婚約破棄したのはそちらなのに、慰謝料が払えないってどういうことですか?

水垣するめ

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1話

「エマ、君といるのは飽きた。婚約破棄させてもらう」

 私の婚約者、ラルフ・ネルソンはいきなり婚約破棄を突きつけてきた。
 しかし私はそろそろ婚約破棄してくることは分かっていたのであまり驚くこともなくそれを受け止めた。

「はぁ、そうですか」
「俺は新しい恋人を見つけたんだ」

 ラルフは聞いてもいないのに私に婚約破棄の訳を言ってくる。
 しかも別にいらない「君といるのは飽きた」という暴言まで添えて。
 この男の最低な部分の一つだ。

「つまり、分かるだろう。婚約してはいられないんだよ」

 ラルフは自分に酔っているかのように額に手を当て天を仰ぐ。
 私はまたもや生返事をした。

「はぁ、そうですか」

 それで? というニュアンスを言外に込める。

「婚約破棄の手続きをしてくれないか?」
「え? それは私に婚約破棄の書類を作れということですか」
「まあ、噛み砕いて言えば」

 私は心底呆れた。
 自分から言い出したくせに婚約破棄の手続きを押し付けようとするなんて本当に酷い男だ。

「嫌です。自分で婚約破棄を切り出したんですから、自分が婚約破棄の手続きをすすめるのが道理てしょう」
「チッ……!」

 私が突っぱねるとラルフはわざとらしく舌打ちをする。
 本当に態度が悪い。
 自分が悪いとすら思っていないのだろう。

「話はそれだけですか? ではごきげんよう」

 私がその場を去ろうとしたその時、ラルフに呼び止められた。
 まだ何かあるのだろうか。

「ああ、ちょっと待ってくれ」
「は? 何ですか」

 ラルフは言い出しづらそうにもじもじとしている。

「はっきりしてください。時間の無駄ですよ」
「お、お金をまた貸してほしいんだ。金貨十枚ほど……」
「……」

 私は心のそこから軽蔑した。
 どこの誰がたった今婚約破棄した相手からお金を借りるのだろう。
 そして私はその使いみちを知っているので余計に軽蔑した。

「……いいですけど、返すアテはあるんですよね?今までの分も貯まっていますけど」
「ああ、もちろんだ。だから早く貸してくれ!」

 なんて品のない男なんだろう。

「わかりました。明日にでも持ってきますから」
「なるべく早く頼むぞ」

 そんな胸糞悪いラルフの催促を聞きながら私はその場を後にした。
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