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12話 凄腕メイドの正体
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私の正体が公爵様の婚約者であることがバレた。
「こ、この方がリナリア様!?」
「俺、メイド服を着てたからてっきり……! それに料理も上手かったし!」
「俺も仕事が出来るメイドだと思ってた!」
「俺達とんでもない無礼をはたらいたんじゃ……」
厨房の中は騒然となる。
今までメイドとして接してきた相手が実は貴族で、それも主人の婚約者だったと知ればそんな反応にもなるだろう。
どうしよう、正体がバレてしまった……それも最悪な状態で。
加えて公爵様がすごく私のことを見てくる……。
私は冷や汗をだらだらと流しながら目を逸らす。
「も、申し訳ありませんでした! 婚約者様とは知らず料理を作らせるなど……!」
料理長が勢い良く謝罪してきた。
「あはは、私は大丈夫ですので……」
「大丈夫ではありません」
公爵様が私の言葉をぴしゃりと一刀両断した。
「部屋にいないと思って探しにきたら……何をしているんですか?」
「こ、これはその……」
公爵様はメイド服を着ている私を見て呆れた表情になり、ため息をついた。
私は目を泳がせながらしどろもどろに答える。
「案内した部屋にはおらず屋敷を歩いて探していたら、何やら先ほどからとんでもない新入りのメイドがいる、と聞いてまさかと思い来ましたが……なぜその服を着てメイドの仕事をしているんですか、あなたは?」
「え、えっと……」
私が引き続き目を泳がせていると公爵様はため息をついた。
「あなたは私の婚約者です。ちゃんと自覚を持って下さい」
「はい……」
公爵家当主の婚約者としてメイドの仕事をするな、ということだろう。
正論だったので私は大人しく謝る。
そして今度はアンナの方を見た。
「はぁ……まあいいでしょう。アンナ」
「はっ、はい」
公爵様の声は冷たい声色でアンナの名前を呼ぶ。
途端に厨房の空気が張り詰めた。
「あなたには彼女の側付きを命じたはずですね?」
「は、はい! そうです!」
「では何故彼女はメイド服を着ているんですか。説明しなさい」
「それは……」
「彼女は私の婚約者です。その婚約者に万が一無礼を働いたとなれば我がネイジュ公爵家の品格が疑われます。説明しなさい」
公爵様は私がメイド服を着ていることによほど怒っているのか笑顔のままうっすらと寒気がするような圧を放っていた。
「職務を放棄するならクビに──」
「まま、待ってください!」
「何ですか、リナリア嬢」
「私が道に迷ってしまっただけなんです! ですからアンナさんは悪くありません!」
「ですが貴族がメイドの仕事をさせられるなんて──」
「メイドの仕事をしたことは全く気にしていません! それどころか逆に楽しかったくらいですから!」
私は必死に公爵様にそう言った。
すると公爵様は驚いたような表情になり、その後ため息をついた。
「主人から目を離すことも十分おかしなことですが……まあいいでしょう。ここはリナリア嬢の言葉に面じんて許します。ですが二度はありません。分かりましたね、アンナ」
「はいっ! 肝に銘じます!」
アンナは大仰と言えるほどに公爵様に腰を折り曲げていた。
公爵様はそれを見て頷くと私の元まで近寄ってきた。
「リナリア嬢、今から少しお時間いただいても良いですか?」
「え? はい……?」
何をするのか分からなかったが、私はとりあえず頷いた。
「ではついて来て下さい」
公爵様について行って厨房を出るとクラリスが厨房にやってきたところだった。
クラリスは厨房から出てきた公爵様に驚きつつ、何があったのかを尋ねる。
「公爵様、いかがなさいましたか」
「メイド長、丁度良かった。今から使用人を全員集めて貰えますか」
「は、はい、承知いたしました……」
クラリスは公爵様の命令に困惑しながらも頷いて、屋敷中のメイドを一番広い部屋へと集めた。
