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5話

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「君のところの大干ばつ、大変だったねぇ?
? フォード家からも多少の額を貸してたよね? ま、そういうことだよ」

 そう言うとロイスが私の髪を離した。
 乱暴に離されたので、私は顔を床に強く打った。

「ほら、こいつ連れて早く出てってよ。この部屋にいられると邪魔だし」

 足でトントン、と私の顔をつつく。
 私はブルースに抱きかかえられてロイスの部屋から連れ出される。
 ブルースはとんでもない速さで私を部屋まで運ぶと、扉を蹴って中に入った。

「お嬢様! お嬢様大丈夫ですか!」

 私はベッドに寝かされ、すぐさま治療を受ける。
 ブルースたちの治療のおかげで、一時間後には起き上がれるようになった。

「お嬢様、お加減はいかがですか?」

「……ええ、もう大丈夫よ」

 ズキズキとした頭痛を堪えて私はベッドから
起き上がる。

「お嬢様、これからどうされますか?」

「当然、このままじゃ許さないわ。絶対にやり返すわよ」

 私がそう言うと、使用人の皆はほっと息をついた。
 私が戦意喪失していないか心配だったらしい。

「ロイスがあそこまで優位を保てているのは、借金の件もあるけど、まだ浮気の証拠が掴まれてないからよ。だから、まずはロイスの浮気現場を突き止める……ん?」

 ふと、私は窓の外に誰かがいるのを見つけた。
 それはジェシカだった。
 ジェシカは庭園を歩いている。

(ジェシカ? なんで彼女が庭園を……?)

 私は違和感を感じた。
 なので私はすこしの間考えるが、分からない。
 分からないので、私は直接その場へ向かうことにした。

「ちょっと外に出るわ」

「はい!? いやお嬢様、それはお体に障ります!」

「大丈夫よ、少しだけだから」

 私はベッドから降りて庭園へと向かった。
 庭園につくと、さっき見たジェシカを探す。
 しかし、どこにを見ても見つからなかった。
 フォード家の使用人に聞いても、ジェシカなんてこの家に来ていないと答えられた。

(おかしいわ……。ジェシカの存在を隠そうとしている? と、いうことは今ロイスは浮気をしているということよね……)

 私はすぐさまロイスの部屋へと向かうことにしたが、思いとどまる。
 このままロイスの部屋に向かっても、またジェシカをどこかに隠されるのは目に見えているからだ。

(いつも不自然に消える浮気相手。庭園を歩いていたジェシカ)

 その時、線が繋がった。

「──隠し通路があるのね……!」
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