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第2章
館長の一声
しおりを挟む「何を揉めてるんだ、お前達……。スタッフ控室まで声が聞こえてたぞ」
「館長」
「植松さん」
我らが館長のお出ましだった。もう分かる、旗色が悪い。館長は困っている人間や魚、海獣に優しすぎるのだ。それを分かってる俺たちは、競うように両側から好き勝手に事情を館長へ吹き込んだ。それを黙って聞いてくれた後、予想できた言葉を館長は言う。
「――渚、泊めてやれ。館の車貸してやるから」
「えぇ……?やですよぉ。館長が引き取ってくださいよ」
「うちには手に負えないお転婆娘が三人もいるんだ。世話して懐いたなら、ちゃんと最後まで責任を持て」
「世話してないのに勝手についてきたんです」
「俺、犬猫かなんかだと思われてません?」
中条が何か言っているが無視だ。さっき館長が許可した時、ガッツポーズしたのを見てたからな。
「それに、俺はあの家にお前が一人なのも心配してるんだ」
「まつおじさん……」
「こら、『館長』だろ」
額に軽くデコピンされて『気をつけて帰れよ』とだけ言い、颯爽と立ち去った館長の後ろ姿を曲がり角で見えなくなるまで見つめ続けた。ここまで館長に言われてしまったのだ。この犬は連れて帰ろう。
「しょうがねえから拾ってやる。館長に感謝しろよ」
「……瀬名って、館長仲良いよな」
「はあ?まあ、ちっせー頃から世話になってるし」
「瀬名も館長のこと、好きだよな」
「まあ、好きだけど。てかあの人のことを嫌いな人なんていないだろ?」
「……」
「何だその変な顔」
「……何でもない……」
「まあいいけど。運転はお前がしろよ」
「……へーい」
というか、車があるなら家まで帰ったらいいんじゃねえのか、と言いかけたが、許可を出してしまった手前、今更断りづらい。スタッフルームにカバンを取りにいくぞ、と中条に声を掛けた。しかし、中条はフラフラと付いてきながらも、ずっと可笑しな顔をしていた。なんなんだ。
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