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それでも求め合うのです

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 スランはノエリアの頭の後ろに手を置き、額を軽く押さえた。痣が寝具にこすれないようにゆっくりとノエリアを上向きに寝かせる。
 胸を揉みしだく余裕もない客が多かったのか、元々あまり大きくなかったせいか、ノエリアの胸はそれほど崩れておらず、横になっても膨らみを保っていた。昼間に男たちから肩を強く押し付けられたようで、彼女の胸の膨らみに少しかかるように変色していて痛々しい。
 ノエリアの頭の後から手を引き抜いたスランはベッドに腰を掛けて、その大きな手を彼女の小ぶりの胸の上に置いた。そして、肩の変色の痕に舌を這わず。
「痛くないか?」
「くすぐったい。でも、暖かくて、とても気持ちいい」
 ノエリアを拐かした男たちに触れられると強い嫌悪を感じたが、スランの手だともっと触れてほしいと思ってしまう。その初めての感情に彼女は身を任せようと思った。

「わかった」
 スランは立ち上がり、暗くなってきた部屋にランプの火を灯した。不用意に触れてしまわないようにノエリアの痣の位置が把握できるようにしたいと思ったのだ。
 その灯りはスランの美しい筋肉にくっきりと陰影を落とす。
「スランのような美しい体は見たことはないわ」
「お世辞はいいぞ。俺も年だからな。若いやつには負けることはわかっている」
 いい気分にさせてなるべく早く終わらせるために、娼婦がお世辞を言うのは普通のことだ。長年騎士として鍛えてきたスランにとって、当然の体格なので褒められるようなものではない。もちろん他の騎士も同じような体をしている。若い男の方が張りも艶もあるだろう。

「スランが美しいのは本当だもの。ねぇ。触ってもいい?」
「男の体なんて触っても面白くないと思うけどな。腕を動かしても大丈夫か?」
 スランはノエリアの顔の横に両手をついて、彼女の腰に跨るようにして両膝をつく。ノエリアの肌に直接触れないように間を空け、スランはノエリアの手を自身の腹に持っていった。
 綺麗に割れた腹筋にノエリアの白く細い指が這う。体を重ねることは幸せなことだとスランが言った意味をノエリアは実感していた。
 スランが欲しい。愛を知らずに育ったノエリアにとって、その感情が愛だとはわからない。ただ、スランに満たされたかった。そう思ったノエリアは両手を彼の背中に回す。

 スランは一度息を吐き、ノエリアの体が上気してほんのり赤くなっているのを見て覚悟を決めた。
 女性に痛い思いをさせるのは本意ではないが、何も望まなかったノエリアが初めて希望を口にしたのだ。スランは叶えてやりたいと思う。
 スランの想いは愛ではなく哀れみだったのかもしれない。しかし、妻と娘という守るべきものを突然失ったスランは庇護欲を満たす相手を求めていた。騎士を辞めた今でも騎士道に縛られているスランの心は、確かにノエリアを必要としていた。
 
 スランは処女の花嫁のようにノエリアを大切に抱いてやろうと、ノエリアの首筋に唇をつけた。軽く吸いながらゆっくりと舌を這わせ胸の頂きに達した。舌を出して何度か転がすと乳首が硬くなる。
「気持ちいいか?」
 ノエリアはこのように大切にされたことはなかった。娼館では砂時計が落ちきるまでの時間制であったので、客はせっかちに突っ込んで精を吐き出して終わる。
 時間をかけて女性を楽しませるような性交は今まで経験したことはない。ノエリアは体が熱くなってくるのを感じる。そして、痣がズキズキと痛んだがそんなことは気にする余裕もなくなっていた。

「今まで感じたことのない気持ちなの。もっと触って欲しい」
 彼女は素直にそう口にしていた。スランは軽く乳首を吸いながら、片手で反対の胸を揉んだ。指の間に頂きを挟んでゆっくりと握ったり緩めたりを繰り返していると、ノエリアの呼吸が荒くなり、両足をもじもじと不自然に動かし始めた。
「もう感じているのか?」
「わからない。こんなの初めてだもの」
「まるで処女みたいだな」
 スランは嬉しそうに笑う。ノエリアには普通の女としての喜びを感じさせたかった。思った以上に感度は良さそうだが、その反応は初々しくて、スランは可愛いと思ってしまう。

 ノエリアは初めて自分から男を求めた。優しく、時に強く触れるスランの手も、快楽を引き出すように胸を這う暖かいスランの唇も、ノエリアは今まで経験したことがない。
 これから経験することは、苦痛だけしか感じなかった仕事としての性交とは明らかに違うとノエリアは感じる。体は何人もの男を受け入れてきたが、心は初夜に臨む処女のようであった。


