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チーレム主人公なんて側から見ればロクでもないピーーー

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それはそれは昔

世界に突如現れた〈魔王〉は魔物を操り種族関係なく国々へと放った。

その災害のような被害は留まるところを知らず、人々は疲弊し、希望を失っていった。


そんな中、残った5つの国の王は話し合い、最後の希望としてそれぞれ国で1番の戦力をひっそりと魔王の元へ送り出した。

ヒトの王国より、加護の勇者
ヒトの帝国より、救恤の聖女
エルフの王国より、万智の賢者
ケモノビトの国より、羨望の盗賊
     より、黒鎚の騎士

彼らが後に魔王討伐者として始祖の5大英雄と呼ばれる事になり、世界は平和を取り戻した。

ーーそれから世界は繰り返していた。
魔王と、英雄の殺し合いを。


~~~~~~


はて、英雄がソトからの人間になったのはいつからだっただろう。

果ての見えない白い空間で、その人は首を傾げた

加護は与えている。最初のときからずっと、ずっと。
だが、それなら、なぜ〈勇者〉をソトの者がやっているのだろう。
…まぁ、どうでもいい。きっと今回予定通り終わるだろう。

あぁでも、今回来た中に、珍しい能力を持った奴がいたな。異例とか面倒だからやめてほしい。まぁ何とかなる、寝よう。

次に喚ばれて目が覚めたとき、激しい後悔に襲われた。


「困ったもんだよあの脳筋野郎」

「ほんとですよ!!…てことで助けてください!!!運命神さま!」

そう言ってやたらキラキラ、ゴチャゴチャした服を着た馬鹿が平伏したのをみて、深く溜息を吐いた

「自分でなんとかしろ」

「それが出来ないのわかってるでしょう!?あんた神様だろ!」

「そういうお前は王様な」

ぴっと指を指すとぐっと言葉に詰まったのは

カザサール現国王
リバネヴァール・レオン・カザサール

こいつには、こんなでも割とかなり同情している。


ーーそれというのも

庭の方で気配が動いたのを感じて目線を移せば、豊かな金髪の少女が木陰からそっと城の裏門の様子を伺っていた。
それを見ていつの間にか隣に来ていたネヴァが歯ぎしりをしている

また深い溜息を吐き、裏門にいる衛兵を窓越しに指差す

『王女のお通りだ、いつものように』

チラリとこちらを見た衛兵は、突然裏門から散らばり離れていったように見せかけて、少女から見えない位置で待機している。

何も知らない少女はスキップでもしそうな勢いで門を出ていき、その後を衛兵とは服装の違う、少女専門の護衛が付いていった。

「どりじぁあぁああぁぁ…」

「またヤツに会いに?…どうやって始末しよう」

そして愛娘である少女を凝視する国王と、妹に近づく〝彼〟の始末計画を立て始めるストーk、ごほっごほっ、第二王子。この親にしてこの子だとつくづく思う。

ここにはいないが第一王子もトリシア姫の監視をさせている部下に報告を受け、部屋の窓から見送っていたことだろう。
やはり親子。そして国王働け。

「…どうするんだ、あの乙女花畑は?」

「いつもの会議を開きましょう。
僕、ヤツを殺、始末、処ぶ、…妹から引き離す計画を立てて来ましたから、その役割分担を。
運命神様もお手伝いくださいね、じゃないとあの化け物的生命力、ヤツを始ま、処分、殺、…ぶっ殺すことができませんから」

おい王子。やめろ。爽やかな笑顔と敬語だけど目が死んでるし訂正しきれてないから。アウトだから。おい国王、よっしゃあやるぞ!じゃない、止めろ。
異世界からの客向こうの女神のお気に入りだから、ぶっ殺すと世界規模で軋轢起きるから!!

目を閉じて気配を探り、すぐ見つけた彼女は異世界から来た予想外のチート野郎とそれはもう楽しそうに話してやがった。


私が加護を与えて見守って来てやった
今代の〈聖女〉
トリシア・クラヴェル・カザサールは
チート主人公のハーレム要員に堕ちました。


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これは「運命」もとい世界の大筋をねじ伏せまくるチート野郎と、聖女をとられた王家変態のドロドロサスペンスである。

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