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SS:凪は通販で手枷を買う
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ある土曜日の昼食はお好み焼きだった。甘辛く煮込んだ牛すじ肉と焼きそばが混ぜ込まれている出汁のきいた関西風のお好み焼きで、章は初めて食べたが一口で気に入った。煮込んだすじ肉も食べさせてもらって大満足したころ、凪が箱を持ってリビングにやってきた。
「あのね。これ買ってみたの」
凪が箱から取り出したの黒い革の手枷。短めのチェーンで二つが繋がれていて両手が拘束出来るようになっている。見かけは凶悪だが肌に当たる部分は柔らかい布で、手首に負担をかけないように配慮されているようだ。
「こんなもの、どこで買ったんだ?」
明らかにアダルトグッズらしい手枷を見せられて、章は頭を傾げた。
「通販で売っていたの。ロープだと痛いと思って。あの、これをつけて……」
大好きな凪に懇願するように見上げられたら、どんな頼みでも聞いてしまうと章は思う。ましてや章の手を拘束するということは凪からの誘いに違いない。章の頬が期待でほんのり染まる。
「一緒に近くで映画を見たい」
凪の願いは章の思いとは違ったが、章に異があるはずもなく笑顔で頷いた。
ホームシアターは百六十インチスクリーン、天井に設置された高ルーメン高解像度のプロジェクタ、そして、重厚な音を誇るスピーカーで構成されており、尊が選んで専門の業者に施工させたものだ。凪にはどれぐらい高価なものか判断つかないが、高級であることはわかる。動画投稿サイトの映像であっても迫力満点だった。
スクリーンの前にはコの字型に低めのソファが置かれている。ソファは十人ぐらい余裕で座れそうなほど大きくて、映画やテレビを見る時は、章と凪はかなり離れて座っている。それが凪には少し寂しかった。
手首を拘束するだけでセックスが出来るのならば、隣に座って映画も見ることも出来るのではないかと凪はある日思い立った。そこで通販サイトを調べると様々な手枷が売っていたので、思わず購入ボタンを押していた。
支払いはコンビニで済ませることができた。箱には何も書かれていないので、宅配業者にもバレることはない。
「ソファの真ん中に座って待っていて。近付くけれど怖がらないで」
章にとっては緊張の時だ。震えながら凪を待つ。
「大丈夫だから。章は私を傷付けたりしない」
それは凪の儀式だった。章の震えが少し落ち着く。
まだ少し震えている章の手を取り凪は枷をはめていく。まるで奴隷のような姿だが、章にとっては安穏を得るための大切な装置だ。
落ち着いた様子の章に安心した凪は、章の隣に腰を掛けた。普通の恋人のように章の肩に頭を乗せた凪は、
「幸せ」
そう呟いたので章も幸せな気分になった。
普段凪に近寄らない章は、凪の香りを嗅ぐのも体温を感じるのもセックスの時だけだ。隣に座った凪から漂ってくるいい香りも腕に押し付けられた胸の感触も、章に快楽を思い起こさせ既に欲情してしまっていた。
凪が選んだ映画は明るいアニメ作品で、欲情するような要素は皆無である。しかも、凪はとても楽しそうにしている。普通の恋人や夫婦の距離感だからだろう。
章が横を向くと凪の形の良い薄い唇が目に入り、自分のものを咥えている淫靡な凪を思い起こして更に煽られる。
下を向くと、凪の白い手が章の目に入る。あの細い指で自分のものを扱かれてどれだけ気持ちいいかを思い出す。
章は諦めて映画に集中しようと思うが一旦集まった熱は去らない。
映画が終わったら凪に鎮めて欲しいと懇願してみようと章は思う。
優しい凪は頬を染めながらも、章に快楽を与えてくれるだろう。
「面白かったね」
「うん」
章の頭は凪のことで一杯で、映画のストーリーなど全く入っていない。ネットであらすじだけでも確認しておかなかればと章は思いながら、凪をどう誘おうかと悩んでいた。
「もう一本観たいな。その前にデザートにしよう。お昼はお好み焼きだけだったからお腹が空いたでしょう?」
「デザートって何?」
凪が欲しいと言おうとした章だったが、食欲に負けて思わず聞いていた。
「フレンチトースト。お昼に液に浸しておいたの。手枷外してすぐに焼くね」
性欲か食欲か、章が悩んでいるうちに、凪は章の手首から手枷を外してキッチンに消えていった。
「章、できたよ」
呆然としていた章を呼ぶ声がする。振り返るとテーブルの上には大きな皿があり、柔らかそうなフレンチトーストに半球型のバニラアイスが乗っていた。
「ここのキッチンすごいよね。アイスデッシャーも揃っているんだもの」
凪は笑顔で章を見ていた。