私は公爵様の隣に立たされ、屋敷中の使用人の視線を一身に受けていた。
居心地が悪い。
メイド服を着ている私を厨房に居らず、私が誰なのかを知らない使用人は「あれ誰なんだ?」「あんなメイドいたか?」など話し合っていた。
「今日集まってもらったのは他でも無い。私の新しい婚約者の顔を覚えてもらうためだ」
使用人が一斉にザワザワと騒ぎ始める。
「彼女の名前はリナリア・マリヤック。今日この屋敷にやってきた私の新しい婚約者だ」
公爵様がそう言って私を紹介すると、今日私と面識があった人は驚愕していた。
「ま、まさか……」
その中でも特にクラリスは特に驚いて私を見ていた。
今までメイドだと思って連れ回していた私が新しい婚約者だと知ったからだろう。
「ちゃんと伝えていなかった私にも非はある。しかし先ほどアンナがしっかりと見ていなかったせいで彼女がこの家の使用人として働かされていたことが分かった」
より一層使用人たちが騒がしくなる。
そしてアンナへと視線が非難の目線が集中した。
集められた使用人は自分の仕事をしていただけのに急に集められた叱られるというとばっちりを受けたので、アンナを睨みたくなるのも当然だろう。
中にはヒソヒソと話し合っている者もいる。
「っ!!」
注目されたアンナが悔しそうな表情で私を睨んできた。
恐らく失態を声高に言われた恥ずかしさで思わず私を睨んだのだろうが、そもそも私のせいでは無いので睨まれるとちょっと困る。
「これ以上この公爵家の品位を落とすような行動は認めない。全員、以後気をつけるように」
「「「ハイっ!」」」
使用人全員が声を揃えて返事をした。
そして私のことが伝え終わると使用人たちはまた元の仕事へと戻って行った。
「リナリア様」
クラリスが私もところまでやって来た。
クラリスは申し訳なさそうな表情で床に膝をつき私に謝罪してきた。
「申し訳ありません。メイド長という立場にありながらリナリア様に気が付かず、それどころかメイドの仕事までさせてしまうなんて……! 一生の不覚です……!」
「い、いえ! ちゃんと誤解を解くことができなかった私にも非はありますから!」
「これから誠心誠意お仕えさせていただきます……! アンナ!」
クラリスがアンナの名前を呼んだ。
「あなたもリナリア様に謝罪なさい!」
「……はい」
アンナはいかにも申し訳なさそうな表情で私の元までやって来て私に謝った。
「申し訳ありませんでした。リナリア様……」
「わ、私は気にしてませんから!」
なんだかいたたまれない空気になったので何とか和ませてみようと手を振って誤魔化す。
そして一応その場は終わったのだが、
それを見ていた公爵様がため息をついた。
「年が近く優秀な人材だと思って側付きにしましたが、真っ先に問題を起こすとは……アンナは側付きから外すことにしましょう」
「っ!? ハイっ!」
私の側付きから外す、と言われた瞬間アンナは嬉しそうに目を輝かせた。
実は私の側付きであることに不満を持っていたらしい。
「代わりにクラリスを側付きにして……アンナは雑用係に戻ってもらいます。アンナは罰として当分の間は昇進は無しということで」
「ええ、それが妥当でしょうね」
「え……?」
公爵様とクラリスは頷くが、一方でアンナは唖然としていた。
「あ、あのっ! 待って下さい!」
私はその表情を見て咄嗟に会話に割って入った。
「私はこのままアンナさんを側付きにしてもらうことを希望します!」
「は?」
「リナリア様……?」
公爵様もクラリスも私の言動を不思議がっていた。
「私がアンナさんの機嫌を損ねてしまったのが悪いんです。それにメイドの仕事をしていてアンナさんの仕事ぶりを見ていましたが、彼女はとても優秀でした!」
「ですが……」
「とにかく! 私は本当に気にしていません! ですからこのままアンナさんを側付きにしてもらうことを希望します!」
公爵様の目をしっかりと見据える。
そして数秒見つめあった後、公爵様が折れた。
「本人がそう言うなら……」
「しかしリナリア様、大丈夫なのですか?」
「はい! 大丈夫です!」
クラリスも心配そうにしていたが私は押し通す。
