神薙

るくねこさん

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神薙

五風古書店

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日ノ本は神で溢れている。
人は、神に祈る。
神もまた、人に願う。
神と人は決して違う者であった。
人は神になれない。
神もまた、人になれない。
神も人も、互いにはなれなかった。
だが、人であり神である者達もいた。
彼らはこう呼ばれていた。
「神薙(かんなぎ)」と。

「いらっしゃいませー」
風が冷たくなり始めた時期は、店番がまた辛い者であった。
「探してる本があるんだけど、亭主はいないのかい?」
入って来た客が座っている僕をみて話しかけてきた。
この質問も、何度目か
「ようこそ五風古書店へ。2代目亭主の宗太郎です。お探しの本があるならご案内しましょう」
ここは、街のはずれにある、古びた古書店だ。

「まいどどうもー」
入って来た客は、目当ての本まで案内されると、飛ぶように会計を済ませ、出て行った。
久しぶりの客ではあったが、一人での店番もまた、嫌いではなかった。
日が落ちて来たので、店の戸締りを済ませると家の中へ入る。
居間を見ると、そこには見慣れた小さな姿があった。
「宗太郎お疲れー。ご飯ご飯、ご飯なにー?」
こいつの名前は「佐々木 零(ささき れい)」わけあってウチに居候している。
年端もいかない男なのに、度胸だけはあるようだ。
「いま店閉めたんだよ。冷奴(ひややっこ)だから、今準備してやるから待ってろ」
「はーい」
家で本を読んでいるだけのくせによく腹が減る奴だ。
夕方買って来て台所に置いて置いたので、準備はすぐに終わる。
あとはー
「昨日の残りでいいか」
昨日炊いた米を茶碗に盛り付けて、今の机の上に並べる。
「ほらよ、食え」
二人分の豆腐と冷えた釜飯。
これもまた、悪くないはず。
「つめたいご飯?あとこれ、ただのお豆腐だよね。醤油くらいあっても」
「いだだだだだっ!冗談!これで十分です宗太郎様!」
生意気な口を掴んで反抗してやった。
「豚箱の中身でよければやるが、どうかな?」
「すみませんでしたぁ!」
決まって質素な晩飯は、いつもこう騒がしい。

よく考えたら、普通に食事をしたのが、これが最後かもしれない。
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