章はため息を一つついて、夜には絶対に凪を誘うと決意しながらテーブルに向かう。
「何だよこれ。ほんのり甘くて柔らかくて暖かい。溶け始めたアイスクリームも美味い。いくらでも食べられるぞ」
結局デザートを堪能した章だった。
「あのね。これ買ってみたの」
凪が箱から取り出したの黒い革の手枷。短めのチェーンで二つが繋がれていて両手が拘束出来るようになっている。見かけは凶悪だが肌に当たる部分は柔らかい布で、手首に負担をかけないように配慮されているようだ。
「こんなもの、どこで買ったんだ?」
明らかにアダルトグッズらしい手枷を見せられて、章は頭を傾げた。
「通販で売っていたの。ロープだと痛いと思って。あの、これをつけて……」
大好きな凪に懇願するように見上げられたら、どんな頼みでも聞いてしまうと章は思う。ましてや章の手を拘束するということは凪からの誘いに違いない。章の頬が期待でほんのり染まる。
「一緒に近くで映画を見たい」
凪の願いは章の思いとは違ったが、章に異があるはずもなく笑顔で頷いた。
ホームシアターは百六十インチスクリーン、天井に設置された高ルーメン高解像度のプロジェクタ、そして、重厚な音を誇るスピーカーで構成されており、尊が選んで専門の業者に施工させたものだ。凪にはどれぐらい高価なものか判断つかないが、高級であることはわかる。動画投稿サイトの映像であっても迫力満点だった。
スクリーンの前にはコの字型に低めのソファが置かれている。ソファは十人ぐらい余裕で座れそうなほど大きくて、映画やテレビを見る時は、章と凪はかなり離れて座っている。それが凪には少し寂しかった。
手首を拘束するだけでセックスが出来るのならば、隣に座って映画も見ることも出来るのではないかと凪はある日思い立った。そこで通販サイトを調べると様々な手枷が売っていたので、思わず購入ボタンを押していた。
支払いはコンビニで済ませることができた。箱には何も書かれていないので、宅配業者にもバレることはない。
「ソファの真ん中に座って待っていて。近付くけれど怖がらないで」
章にとっては緊張の時だ。震えながら凪を待つ。
「大丈夫だから。章は私を傷付けたりしない」
それは凪の儀式だった。章の震えが少し落ち着く。
まだ少し震えている章の手を取り凪は枷をはめていく。まるで奴隷のような姿だが、章にとっては安穏を得るための大切な装置だ。
落ち着いた様子の章に安心した凪は、章の隣に腰を掛けた。普通の恋人のように章の肩に頭を乗せた凪は、
「幸せ」
そう呟いたので章も幸せな気分になった。
普段凪に近寄らない章は、凪の香りを嗅ぐのも体温を感じるのもセックスの時だけだ。隣に座った凪から漂ってくるいい香りも腕に押し付けられた胸の感触も、章に快楽を思い起こさせ既に欲情してしまっていた。
凪が選んだ映画は明るいアニメ作品で、欲情するような要素は皆無である。しかも、凪はとても楽しそうにしている。普通の恋人や夫婦の距離感だからだろう。
章が横を向くと凪の形の良い薄い唇が目に入り、自分のものを咥えている淫靡な凪を思い起こして更に煽られる。
下を向くと、凪の白い手が章の目に入る。あの細い指で自分のものを扱かれてどれだけ気持ちいいかを思い出す。
章は諦めて映画に集中しようと思うが一旦集まった熱は去らない。
映画が終わったら凪に鎮めて欲しいと懇願してみようと章は思う。
優しい凪は頬を染めながらも、章に快楽を与えてくれるだろう。
「面白かったね」
「うん」
章の頭は凪のことで一杯で、映画のストーリーなど全く入っていない。ネットであらすじだけでも確認しておかなかればと章は思いながら、凪をどう誘おうかと悩んでいた。
「もう一本観たいな。その前にデザートにしよう。お昼はお好み焼きだけだったからお腹が空いたでしょう?」
「デザートって何?」
凪が欲しいと言おうとした章だったが、食欲に負けて思わず聞いていた。
「フレンチトースト。お昼に液に浸しておいたの。手枷外してすぐに焼くね」
性欲か食欲か、章が悩んでいるうちに、凪は章の手首から手枷を外してキッチンに消えていった。
「章、できたよ」
呆然としていた章を呼ぶ声がする。振り返るとテーブルの上には大きな皿があり、柔らかそうなフレンチトーストに半球型のバニラアイスが乗っていた。
「ここのキッチンすごいよね。アイスデッシャーも揃っているんだもの」
凪は笑顔で章を見ていた。
章はため息を一つついて、夜には絶対に凪を誘うと決意しながらテーブルに向かう。
「何だよこれ。ほんのり甘くて柔らかくて暖かい。溶け始めたアイスクリームも美味い。いくらでも食べられるぞ」
結局デザートを堪能した章だった。
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