた彼らは顔を真っ白にしていた。空を引き連れ香霧と潤の家に向かった。

空はなぜ焦って向かっているのかが分からなかった。


まるで、何かに怯えるように。




空 : 「まだ、夕方じゃないですか、なんでそんな急いで…。」




鈴夢 : 「そんなこと言ってらんないの!ほら、早く!」



N : 空は、何もわからぬまま日が落ちる前に潤、香霧の家に入った。
どうやら2人は実の兄弟らしい。


香霧 : 「今日、この村に来たってさっき聞いたけどおばさんからは何も聞かなかった?」



空 : 「この村のこと、?私は何も…。」



鈴夢 : 「山の麓って、言ってたよね。あ、稲荷さんの家のとこ?」



空 : 「そう…!母方の祖母の家に夏休みの期間だけ遊びに来たんです。」


潤 : 「俺らにもすごく良くしてくれるけど、あのおばさん忘れっぽいからなあ…。仕方ない、俺らが教えてやるよ。」


N : “””村のこと。”””



______


香霧 : 「まずはこの村では守らないといけないルールがあるんだ。これを破ったら….俺達もどうなるかは分からない。」


潤 : 「このルールで結構厳しいんだよな、特に俺らみたいなガキに。」


N : 2人は深刻そうな暗い顔をしていた。風鈴がちりんと鳴るのに気づくと2人は急いで窓を閉めた。外は今にも日が沈む所だった。



鈴夢 : 「ま、まあ守ればなんて事ないよ!私達だって現に何もないし、ね?」



潤 : 「ま、それもそうだな!とりあえず、この本の1ページ目を開いてみてくれ。」











 
森田もりた村の禁止事項 その1


夏の間、日が沈んでから、日が上がるまで外に外出してはいけない。特に18歳以下の男女は特に気をつけること。

同時に家や施設の窓も締め切ること。












空 : 「変わったルール….。学校の修学旅行みたいですね。」



潤 : 「たしかに!言えてるかもな!」



N : 彼らによると、この夏の時期に日が沈むとこの村一帯は霧に覆われるらしい。

この村の人、”それ”のことを”夏霧なつぎり”と呼ぶ。

この夏霧に飲み込まれると、みんな行方不明になってしまうらしい。






まるで、神隠しにあったかのように。




N : 気になって窓から外を見てみると、さっきまで生い茂った草むらが見えていた窓の外は真っ白になっていた。




香霧 : 「この村はちょうど3年前くらいに隣の村と合併したんだけど、その村でもこの現象は起こっているらしい。」


N : 香霧は手元の携帯電話の位置情報を見せた。
どうやら私のおばあちゃんの家を境に、北と南で村が別れていたらしい。

南は今居る森田村、北は元々、佐郷さごう村という。

現在は合併し、全て森田村になったそうだ。



N : 空は、香霧の端末で位置情報を見ていると、ついさっきまで居たおばぁちゃんの家の裏の山の頂上付近に何かを見つけた。


空 : 「これ、ここだけ空いてますけどなにかここにあるんですか?」


N : 空の指差す端末には山の一帯の中で一つだけ空白になっている部分を見つけた。ちょうどおばぁちゃんの家から一直線上にそれはあった。


潤 : 「それ!それがさっきの本のその2に書いてるからページめくって!はやくはやく!」


N : 急かされるがまま、空は次のページを開いた。















森田村の禁止事項  その2


年に一回、夏の間に豊作を願って祭を開催しなくてはいけない。


雨や、如何いかなる理由があろうとも、8月の第二週の日曜日に行うこと。













空 : 「祭り…?この空いている所に何か神社とかがあるんですか?」



鈴夢 : 「そう!この村の一大イベント!稲荷神社でのお祭り!村の人みんなが集まって、屋台とか美味しいたこ焼きとか!食べれるの!今年は私が神社で巫女として舞をするから、空ちゃんも見に来てね!」


