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第一章
エルファンス兄様の決意
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「違うの……そうじゃないの……!」
言い訳をしながら、混乱しきった私の瞳から、堪らず涙が溢れてポロポロとこぼれだす。
決してエルファンス兄様が嫌なわけじゃない。
「ただ……どうしても、今はまだ駄目なの……っ…!」
それ以上は言葉が喉につまってうまく言えなかった。
エルファンス兄様は固まったように動きを止め、泣いている私を数瞬見つめたあと、すっと指先で頬に伝う涙をすくい取ってきた。
そして激しい衝動をおさめるように、ふーっと大きく呼吸を吐き出すと、
「どうやら…俺は……お前の真珠の涙に弱いらしい……」
苦笑混じりに呟く。
「お兄様…っ…」
しばし部屋には嵐の後のような静けさが満ちた。
「それでいつだ?」
「え?」
「今が駄目なら、いつならいいんだ?」
躊躇してから、私は正直に答えた。
「……私が19歳になったら……」
「19?」
エルファンス兄様は少し絶句して、私の顔を呆れたように凝視する。
「なんだ……19歳っていうのは……? 何年後の話しをしてるんだ!
いくららなんでも待たせすぎだろう!」
たしかにそれは言えている!
そこを突かれると、私も非常に辛い。
お兄様はさらに苛立った口調で続けた。
「大体そんな気長に待っている暇があるか? お前をどこにもやらないには、今このタイミングで抱く以外ないだろう?」
「え?」
それって……。
私は予想外の言葉に驚く。
「エルファンス兄様がこんな事をするのは、ひょっとして私をどこにもやりたくないから?」
「他にどんな理由がある?」
「私と一緒にいたいから? だからなの?」
しつこいとは思いつつ重ねて訊く。
「ああ……そうだ」
観念したようにお兄様が認めた。
「このままじゃ、お前は神殿行きか悪くて皇太子と婚約だ。既成事実さえ作ってしまえば、父上もお前を他の男の元へやるのを諦めるだろう、ずっと俺の手元にお前を置いておくには、もうこれしか方法がない……」
私は感動で胸がいっぱいになってしまう。
エルファンス兄様は私の事がどうなっても良くなったわけじゃなかったんだ!
見捨てられるどころか、その逆だった。
ずっと私と一緒にいたいと思ってくれていたんだ。
前世も今生も合わせて、こんな嬉しい言葉を貰ったのは初めてだった。
かつてない喜びに胸がジーンと熱くなり、先ほどまでとは違う、感激の涙が私の両頬を伝う。
「フィーネ……?」
そんな私を気遣うように、エルファンス兄様が優しく肩を抱き、顔を覗き込んでくる。
「私も……私だって、お兄様の傍にいたい……!」
顔を見上げて泣きながら、私は必死に声を絞り出した。
言い訳をしながら、混乱しきった私の瞳から、堪らず涙が溢れてポロポロとこぼれだす。
決してエルファンス兄様が嫌なわけじゃない。
「ただ……どうしても、今はまだ駄目なの……っ…!」
それ以上は言葉が喉につまってうまく言えなかった。
エルファンス兄様は固まったように動きを止め、泣いている私を数瞬見つめたあと、すっと指先で頬に伝う涙をすくい取ってきた。
そして激しい衝動をおさめるように、ふーっと大きく呼吸を吐き出すと、
「どうやら…俺は……お前の真珠の涙に弱いらしい……」
苦笑混じりに呟く。
「お兄様…っ…」
しばし部屋には嵐の後のような静けさが満ちた。
「それでいつだ?」
「え?」
「今が駄目なら、いつならいいんだ?」
躊躇してから、私は正直に答えた。
「……私が19歳になったら……」
「19?」
エルファンス兄様は少し絶句して、私の顔を呆れたように凝視する。
「なんだ……19歳っていうのは……? 何年後の話しをしてるんだ!
いくららなんでも待たせすぎだろう!」
たしかにそれは言えている!
そこを突かれると、私も非常に辛い。
お兄様はさらに苛立った口調で続けた。
「大体そんな気長に待っている暇があるか? お前をどこにもやらないには、今このタイミングで抱く以外ないだろう?」
「え?」
それって……。
私は予想外の言葉に驚く。
「エルファンス兄様がこんな事をするのは、ひょっとして私をどこにもやりたくないから?」
「他にどんな理由がある?」
「私と一緒にいたいから? だからなの?」
しつこいとは思いつつ重ねて訊く。
「ああ……そうだ」
観念したようにお兄様が認めた。
「このままじゃ、お前は神殿行きか悪くて皇太子と婚約だ。既成事実さえ作ってしまえば、父上もお前を他の男の元へやるのを諦めるだろう、ずっと俺の手元にお前を置いておくには、もうこれしか方法がない……」
私は感動で胸がいっぱいになってしまう。
エルファンス兄様は私の事がどうなっても良くなったわけじゃなかったんだ!
見捨てられるどころか、その逆だった。
ずっと私と一緒にいたいと思ってくれていたんだ。
前世も今生も合わせて、こんな嬉しい言葉を貰ったのは初めてだった。
かつてない喜びに胸がジーンと熱くなり、先ほどまでとは違う、感激の涙が私の両頬を伝う。
「フィーネ……?」
そんな私を気遣うように、エルファンス兄様が優しく肩を抱き、顔を覗き込んでくる。
「私も……私だって、お兄様の傍にいたい……!」
顔を見上げて泣きながら、私は必死に声を絞り出した。
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