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3話

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 私とブルースは部屋へと帰ってきた。
 私は疲れていたので、ため息をつきながら椅子へと座った。

「あの、どうかなさいましたか?」

 実家から連れてきたメイドの一人であるリサが紅茶を淹れながら、心配そうな顔で聞いてきた。

「そうね、……あまり心配をかけたくないから言いたくなかったけど、皆には知って貰わないとね」

 私はリサ達にさっきのことを言うか迷った。
 心配をかけたくなかったというのもあるが、変な先入観をもってロイスや屋敷の人間に接してもらいたく無かったからだ。

 しかし、ロイスの浮気はほとんど確定している。
 浮気しているなら、伯爵令嬢のプライドにかけてロイスを問い詰めなければならない。
 そういった時のためにこれからは恐らく皆の助けが必要になる。
 だからここで状況を知ってもらった方が後々便利なはずだ。

「ロイス様が、浮気しているかもしれないわ」

 使用人達が騒がしくなった。
 私と一緒に事の顛末を見てきたブルースは苦虫を噛み潰したような表情になっている。

「えぇっ?!」

「そ、そんな……! もう結婚式の一ヶ月前ですよ?!」

「正確に言うと確定はしていないわ、女性と抱き合っているところをたまたま私達が見ただけよ」

「そんなの浮気したようなものじゃないですか!」

「ロイス殿によると幼馴染とのスキンシップだそうだ。加えてこれはここの文化でもあると」

 ブルースが代わりに答えた。
 悔しそうに拳を握り込んでいる。

「そんなの言い訳に決まっていますよ! なんで何もしないんですか!」

 使用人の一人が、今にも飛び出しそうなくらいに怒った。
 彼の名前はルーク。忠誠心がとても高いが熱くなりやすいところがある。

「落ち着いて、今ここで何をしてもこちらの立場が悪くなるだけだわ。それに釘を刺しておいたからこれから」

「そう、ですね。申し訳ありません……」

「いいのよ。ロイス様もこれからは大人しくしてくれるはずだから……」

 そうであってくれ。と心の中で祈る。
 きっと今日バレたのだから慎重になるはずだし、結婚すれば流石にそんなことらしないだろう。

「お嬢様、当主様に報告するのも手ですが」

「そうねブルース。あまりにも酷いようだったら考えましょう」

 だが、浮気をしないように、というこの願いは叶わなかった。
 ロイスがジェシカだけではなく、使用人などの他の女性をロイスの自室へと連れ込んでいることが分かったからだ。

 私達は必死に浮気の決定的な現場を抑えようとした。
 そうすれば婚約を解消することができるからだ。

 しかし不思議なことに、どれだけ探しても決定的な証拠は見つからなかった。
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