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猫の名は

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 ミカはようやく退院の日を迎え、動物病院が併設されている自宅に帰ってきた。

 ミカは自宅に戻るなりすぐ、噂の黒猫くんに会いに行った。

 今日は土曜だが、動物病院は相変わらずの混み合い具合で、ミカは手伝いをしようとしたが、カヨちゃんと和恵ばあちゃんに「病み上がりの怪我人は部屋で、ゆっくりしててください」と怒られてしまった。

「じゃあ、話し相手に噂の黒猫くんを持っていくね。」

 と言って、ミカは黒猫の入っているゲージを持って部屋に戻った。

 久しぶりの自分の部屋を感慨深く眺めつつ、ミカは猫の入っているゲージをおろし、その扉を開けた。

 途端、しゅるりとツヤツヤした毛並みの黒猫が出てきて、ミカの顔を見ながら訴えかけるように鳴いた。

「みゃーおぅ。みゃー。にゃ。みゃー。」

「もしかして、ダルなの?」

 半信半疑のミカの問いかけに、黒猫は返事するかのように「みゃー。」と鳴いて、ゴロゴロと喉をならしながらミカの膝に擦り寄った。

(ダル!?いやいや、偶然鳴いただけかも·····)

 ミカは試しに色々な名前で呼んでみた。

「ルク!」
「黒猫!」
「ヤマト!」
「クロ!」

 ミカの呼びかけに対し黒猫は無反応で、ペロペロと前足をなめて、顔をこしこし洗っている。

「ダル!」
「みゃー」

 ミカがダルと呼ぶとすかさず、黒猫はこちらを向いて返事をした。

「やっぱりダルなのね!良かった·····無事にこちらの世界に来れてたのね!!ダル!手術後で身体も痛んだだろうに、和恵ばあちゃんを海に誘導して、倒れている私を助けてくれてありがとう!」

 ミカがきゅっとダルを抱きしめると、てしっと黒猫が肉球の手でミカの頭を撫でた。

(言葉が通じない以上、本当にダルなのかは分からない·····でも、ダルだと思いたい!ダルがここにいるのだから、きっとクロードもグラもこちらの世界に来てるはず!)

 その日の終わりに、ミカは和恵ばあちゃんに命の恩人(恩猫?)である、この黒猫を自分で飼いたいと話をした。黒猫を探している元の飼い主がいなかったら、そのまま飼い続けて良いという話に落ち着いた。
 ミカの提案で、黒猫の名前はダルに決まった。


 その翌日、ミカは大型家電量販店に携帯を買いに行った。
 車で崖から海に落下して、持ち物はすべて水没してダメになってしまった為だ。

 スマホを確保した帰り、ゲーム売り場のフロアで、ミカは立ち止まった。

「そう言えば·····ヒロコに借りたもの一式買って返さなきゃ。」

 ミカはゲーム機とソフトを買って、家に帰った。

 家に帰るとまず、ミカは携帯データを再登録し直した。そして、SNSの情報を『ミカ』『外資系企業の人事部のOL』と改めて、英語でも登録した。
 クロードが探してくれた時に見つけやすくする為である。

(クロードが英語圏の人ではなかった時のために、フランス語とかドイツ語、スペイン語でも登録すべきかなぁ·····サムグレース王国の雰囲気から欧米のイメージあったけど、アジア圏、中東、アフリカとかの可能性もあるよな·····そう考えると果てしないな·····クロードに会うために、何か手がかりがあるといいんだけど·····)

 ミカが悩みながらスマホをいじっていると、黒猫のダルがカバンの中から、買ってきた家電量販店のビニール袋を引っ張り出して、「ごあーん、ごあーん」と鳴いた。

「ダル!さっきご飯食べたばかりじゃないの!相変わらず、食いしん坊だなぁ。それに、それはご飯じゃないよ。ゲームだよ。·····ん?そう言えば·····リカルド・キティって、このゲーム作った人なんだよね?」

 ミカは慌てて、ゲームソフトの裏を見ると『リカルド社』の名前を発見し、鼓動が早くなった。

(リカルド・キティに会いに行けば、何かクロードと会うための方法を、教えて貰えるかもしれない·····!それに銀じいちゃんの話も聞いてみたいし、手紙のお礼も言いたい!)

 ミカが『リカルド社』をスマホで検索すると、多くの記事が出てきた。
 しかし、トップに出てきたサイトの記事の題名を見て、ミカは愕然とした。

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