 スランはノエリアの下着を取り去り、自身の下履きも脱いだ。スランの一物は既に勃ち上がっている。
 男根を見慣れているノエリアではあるが、勃起したものは少し滑稽だと感じていた。しかし、スランの浅黒く筋肉質な体についていると違和感はない。
 ぼんやりスランを見つめていたノエリアの足をスランは両手で開く。もとより羞恥心などなくしてしまっている。ましてや自分から望んだ相手だ。抵抗なく足を広げたノエリアは、今までの習慣で恥毛を剃っているので全てをスランにさらすことになる。

 スランの中指はすんなりとノエリアの中に咥えこまれた。太くて硬い指で膣壁を刺激すると蜜が溢れてくる。
「うぅ、スラン」
 ノエリアの切れた口から喘ぎ声が漏れる。スランの背中にまわされた腕の力が増した。
「痛くないか?」
「だ、大丈夫、だから。続けて」
 切れ切れに発するノエリアの言葉は艶を含んでいた。安心したスランは指を三本に増やす。独立した生き物のように膣でうごめくスランの指は、ノエリアの快楽の場所を探っている。

「あぁ。スラン、気持ちいいの」
 ノエリアの膣壁が快楽で震えて、スランの指を奥へと誘う。蜜は益々溢れてきていた。
「もっと感じろ。もっと幸せになれ」
 スランの低い声にノエリアは支配される。幸せなど知らないが、本当に幸せになることができる気がした。

 スランはノエリアの中から指を引き抜いて、指についた蜜を猛っている自身に塗りつけた。太いスランの男根がノエリアのむき出しのわれめに押し当てられ、徐々に中に侵入していく。
 思った以上にきついのは、スランのものが大きいからか、ノエリアが一ヶ月以上男を受け入れてなかったせいか。おそらく両方だろうと考えたスランは、ノエリアに負担をかけないようにゆっくりと入っていった。

 ノエリアの最奥まで達したスランは、なるべくノエリアの体が動かないようにゆっくりと抽送を繰り返す。
「熱くて大きい」
 実際は膣壁が温度を感じることはないはずだが、ノエリアは確かにスランの熱を感じていた。そして、初めて味わう喜びと満足感。これが幸せだとノエリアは思う。
 今まで感じたことのない幸せな想いに、ノエリアの目から涙がこぼれだした。
「痛いのか?」
 動きを止めて、ノエリアの涙を舐め取るスラン。蕩けるような笑顔をみせているノエリアだが、殴られた痕が痛いのかもしれないとスランは心配した。

「違うの。幸せだから。もっと動いて。もっと幸せになりたい」
 ノエリアは腕の力を込めてスランを引き寄せる。密着した肌も、大きな体の重みもノエリアは気持ちよかった。
 スランは動き始める。先ほどより激しく、打ち付ける音が聞こえるぐらいに。

「あぁ、いい」
 体に受けた痛みも、過去の辛さも、全て快楽で上書きされる。もっとスランとひとつになりたいと、ノエリアは益々腕に力を入れた。

 スランは乱れた髪から汗を垂らしながら、激しく動き続ける。彼の短い呼吸音とノエリアの喘ぎ声だけが、部屋に響いていた。


 それは普通の愛し合う男女の行為ではなかったかもしれない。
 それでも二人はお互いを必要としているし、結ばれている今はとても満たされていた。
 愛を知らない不幸で無知な女は、スランに向ける感情が愛であるとこれから知ることになるのだろう。
 愛する相手を突然失った男は、徐々に哀れみを愛へと変えていく。

 そして、愛の結晶を得るのも遠い未来ではない。
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みんなの感想(3件)

氷菓
2023.11.30 氷菓

よかったです。牢番さんが幸せになれそうで。
イケおじの魅力を感じました⭐️

解除
黒乃銃爪堂
2018.07.01 黒乃銃爪堂

「ろうしに」スピンオフも吾作どん……じゃなくて五作目ですか。
どれも面白かったので、牢番さんが主役のコレも期待しています。



ただねぇ…(精神的な面で)燃料不足の三男坊が書きかけ放置なのはいただけないかな?
彼にも早いトコ「幸せ」ってモノを教えてやって欲しいですね。

鈴元 香奈
2018.07.01 鈴元 香奈

感想ありがとうございます。

三男のものは、次男の物語が前提となっておりまして、そちらを先に書いておりました。
次男のものが完結しそうなので、三男も再開予定です。

ところで、シリーズで一番格好良いのは軍医さん(22歳独身)だと思うのです。
もう一作スピンオフが増えるかもです。

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コゲツ
2018.07.01 コゲツ

元牢番さんがヒーロー!?(‘∀‘ )

鈴元 香奈
2018.07.01 鈴元 香奈

そうなんです。元牢番さんが主役です。
変革する時代に翻弄されつつ、失うものがないからある意味強い女性と、妻と子を忘れることができなけれど、再び守るものを得た元騎士の切ない恋になる予定です。
でもギャグは入ります。

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