1 / 1
魔境堕蛇羅
しおりを挟む
兄貴のラックから勝手にスカジャンを拝借した。
別に着たいわけじゃない。つーか正直御免被る。
鳥の翼をもった車のキー3羽が、周囲に極彩色の光を振りまいて笑うミラーボールっぽい太陽に向かって飛んでいて。
エッフェル塔が姫路城を縦にぶち割りながら聳え立ち、城の中の家老達は太陽の光のつぶに乗ってサーフィンしながら脱出。
そして一番大きく描かれている、金色の雲をまとったやけに神々しい白蛇が、その地獄のような光景を見ながら何語かでつぶやいている。
「Sono alle XXXX, questo trasforma l'anima in FACK!」
デザインが喧嘩している、目がちかちかする、悪趣味…等という感想では到底形容が間に合わない。
そんな『魔境』がでかでかと刺繍されたスカジャンなんて。
でもこんな意味不明なもんでも、兄貴はいたく気に入っていた。
物持ちが悪いアイツが、薄汚れてヨレヨレになっても裾が擦り切れても着続けていたし、恥ずかしいから出ていくときに着るのはやめろと散々言っても逆に魅力を小一時間力説されたりもした。
常人の理解をゆうに超え、小一時間見つめ続ければ1日中センチメンタルな気分になってしまいそうなレベルの代物を何故私がパクッているかというと…。
確かめたいことがあった。
兄貴は、まだこの魔境に住んでいるのか。
1か月前、兄貴に彼女が出来た。
ツーショット写真を見せてもらったけれど、なかなかオシャレな女性。
シンプルな中にガーリーがちゃんとあるコーデとメイクは、ファッションへの相当なこだわりを感じさせた。
横でへらへらピースマークを作っていた兄貴の私服はだささが際立っていた。
諭されたのか自分のセンスのなさに気づいたのかは知らないが、最近兄貴は上着をライダースに変えた。
彼女に選んでもらったのだとおもちゃを与えられた子供の様に舞い上がる姿は間が抜けて見えたが、元々スタイルはいい方なのでとても晴れやかに着こなしていた。
だから私は実験を敢行した。
結果は、あんなに気に入っていたスカジャンが1週間部屋からなくても全く気づかなかった。
兄貴の惚れこんだ魔境は、彼女という存在を前にいとも簡単に寂れてしまった。
アイツは今日も洗面台に鼻歌交じりで30分も張り付いて髪をセットしたあと、ピカピカのライダースを来てデートに向かった。
うっきうきでバカみたい。中学生かよ。
私とのショッピングのときは気にもしなかったくせに。
「彼女が」って枕詞をいちいちつけて話すな、うざい。
会ったこともないのに欲しいものなんて知らないよ。自分で考えろよレビュー★1のパチモンの化粧品紹介してやるぞ。
…私が一番かわいいんじゃなかったのかよ。
不満が止まらないどうしようもない私をスカジャンの蛇は笑っているように見えた。
ねー、蛇ちゃん。
アンタのいる世界を理解したら、もう一度アイツの世界を構成できる。
そんな気しない?
今日も私は行き場なく渦巻く想いとスカジャンを抱きしめて、眠りに堕ちる。
いつか、この蛇のマニアックな住みかの夢を見ることを夢見ながら。
別に着たいわけじゃない。つーか正直御免被る。
鳥の翼をもった車のキー3羽が、周囲に極彩色の光を振りまいて笑うミラーボールっぽい太陽に向かって飛んでいて。
エッフェル塔が姫路城を縦にぶち割りながら聳え立ち、城の中の家老達は太陽の光のつぶに乗ってサーフィンしながら脱出。
そして一番大きく描かれている、金色の雲をまとったやけに神々しい白蛇が、その地獄のような光景を見ながら何語かでつぶやいている。
「Sono alle XXXX, questo trasforma l'anima in FACK!」
デザインが喧嘩している、目がちかちかする、悪趣味…等という感想では到底形容が間に合わない。
そんな『魔境』がでかでかと刺繍されたスカジャンなんて。
でもこんな意味不明なもんでも、兄貴はいたく気に入っていた。
物持ちが悪いアイツが、薄汚れてヨレヨレになっても裾が擦り切れても着続けていたし、恥ずかしいから出ていくときに着るのはやめろと散々言っても逆に魅力を小一時間力説されたりもした。
常人の理解をゆうに超え、小一時間見つめ続ければ1日中センチメンタルな気分になってしまいそうなレベルの代物を何故私がパクッているかというと…。
確かめたいことがあった。
兄貴は、まだこの魔境に住んでいるのか。
1か月前、兄貴に彼女が出来た。
ツーショット写真を見せてもらったけれど、なかなかオシャレな女性。
シンプルな中にガーリーがちゃんとあるコーデとメイクは、ファッションへの相当なこだわりを感じさせた。
横でへらへらピースマークを作っていた兄貴の私服はだささが際立っていた。
諭されたのか自分のセンスのなさに気づいたのかは知らないが、最近兄貴は上着をライダースに変えた。
彼女に選んでもらったのだとおもちゃを与えられた子供の様に舞い上がる姿は間が抜けて見えたが、元々スタイルはいい方なのでとても晴れやかに着こなしていた。
だから私は実験を敢行した。
結果は、あんなに気に入っていたスカジャンが1週間部屋からなくても全く気づかなかった。
兄貴の惚れこんだ魔境は、彼女という存在を前にいとも簡単に寂れてしまった。
アイツは今日も洗面台に鼻歌交じりで30分も張り付いて髪をセットしたあと、ピカピカのライダースを来てデートに向かった。
うっきうきでバカみたい。中学生かよ。
私とのショッピングのときは気にもしなかったくせに。
「彼女が」って枕詞をいちいちつけて話すな、うざい。
会ったこともないのに欲しいものなんて知らないよ。自分で考えろよレビュー★1のパチモンの化粧品紹介してやるぞ。
…私が一番かわいいんじゃなかったのかよ。
不満が止まらないどうしようもない私をスカジャンの蛇は笑っているように見えた。
ねー、蛇ちゃん。
アンタのいる世界を理解したら、もう一度アイツの世界を構成できる。
そんな気しない?
今日も私は行き場なく渦巻く想いとスカジャンを抱きしめて、眠りに堕ちる。
いつか、この蛇のマニアックな住みかの夢を見ることを夢見ながら。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる