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君の面影
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『リカルド社の社長、リアム・マーティン 57歳の若さで死去』
記事を開くと、ミカが崖から落ちたその日に、リカルド社の社長が亡くなっていたという事が、分かった。
その記事には、リカルド社の社長リアム・マーティンの経歴が記載されていた。
リアムはスウェーデン出身の男性で、大学時代に山で遭難し死にかけてから、急に人が変わったようにゲーム好きになったという。
特に乙女ゲームが大好きで、それをきっかけに日本に留学。そのまま日本のゲーム会社に就職した。
その会社で、ゲームクリエイターとして活躍した後、40代で独立してリカルド社を立ち上げた。
イケメン社長が乙女ゲームを作っているという事で、多くの取材が殺到した宣伝効果もあり、会社は急成長したという。
その後、リアムは数々の名作乙女ゲームを、世に送り出した。
1年前に病気を患った後も、通院しながらずっと最前線で活躍しつづけたという。
亡くなる前の最期の言葉は『次作なんだけど、ちょっと物足りないのよね!全ルート攻略したら、隠しルートが解放されて、悪役令嬢を主人公にプレイ出来るようにするのは、どうかしら?絶対面白いわよ!』だったという。
リアムの言葉を元に、次回作を鋭意製作中で、来年夏頃に発売になるらしい。
記事の最後の方は、次回作の広告となっていた。
別の記事には、リアム・マーティンの写真も載っていた。
イケメンと言われる理由が分かる、中性的な顔立ちの北欧の神話に出てきそうな雰囲気の男性である。かりあげ短髪の髪色は、ピンク色であった。
(そうか·····もう、亡くなってしまっているのか·····。会ってお礼を言いたかったな·····。)
ミカがぼんやりと宙を見つめて考えていると、ダルがゲームのソフトをテシテシと前足で叩いて「みゃーう」と鳴いた。
「それ。ランドスケープ王国のゲームなんだって·····そうだよね。せっかくだから、やってみようか。何かクロードと会うためのヒントがあるかもしれない。」
ミカは早速ゲーム機を箱から出し、ソフトをセットし電源を入れた。
綺麗なオーケストラの曲が流れ、オープニングムービーが、始まった。
懐かしい学園の様子が映し出され、ミカの膝の上に乗ってきたダルが「にゃーぅ!」と驚いた様子で鳴いた。
「あそこの学園そのままだ·····写真みたいに映像が綺麗だね。あ!ソフィアだ!人もそっくり!写真みたい!」
音楽と共に、次々とソフィアの場面が映し出される。
白猫ルルを優しげな表情で撫でるソフィア
図書館で一生懸命、勉強をしているソフィア
バラ園で読書をするソフィア
誰かとダンスを踊るソフィア
(ソフィアには、本当にお世話になったなぁ。きっと私についての未来予知が見えたあと、学園中を走り回って、色々準備してくれたんだろうなぁ。本当に、ありがとうソフィア·····。)
4カットほど映し出されたソフィアの場面を見て、ミカは改めて感謝の気持ちで1杯になった。
次はジェスが映像にでてきた。
太陽の下で明るく笑うジェス
使獣のドーベルマンをわしゃわしゃ撫でるジェス
真剣な表情で剣で戦うジェス
ニヤリと笑って馬に飛び乗るジェス
(ジェスにも、本当にお世話になったなぁ。あの明るい性格、一緒にいて楽しかったなぁ·····どうかソフィアと、末永く幸せになってほしいなぁ。)
ジェスの後は、キースとフィンの映像がそれぞれ流れ、懐かしさと感謝の気持ちが胸に広がり、ミカは卒業アルバムを見ているかのような気持ちでオープニングムービーを眺めていた。
そして、最後にクロードの映像が出てきた。
ミカはクロードの映像が映し出された途端、胸を締め付けられるかのような苦しさを感じた。
(クロードに会いたい·····会いたくてたまらない·····このまま一生会えなかったらどうしよう·····苦しい·····胸が苦しい·····)
映像は次々に映し出される。
冷酷な表情で、何か指示を出しているクロード
エベレスト号に騎乗し、障害を越えるクロード
真剣な眼差しで剣で戦うクロード
使獣の黒鷲ルクに微笑みかけるクロード
映像の最後の方は、画面がぼやけて見えなくなった。鼻がツンとして、ゲーム機の画面に水滴がぽたぽたと落ち、ミカは自分が泣いてることに気づいた。
ミカの様子に気づいたダルが「みゃみゃ!にゃーう!」と鳴いた。そして、猫パンチでゲーム機の電源をoffにしたので、画面が突然真っ暗になった。
ミカは涙がしばらく止まらなくなり、ベッドに突っ伏してひとしきり泣いた。
ダルはベッドの上に飛び乗り、肉球の手でミカの頭をテシテシ撫でた。
しばらく経って、心配そうにミカの周りをウロウロしながら「みゃーみゃー」鳴くダルにミカは話しかけた。
「うぅぅ、ダル·····。うぅ。·····ごめん泣いちゃった。·····ふー。そうだよね。会いたくてたまらなくなってて、悲しくなってしまうなら、ゲームしない方がいいよね。きっと、ゲームの中にヒントなんて、特にないだろうし·····。明日から会社に行くから、その時にヒロコに、このゲームは返す事にするよ。また、いつか落ち着いてやれる日が来たら、自分で買ってプレイするよ」
