短編小説集「フラスコの中の物語」

死の予言

まずい。
非常にまずい。
事の発端はついさっき。
仕事に行く途中の商店街の小汚い占い屋の話だ。
通りかかった女性に向かって老婆は「そこのお姉さん」と声をかけているのをたまたま目にした。すると老婆は「あなたは５分後に死ぬね」と言っていった、当の女性もばかばかしいと言わんばかりに止めた足をすぐに動かした。
僕も嘘だとは思ったが気になったので彼女を後ろをつけてみることにした。
彼女が５分後に死ななかったことを確認した上で、心の中でインチキ占い師とバカにしてやるつもりだったのだ。
彼女はケータイをいじりながら角を曲がって、さらに角を曲がって大通りに出た。
なんら変わらないただの帰路を追いかけ回しているだけな気がした。
腕元の時計を見ると余命宣告(笑)から４分５０秒が経つところだった。
バッと彼女を見ても周りには何の変化もない。
「なんだ...やっぱガセか」
きた道を戻ろうと振り返った瞬間。
「きゃぁーーーーっ！」
後ろから甲高い声が聞こえた。
その断末魔の正体はー
さっき余命宣告をされた彼女だった。
トラックが柱にぶつかって止まっている。
その目の前には...
首が180度回った彼女が横たわっていた。
「う、うわぁああああああああ」
僕は走った、目的地もないまま現実から逃げようと走りまくった。
息が切れて、周りを見渡すと、そこにはさっきの占い屋があった。
「そこのお兄さん...」
老婆がまた口を開いた。
「う、嘘...だろ...」
「3分後に死ぬよ」
嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
「いやだぁあああああ」僕は焦った、あと、３分未満で僕が死ぬ。周りを見渡して安全確認を1回、3回、10回と繰り返す。
時計を見ると余命宣告からちょうど２分。
あと1分で...死ぬ
「いやだ...いやだ...死にたく...ない」時計をじっと見つめる...あと５秒。4、3、2、1ー

「うわぁっ！？」
息を切らして飛び起きると、そこはベットの上だった。
どうやら、夢だったらしい。
「夢...かよ...」
汗だくの顔を拭きながら一安心をした。
嫌な夢を見たな、と思いながら着替えを始めた。
嫌な気分を抱えたまま今日も会社に向かう。
ふろ、会社に向かう途中で「占い屋」というものを目にした。
その店の中に座っている老婆に、一言言われた。
「あんた、今死ぬよ」
「は？」
振り返ると、僕の視界は車で埋まっていた。