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第二章
留守番の日
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「今日は外に出かける用事ができたので、一人で留守番しながら自習していて下さい」
神殿生活三年目。私が14歳になって二ヶ月ぐらい経ったある日。
朝食後、セイさんが唐突に告げてきた。
「えー」
私は反射的に不満の声をあげる。
二年の月日は馴れ合ってしまうほどに私達の距離感を縮めていた。
「すぐ帰ってくる?」
寂しさのあまり尋ねる私に、セイさんが優しく答える。
「なるべく早く帰ってきます」
「何時ぐらいに?」
「わかりませんけど、早く帰ってきます」
「早くってどれぐらい?」
「話が戻ってませんか」
「だって、セイさんがいないとつまらないんだもん。
それってセイさん以外の人が行くのは駄目な用事なの?」
ついわがままが口をつく。
それぐらいセイさんの不在が嫌だった。
「……大切な人から個人的に呼び出されたので……」
「大切な人って誰?」
訊きながらじわじわと浮かんてくる胸が焦げるような感覚。
セイさんに大切な人がいるという事実が凄く不愉快だ。
質問には答えず、セイさんは笑顔で唇を尖らせている私の頭を撫でてきた。
「……すみません。時間がないので、もう行きますね……お土産を買ってきますから」
「お土産なんかいらないから、早く帰ってきて」
「はい、はい、分かりました。
では行って来ます」
最後にそう挨拶して部屋から出ていく時のセイさんの顔が、やけに嬉しそうにほころんでいたのが私には口惜しかった。
パタン。
無情にも閉じられた扉を、置いていかれた飼い猫か犬のように、しょんぼりと見つめる。
(どれぐらい大切な人なの? 私よりも?)
この二年間、一日の大半を共に過ごすうちに、いつしかセイさんは私にとって「空気」のような、傍にいて当然の存在になっていた。
そう、あまりにも彼と一緒にい過ぎて、私は一人での時間の過ごし方を忘れてしまったのだ。
こんな風に誰かがいないだけで泣きたいぐらい寂しくなる心理状態はとてもあやうい。
ここに来たばかりの早く聖女になってエルファンス兄様と面会! と、はりきっていた頃の自分が懐かしいぐらい。
現在の私は精神的にセイさんに依存しきっていた。
それは聖女になるのをためらうほどに……。
だって聖女として独り立ちしたら、セイさんとは一緒にいられなくなるかもしれない……。
少なくとも教育係としての彼の役目は終わってしまう。
セイさんがいなくなる!
想像するだけでも胸にぽっかりと穴が空くような気がする。
それぐらい彼は今や私にとってはかけがいのない存在。
だから今も頭の中はセイさんの事でいっぱいだった。
おかげで自習にまったく身が入らない。
早々に勉強を諦めた私は教本を放り出し、ベッドにゴロっと横になって天井を見ながら思いを巡らせる。
セイさんの大切な人ってどんな人だろう。
男の人?
女の人?
なんて答えの出ない問いをぐるぐると考えていると、時間の経過がずいぶん遅く感じられる。
(セイさん早く帰ってきて……)
とにかくそれだけを願っていた――その時だった――
不意にコンコンと扉をノックする音が響く。
神殿生活三年目。私が14歳になって二ヶ月ぐらい経ったある日。
朝食後、セイさんが唐突に告げてきた。
「えー」
私は反射的に不満の声をあげる。
二年の月日は馴れ合ってしまうほどに私達の距離感を縮めていた。
「すぐ帰ってくる?」
寂しさのあまり尋ねる私に、セイさんが優しく答える。
「なるべく早く帰ってきます」
「何時ぐらいに?」
「わかりませんけど、早く帰ってきます」
「早くってどれぐらい?」
「話が戻ってませんか」
「だって、セイさんがいないとつまらないんだもん。
それってセイさん以外の人が行くのは駄目な用事なの?」
ついわがままが口をつく。
それぐらいセイさんの不在が嫌だった。
「……大切な人から個人的に呼び出されたので……」
「大切な人って誰?」
訊きながらじわじわと浮かんてくる胸が焦げるような感覚。
セイさんに大切な人がいるという事実が凄く不愉快だ。
質問には答えず、セイさんは笑顔で唇を尖らせている私の頭を撫でてきた。
「……すみません。時間がないので、もう行きますね……お土産を買ってきますから」
「お土産なんかいらないから、早く帰ってきて」
「はい、はい、分かりました。
では行って来ます」
最後にそう挨拶して部屋から出ていく時のセイさんの顔が、やけに嬉しそうにほころんでいたのが私には口惜しかった。
パタン。
無情にも閉じられた扉を、置いていかれた飼い猫か犬のように、しょんぼりと見つめる。
(どれぐらい大切な人なの? 私よりも?)
この二年間、一日の大半を共に過ごすうちに、いつしかセイさんは私にとって「空気」のような、傍にいて当然の存在になっていた。
そう、あまりにも彼と一緒にい過ぎて、私は一人での時間の過ごし方を忘れてしまったのだ。
こんな風に誰かがいないだけで泣きたいぐらい寂しくなる心理状態はとてもあやうい。
ここに来たばかりの早く聖女になってエルファンス兄様と面会! と、はりきっていた頃の自分が懐かしいぐらい。
現在の私は精神的にセイさんに依存しきっていた。
それは聖女になるのをためらうほどに……。
だって聖女として独り立ちしたら、セイさんとは一緒にいられなくなるかもしれない……。
少なくとも教育係としての彼の役目は終わってしまう。
セイさんがいなくなる!
想像するだけでも胸にぽっかりと穴が空くような気がする。
それぐらい彼は今や私にとってはかけがいのない存在。
だから今も頭の中はセイさんの事でいっぱいだった。
おかげで自習にまったく身が入らない。
早々に勉強を諦めた私は教本を放り出し、ベッドにゴロっと横になって天井を見ながら思いを巡らせる。
セイさんの大切な人ってどんな人だろう。
男の人?
女の人?
なんて答えの出ない問いをぐるぐると考えていると、時間の経過がずいぶん遅く感じられる。
(セイさん早く帰ってきて……)
とにかくそれだけを願っていた――その時だった――
不意にコンコンと扉をノックする音が響く。
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