「では、このままアンナに側付きを任せます。よろしいですか?」
「はいっ!」
私が勢いよく頷くと公爵様もクラリスも一応は納得してくれたようだった。
「それでは私は部屋に戻ります。クラリスも仕事に戻ってください」
「はい」
公爵様とクラリスはそれぞれ元いた場所へと戻っていく。
そして最終的に広間は私とアンナだけになった。
「ふう……」
こんなふうに物申すのは初めてだったので無事に私の我儘が聞き入れられたことに安心した。
「庇っていただきありがとうございます! 私、リナリア様の寛大なお心に感激いたしました!」
「え、えっと……はい」
アンナはキラキラと跪くとキラキラと目を輝かせ私を見てくる。
私はアンナの変わりように少し困惑する。
「でも、どうして私なんかを庇って下さったのですか……?」
「だって……アンナさんはお金が必要なんですよね?」
「っ!? 何故それを……!」
アンナが驚愕に目を見開く。
図星だったようだ。
私がアンナの状況を察することが出来たのはアンナからメイド服を借りたからだ。
アンナのメイド服のサイズは私にピッタリで、最初はアンナのメイドとして凄いからだと私は思っていた。
しかしアンナは「自分のメイド服を貸しただけ」だと言った。
つまり一日一食が食べることが出来ずに痩せ細った私と同じ体型だということだ。
自ずとアンナが置かれている状況は察せられる。
「それはメイド服が──」
「メイド服?」
しかし私はアンナの状況を察することができた理由を話すことが出来ないことに気が付き、目を泳がせた。
「あ! いえ、ええと……そうだ! でもお気持ちは分かりますし、私は応援してますよ」
私はアンナにを励まそうと笑いかけるとアンナは目を見開き──俯いた。
「ア、アンナさん……?」
俯く前のアンナが一瞬私を睨んでいたように見えたのだが、次にアンナが顔を上げた時には、アンナは笑顔を浮かべていた。
「寛大なご処置、感謝いたしますリナリア様。これから誠心誠意お仕えさせて頂きます」
アンナは恭しく頭を下げる。
「はい! よろしくお願いします!」
そしてアンナは引き続き私の側付きになった。
「こ、この方がリナリア様!?」
「俺、メイド服を着てたからてっきり……! それに料理も上手かったし!」
「俺も仕事が出来るメイドだと思ってた!」
「俺達とんでもない無礼をはたらいたんじゃ……」
厨房の中は騒然となる。
今までメイドとして接してきた相手が実は貴族で、それも主人の婚約者だったと知ればそんな反応にもなるだろう。
どうしよう、正体がバレてしまった……それも最悪な状態で。
加えて公爵様がすごく私のことを見てくる……。
私は冷や汗をだらだらと流しながら目を逸らす。
「も、申し訳ありませんでした! 婚約者様とは知らず料理を作らせるなど……!」
料理長が勢い良く謝罪してきた。
「あはは、私は大丈夫ですので……」
「大丈夫ではありません」
公爵様が私の言葉をぴしゃりと一刀両断した。
「部屋にいないと思って探しにきたら……何をしているんですか?」
「こ、これはその……」
公爵様はメイド服を着ている私を見て呆れた表情になり、ため息をついた。
私は目を泳がせながらしどろもどろに答える。
「案内した部屋にはおらず屋敷を歩いて探していたら、何やら先ほどからとんでもない新入りのメイドがいる、と聞いてまさかと思い来ましたが……なぜその服を着てメイドの仕事をしているんですか、あなたは?」
「え、えっと……」
私が引き続き目を泳がせていると公爵様はため息をついた。
「あなたは私の婚約者です。ちゃんと自覚を持って下さい」
「はい……」
公爵家当主の婚約者としてメイドの仕事をするな、ということだろう。
正論だったので私は大人しく謝る。
そして今度はアンナの方を見た。
「はぁ……まあいいでしょう。アンナ」
「はっ、はい」
公爵様の声は冷たい声色でアンナの名前を呼ぶ。
途端に厨房の空気が張り詰めた。
「あなたには彼女の側付きを命じたはずですね?」
「は、はい! そうです!」
「では何故彼女はメイド服を着ているんですか。説明しなさい」
