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8話
「マリル、久しぶりだな──どうしたその怪我は?」
応接室にはすでにお父様が座っていて、入って来た私に挨拶をしたが、顔に怪我をしている私を見て怪訝な表情になった。
お父様は髪をオールバックにして眼鏡をかけている。そして、見た目は二十代かと思える程に若い。
対面に座っているフォード夫妻は青い顔をしてうつむいていた。
先に“お話し”があったのだろう。
「お父様、お久しぶりです。これの傷については後ほど、ロイス様が来たときにお話しさせて頂きますね」
私がそう言うとお父様は全てを悟ったようだった。
「ではこちらもロイス君が来てから全て話そう」
少ししてロイスはやって来た。
服が乱れているのは急いで支度したからだろう。
ロイスは部屋に入るとただならぬ様子のフォード夫妻を見て驚いていた。
「座りたまえ、ロイス君」
何も言わないフォード夫妻に変わって、お父様は顎をそこら辺の椅子に向けて言った。
そのどこか上からの態度にロイスは憤慨する。
「なっ……! 自分の家がどういう状況かわかっているのか! 娘ならず父親までそんな態度を取りやがって! タダじゃ済まさないぞ!」
お父様と私に食ってかかるロイスに対して、フォード夫妻は一気に青ざめた。
「ロ、ロイス! やめなさい!」
「そんなことをしてはだめよ!」
「なっ! 何を言っているんですか! こいつらはフォード家に莫大な借金をしているんですよ! こんなふざけた態度をとられて怒らない訳がないでしょう!」
「借金、か……」
「っ! お前バカにしているのか!」
「やめろ! 本当にやめてくれ!」
お父様は嘲笑交じりにため息をついた。
それを見てロイスは激高し、席から立ち上がるが、フォード夫妻はそれを必死に止めている。
お父様はソファに深く腰掛けると足を組んで冷静にロイスを見上げた。
「借金なら、今さっき消えたところだが?」
「は?」
ロイスはお父様の思ってもみなかった言葉で、一瞬何を言われているのか分からない様子だった。
「それだけではなく、今度はフォード家が借金を背負うことになったよ。莫大な、ね」
「な、何を言って」
「理解できていないようだね。君の家の不正について、と言ったら分かるかな?」
お父様が不敵に笑った。
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