N : 鈴夢は空の手を握って笑いながらそう言った。笑ってる中に少し不安があるような気がした。顔が曇っているように私には見えたからだ。


空 : 「鈴夢さん、なんで少し不安そうなんですか?」


鈴夢 : 「え….?ご、ごめん私そんな不安そうな顔してたかな…! も、もうすぐだからさ緊張しちゃって…。」


空 : 「それって、本当ですか?」


N : 空はもう一度問い直した。初めて会った時はあんなに嬉しそうにしていた鈴夢が今は何故か暗く目が泳いでいたからであった。


鈴夢 : 「私、こわいの。」



空 : 「怖いって…?」



鈴夢 : 「この巫女って、この村の女性が毎年誰か選ばれてやらないといけない舞なんだ。だけど、私は練習で1度も成功してないの…。
この村のおばさん達や、私のお母さんも何年か前にやってるんだけど、
私の番が回ってこないようにって遠回しになるようにしてくれてたんだ。」


鈴夢 : 「だからね、本当はもっと早くやる予定だったんだよ。…でもこの舞はひとつでも間違えたら神門様、いや神様に怒られて巫女が生贄として連れ去られちゃう、っていう言い伝え。」



N : 鈴夢は、木のテーブルに置かれた本を1ページめくった。













森田村の禁止事項  その3


この村の神に好かれてはならない。


祭の舞で、間違えたり転んだりすると神に連れていかれるので十分に注意すること。















空 : 「そんな…。間違えただけで連れ去られるなんて…。」



N : 空は正直信じていなかった。本に書いてるとはいえ、本はだいぶ年季の入った古い本であった。たまに読めない箇所もあるくらい何度も燃えたり、ページが破れたりする所もあるくらいだ。



潤 : 「で、でも鈴夢めちゃくちゃ練習して頑張ってるんだろ?彼氏とのデートも我慢して練習してるの、俺らは知ってる!だから安心しろよ!鈴夢らしくねえな~~??」



香霧 : 「大丈夫、俺らがついてるよ。」




鈴夢 : 「はあ!?香霧はいいとして、らしくないってなによ潤!生意気なこのっ!!」



N : 潤と鈴夢が組み合ってるのを、空と香霧は呆れながら見ていた。



空 : 「2人とも、とっても仲良いんですね。」



香霧 : 「ほんとね、俺もびっくりするくらい。……..あ、まだ本読めてないページもあるだろうし、家に持ち帰って読んでみなよ。.. 兄さん、空ちゃんにこれ貸してもいい?」



潤 : 「いいぜ!あ、ちょっ、服引っ張るなよこのっ!こちょこちょしてやろうか~!!!?」



鈴夢 : 「は、はあ!?それはずるいって!あほ!ばか!あんぽんたん!えーと…お父さんに数学赤点取ったの言うよ!いいの!?」




潤 : 「は!?それは無しだろ、ちょ、まって!いたいたいたいたい!!!」




______



N : 空は外に出るのは危険と感じた為、メールでおばあちゃんに今日は逢坂家に泊まるとメールを送った。



空 : 「これでよしっと….。」



N : 隣には、さっきの取っ組み合いで疲弊している鈴夢が布団の中にぐっすりと眠っている。鈴夢の頬には泣いた跡があった。

寝返りで鈴夢が空の方に向かって抱きついてきた。




鈴夢 : 「…あれ、私抱きついちゃってた…。」(眠たそうに)



空 : 「鈴夢さん、大丈夫ですよ。くっついてても。」



鈴夢 : 「ほんとに…?ありがと、この村同い年の女の子がいなくてさ、いてもすっごい小さい幼稚園児の子とかだったから….お泊まりパーティーみたいでうれしい。本当にありがとう、この村に来てくれて….。」





N : 鈴夢はそう言うと、空に抱きついたまま眠ってしまった。顔はさっきより明るく幸せそうに眠っていた。



空 : 「ふふ、寝てると赤ちゃんみたい…。」



N : 空は鈴夢を眺め、膝の上に先程の本を置いて読み進めながら頭を撫でていた。




N :本のページの最後の方まで行くと、紙を覆い尽くす勢いで誰かの名前だけが書いているページがあった。 全て手書きで、名前と日にちが書いてある。



空 : 「なに…これ…….。」










N : ページの1番上には行方不明者、とだけ書かれていた。










N : ページをペラペラとめくっていくと、最後のページにたどり着いた。最後に書かれている名前を見て、空は驚愕した。















空 : 「麦屋 海未むぎや うみ….?」











N : その文字を見た瞬間、空は頭痛がした。今日の疲れが今来てるんだ、全く知らない地にいる訳だし、そう自分に言い聞かせ、本を閉じ鈴夢に抱きつく形で空は眠りについた。


























祭りまで、あと7日。
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