ミカは泣きはらした目で、ダルに微笑みかけたのだった。
記事を開くと、ミカが崖から落ちたその日に、リカルド社の社長が亡くなっていたという事が、分かった。
その記事には、リカルド社の社長リアム・マーティンの経歴が記載されていた。
リアムはスウェーデン出身の男性で、大学時代に山で遭難し死にかけてから、急に人が変わったようにゲーム好きになったという。
特に乙女ゲームが大好きで、それをきっかけに日本に留学。そのまま日本のゲーム会社に就職した。
その会社で、ゲームクリエイターとして活躍した後、40代で独立してリカルド社を立ち上げた。
イケメン社長が乙女ゲームを作っているという事で、多くの取材が殺到した宣伝効果もあり、会社は急成長したという。
その後、リアムは数々の名作乙女ゲームを、世に送り出した。
1年前に病気を患った後も、通院しながらずっと最前線で活躍しつづけたという。
亡くなる前の最期の言葉は『次作なんだけど、ちょっと物足りないのよね!全ルート攻略したら、隠しルートが解放されて、悪役令嬢を主人公にプレイ出来るようにするのは、どうかしら?絶対面白いわよ!』だったという。
リアムの言葉を元に、次回作を鋭意製作中で、来年夏頃に発売になるらしい。
記事の最後の方は、次回作の広告となっていた。
別の記事には、リアム・マーティンの写真も載っていた。
イケメンと言われる理由が分かる、中性的な顔立ちの北欧の神話に出てきそうな雰囲気の男性である。かりあげ短髪の髪色は、ピンク色であった。
(そうか·····もう、亡くなってしまっているのか·····。会ってお礼を言いたかったな·····。)
ミカがぼんやりと宙を見つめて考えていると、ダルがゲームのソフトをテシテシと前足で叩いて「みゃーう」と鳴いた。
「それ。ランドスケープ王国のゲームなんだって·····そうだよね。せっかくだから、やってみようか。何かクロードと会うためのヒントがあるかもしれない。」
ミカは早速ゲーム機を箱から出し、ソフトをセットし電源を入れた。
綺麗なオーケストラの曲が流れ、オープニングムービーが、始まった。
懐かしい学園の様子が映し出され、ミカの膝の上に乗ってきたダルが「にゃーぅ!」と驚いた様子で鳴いた。
「あそこの学園そのままだ·····写真みたいに映像が綺麗だね。あ!ソフィアだ!人もそっくり!写真みたい!」
音楽と共に、次々とソフィアの場面が映し出される。
白猫ルルを優しげな表情で撫でるソフィア
図書館で一生懸命、勉強をしているソフィア
バラ園で読書をするソフィア
誰かとダンスを踊るソフィア
(ソフィアには、本当にお世話になったなぁ。きっと私についての未来予知が見えたあと、学園中を走り回って、色々準備してくれたんだろうなぁ。本当に、ありがとうソフィア·····。)
4カットほど映し出されたソフィアの場面を見て、ミカは改めて感謝の気持ちで1杯になった。
次はジェスが映像にでてきた。
太陽の下で明るく笑うジェス
使獣のドーベルマンをわしゃわしゃ撫でるジェス
真剣な表情で剣で戦うジェス
ニヤリと笑って馬に飛び乗るジェス
(ジェスにも、本当にお世話になったなぁ。あの明るい性格、一緒にいて楽しかったなぁ·····どうかソフィアと、末永く幸せになってほしいなぁ。)
ジェスの後は、キースとフィンの映像がそれぞれ流れ、懐かしさと感謝の気持ちが胸に広がり、ミカは卒業アルバムを見ているかのような気持ちでオープニングムービーを眺めていた。
そして、最後にクロードの映像が出てきた。
ミカはクロードの映像が映し出された途端、胸を締め付けられるかのような苦しさを感じた。
(クロードに会いたい·····会いたくてたまらない·····このまま一生会えなかったらどうしよう·····苦しい·····胸が苦しい·····)
映像は次々に映し出される。
冷酷な表情で、何か指示を出しているクロード
エベレスト号に騎乗し、障害を越えるクロード
真剣な眼差しで剣で戦うクロード
使獣の黒鷲ルクに微笑みかけるクロード
映像の最後の方は、画面がぼやけて見えなくなった。鼻がツンとして、ゲーム機の画面に水滴がぽたぽたと落ち、ミカは自分が泣いてることに気づいた。
ミカの様子に気づいたダルが「みゃみゃ!にゃーう!」と鳴いた。そして、猫パンチでゲーム機の電源をoffにしたので、画面が突然真っ暗になった。
ミカは涙がしばらく止まらなくなり、ベッドに突っ伏してひとしきり泣いた。
ダルはベッドの上に飛び乗り、肉球の手でミカの頭をテシテシ撫でた。
しばらく経って、心配そうにミカの周りをウロウロしながら「みゃーみゃー」鳴くダルにミカは話しかけた。
「うぅぅ、ダル·····。うぅ。·····ごめん泣いちゃった。·····ふー。そうだよね。会いたくてたまらなくなってて、悲しくなってしまうなら、ゲームしない方がいいよね。きっと、ゲームの中にヒントなんて、特にないだろうし·····。明日から会社に行くから、その時にヒロコに、このゲームは返す事にするよ。また、いつか落ち着いてやれる日が来たら、自分で買ってプレイするよ」
ミカは泣きはらした目で、ダルに微笑みかけたのだった。
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