「それは……」
「彼女は私の婚約者です。その婚約者に万が一無礼を働いたとなれば我がネイジュ公爵家の品格が疑われます。説明しなさい」
公爵様は私がメイド服を着ていることによほど怒っているのか笑顔のままうっすらと寒気がするような圧を放っていた。
「職務を放棄するならクビに──」
「まま、待ってください!」
「何ですか、リナリア嬢」
「私が道に迷ってしまっただけなんです! ですからアンナさんは悪くありません!」
「ですが貴族がメイドの仕事をさせられるなんて──」
「メイドの仕事をしたことは全く気にしていません! それどころか逆に楽しかったくらいですから!」
私は必死に公爵様にそう言った。
すると公爵様は驚いたような表情になり、その後ため息をついた。
「主人から目を離すことも十分おかしなことですが……まあいいでしょう。ここはリナリア嬢の言葉に面じんて許します。ですが二度はありません。分かりましたね、アンナ」
「はいっ! 肝に銘じます!」
アンナは大仰と言えるほどに公爵様に腰を折り曲げていた。
公爵様はそれを見て頷くと私の元まで近寄ってきた。
「リナリア嬢、今から少しお時間いただいても良いですか?」
「え? はい……?」
何をするのか分からなかったが、私はとりあえず頷いた。
「ではついて来て下さい」
公爵様について行って厨房を出るとクラリスが厨房にやってきたところだった。
クラリスは厨房から出てきた公爵様に驚きつつ、何があったのかを尋ねる。
「公爵様、いかがなさいましたか」
「メイド長、丁度良かった。今から使用人を全員集めて貰えますか」
「は、はい、承知いたしました……」
クラリスは公爵様の命令に困惑しながらも頷いて、屋敷中のメイドを一番広い部屋へと集めた。
私は公爵様の隣に立たされ、屋敷中の使用人の視線を一身に受けていた。
居心地が悪い。
メイド服を着ている私を厨房に居らず、私が誰なのかを知らない使用人は「あれ誰なんだ?」「あんなメイドいたか?」など話し合っていた。
「今日集まってもらったのは他でも無い。私の新しい婚約者の顔を覚えてもらうためだ」
使用人が一斉にザワザワと騒ぎ始める。
「彼女の名前はリナリア・マリヤック。今日この屋敷にやってきた私の新しい婚約者だ」
公爵様がそう言って私を紹介すると、今日私と面識があった人は驚愕していた。
「ま、まさか……」
その中でも特にクラリスは特に驚いて私を見ていた。
今までメイドだと思って連れ回していた私が新しい婚約者だと知ったからだろう。
「ちゃんと伝えていなかった私にも非はある。しかし先ほどアンナがしっかりと見ていなかったせいで彼女がこの家の使用人として働かされていたことが分かった」
より一層使用人たちが騒がしくなる。
そしてアンナへと視線が非難の目線が集中した。
集められた使用人は自分の仕事をしていただけのに急に集められた叱られるというとばっちりを受けたので、アンナを睨みたくなるのも当然だろう。
中にはヒソヒソと話し合っている者もいる。
「っ!!」
注目されたアンナが悔しそうな表情で私を睨んできた。
恐らく失態を声高に言われた恥ずかしさで思わず私を睨んだのだろうが、そもそも私のせいでは無いので睨まれるとちょっと困る。
「これ以上この公爵家の品位を落とすような行動は認めない。全員、以後気をつけるように」
「「「ハイっ!」」」
使用人全員が声を揃えて返事をした。
そして私のことが伝え終わると使用人たちはまた元の仕事へと戻って行った。
「リナリア様」
クラリスが私もところまでやって来た。
クラリスは申し訳なさそうな表情で床に膝をつき私に謝罪してきた。
「申し訳ありません。メイド長という立場にありながらリナリア様に気が付かず、それどころかメイドの仕事までさせてしまうなんて……! 一生の不覚です……!」
「い、いえ! ちゃんと誤解を解くことができなかった私にも非はありますから!」
「これから誠心誠意お仕えさせていただきます……! アンナ!」
クラリスがアンナの名前を呼んだ。
「あなたもリナリア様に謝罪なさい!」
「……はい」
