【R18】嘘がバレたら別れが待っている

鈴元 香奈

文字の大きさ
10 / 44

10.

しおりを挟む
「あっ!」
 夕食の片付けを終え風呂に入り、章の待つリビングにやってきた凪が声を上げた。
「どうかしたのか?」
 章が怪訝そうに訊く。両手を頬の当てて驚くような仕草など、凪は今までしたことがなかった。その動作が女らしく感じて、章は欲情を催してしまう。
「あのね。コンドームはもう持っていないの。どうしよう?」
 どこでもできるようにと、あの男に凪が持たされていたたった一つのコンドームは使ってしまった。
「心配しなくても、俺が持っている」
「えっ?」
 章の言葉に、なぜ避妊具を持っているのだろうかと凪は驚く。女性恐怖症の章は女性とも男性とも性経験はなさそうだった。
「凪のものを使ってしまったから返そうと思って買ったんだけど、こんなものを返せばもう一度してほしいと言わんばかりだなと思ったら、返せずにいた」
 章らしいと凪は思う。優しい章は十六歳だと思っていた凪にセックスを強要したくなかったのだろう。


「ここでいい? それともベッドへ行く」
 リビングは広く、三十畳ぐらいの広さは優にある。大きなホームシアターとL字に置かれたソファが半分ぐらいの場所を取っているが、残りの場所の中央には大きなラグが敷かれていて広さは十分だ。背中が痛いということもないだろうと凪は思う。
 章が女性に触れるのが怖いならば騎乗位にならざるを得ないので、凪は硬い床の方が柔らかいベッドより姿勢が安定して楽なような気がしていた。
 しかし、下になる章が柔らかいベッドの方がいいというのならば、反対するほどでもないと思う。
「凪が好きなところで」
 章は初めて凪と結ばれた場所でいいかと思っていた。
 目を覆われて予想できない快楽を与えられ続けた記憶を思い出し、章の体がうずく。

「それじゃ、ロープを持ってくる。章はコンドームをお願い」
 凪がリビングを出ていったので、章も部屋にコンドームを取りに行った。

「一枚しか使っていないのに、二十四枚入りを買ったんだ」
 章が差し出したのは普通より大きめの箱。
「凪に返すのにあまり安いものはと思って、高いものを選んだだけで、こんなに何回もしたいと思った訳では……」
 章が真っ赤になって恥ずかしそうに頷いている。買い慣れていない章が羞恥に耐えて選んだと思うと、凪は章を抱きしめたいほどに愛しいと思う。
「章が望むなら、いっぱいしよう」
 凪がそう言うと、章は恥ずかしがりながらも嬉しそうに頷く。凪も嬉しそうに微笑んだ。


「手を縛ってしまうと、脱ぐことができないから、上を脱いでおいて」
 凪がそう頼むと章が一気に薄めのトレーナーを脱ぎ去った。下には何も着ていない。均整の取れた美しい上半身が露わになる。目を凝らしてみると所々に傷があり、章が言った戦闘訓練を受けていたという言葉に現実味を与えていた。
 十一月に入っていて外は寒くなってきているが、床暖房が入っているリビングは寒いとは感じない。

「横になって。そして、手を頭の上に。ゆっくりと近寄るからね。大丈夫だから。章が私を傷つけるようなことはないから。でもね、私は章になら何をされてもいいと思うの」
 章は凪の言葉に素直に従い横になった。凪は章を刺激しないようにゆっくりと近付いていく。

 凪が章の手にそっと触れた。緊張して身を硬くした章だったが、凪の微笑んでいる目を見て緊張を解いていく。章の手首に負担をかけないように縛ると、凪はロープの端をソファの脚に括り付けた。
「これでもう私を傷付けたりできなくなった。大丈夫よ。楽しみましょうね」
 章が無言で頷いているのを見て、平常な状態だったので凪は安心した。


 凪はゆっくりと服を脱いでいく。広い空間で裸になるのは少し抵抗があったが、章に全てを見てほしかった。
 明かりを落としたリビングの大きなガラス越しに美しい満月が輝いている。その中で小ぶりながらも形の良い乳房をさらす凪。羞恥は凪の体を赤く染めていくが、それも扇情的だと章は思う。間近で見た凪の体は、今まで見てきたスクリーンの中の幾多の女性よりも圧倒的に魅力があった。
 瞬きもせず凝視している章と目が合って、その中に確実に欲が含まれるのを感じ凪は嬉しく思う。煽るようにことさらゆっくりとボクサーパンツを下ろしていく。
 色気のない下着を脱ぎ去った後には小ぶりの丸い尻が現れて、章は唾を飲み込んだ。
 月明かりに照らされている凪の体は、細身だが成熟した女性の色香を惜しげもなく放っていた。なぜこれほど魅力的な女性を少年だと思ってしまったのかと章は思う。

 スクリーン中で見る分には楽しめる女体だが、現実に近くにいると、章の腕の中で脆く崩れていった女性の骨の折れる音や感触が蘇って、章はとても平静ではいられない。しかし、凪が女というものを上書きしていくようだった。辛い思いも、苦しい記憶も全て書き換えていく。

 凪もまた、殴られて男の欲望を満たすためだけに抱かれていた記憶を、あの男のためだけに全ての楽しみを捨ててしまった生活を、全て章が上書きしていた。凪の思い出は章と暮らした三週間で埋められていく。

「章、好きよ」
 全裸になった凪が章の唇に自らの唇を合わせる。触れるだけのキスは章にとって初めての経験だった。
 前回はあまり近付くと女だとバレるのではないかと恐れて、凪は章の口にはキスをしなかった。
「俺も凪が好きだ」
 章の言葉が凪にとって何より嬉しい。章が欲しいと心から思う。章もまた同じ気持ちだった。
 二人の欠けている部分を補う必要があると言わんばかりに、魂がお互いを求めていた。

 凪が舌を章の口内に差し入れると、章の舌が迎え入れる。章の拙い動きさえ凪を高めていく。愛しい人に触れ、キスをする。それだけで満たされていく。

 凪の唇は章の首筋に下りていき、舌でなめ上げる。凪の胸は章の胸と合わせるように動いていく。上半身が動く度に章と凪の乳首が絡まり刺激を与えた。

 凪の手が章の股間に伸びて、ズボンの上からもわかるぐらいに十分な硬度と大きさになっているのを確かめた。
「もう大きくなっている」
「凪が綺麗だから」
 凪は愛しい人が自分の体を見て勃起しているのが嬉しいと思う。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

処理中です...