アンナはいかにも申し訳なさそうな表情で私の元までやって来て私に謝った。
「申し訳ありませんでした。リナリア様……」
「わ、私は気にしてませんから!」
なんだかいたたまれない空気になったので何とか和ませてみようと手を振って誤魔化す。
そして一応その場は終わったのだが、
それを見ていた公爵様がため息をついた。
「年が近く優秀な人材だと思って側付きにしましたが、真っ先に問題を起こすとは……アンナは側付きから外すことにしましょう」
「っ!? ハイっ!」
私の側付きから外す、と言われた瞬間アンナは嬉しそうに目を輝かせた。
実は私の側付きであることに不満を持っていたらしい。
「代わりにクラリスを側付きにして……アンナは雑用係に戻ってもらいます。アンナは罰として当分の間は昇進は無しということで」
「ええ、それが妥当でしょうね」
「え……?」
公爵様とクラリスは頷くが、一方でアンナは唖然としていた。
「あ、あのっ! 待って下さい!」
私はその表情を見て咄嗟に会話に割って入った。
「私はこのままアンナさんを側付きにしてもらうことを希望します!」
「は?」
「リナリア様……?」
公爵様もクラリスも私の言動を不思議がっていた。
「私がアンナさんの機嫌を損ねてしまったのが悪いんです。それにメイドの仕事をしていてアンナさんの仕事ぶりを見ていましたが、彼女はとても優秀でした!」
「ですが……」
「とにかく! 私は本当に気にしていません! ですからこのままアンナさんを側付きにしてもらうことを希望します!」
公爵様の目をしっかりと見据える。
そして数秒見つめあった後、公爵様が折れた。
「本人がそう言うなら……」
「しかしリナリア様、大丈夫なのですか?」
「はい! 大丈夫です!」
クラリスも心配そうにしていたが私は押し通す。
「では、このままアンナに側付きを任せます。よろしいですか?」
「はいっ!」
私が勢いよく頷くと公爵様もクラリスも一応は納得してくれたようだった。
「それでは私は部屋に戻ります。クラリスも仕事に戻ってください」
「はい」
公爵様とクラリスはそれぞれ元いた場所へと戻っていく。
そして最終的に広間は私とアンナだけになった。
「ふう……」
こんなふうに物申すのは初めてだったので無事に私の我儘が聞き入れられたことに安心した。
「庇っていただきありがとうございます! 私、リナリア様の寛大なお心に感激いたしました!」
「え、えっと……はい」
アンナはキラキラと跪くとキラキラと目を輝かせ私を見てくる。
私はアンナの変わりように少し困惑する。
「でも、どうして私なんかを庇って下さったのですか……?」
「だって……アンナさんはお金が必要なんですよね?」
「っ!? 何故それを……!」
アンナが驚愕に目を見開く。
図星だったようだ。
私がアンナの状況を察することが出来たのはアンナからメイド服を借りたからだ。
アンナのメイド服のサイズは私にピッタリで、最初はアンナのメイドとして凄いからだと私は思っていた。
しかしアンナは「自分のメイド服を貸しただけ」だと言った。
つまり一日一食が食べることが出来ずに痩せ細った私と同じ体型だということだ。
自ずとアンナが置かれている状況は察せられる。
「それはメイド服が──」
「メイド服?」
しかし私はアンナの状況を察することができた理由を話すことが出来ないことに気が付き、目を泳がせた。
「あ! いえ、ええと……そうだ! でもお気持ちは分かりますし、私は応援してますよ」
私はアンナにを励まそうと笑いかけるとアンナは目を見開き──俯いた。
「ア、アンナさん……?」
俯く前のアンナが一瞬私を睨んでいたように見えたのだが、次にアンナが顔を上げた時には、アンナは笑顔を浮かべていた。
「寛大なご処置、感謝いたしますリナリア様。これから誠心誠意お仕えさせて頂きます」
アンナは恭しく頭を下げる。
「はい! よろしくお願いします!」
そしてアンナは引き続き私の側付きになった。
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