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第三話「ゾンビゲームを姫プレイするだなんて邪道過ぎる!」

Chapter4、子猫とパニックになる姫とオタサーメンバー

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 振り返ってみると、ちょこんっと保が着ているシャツの裾をつまみ、上目づかいに見上げる姫の姿がそこにあった。

「なに?」
「ここじゃなくてっ、二人きりで……」

 姫がこそっと小さい声で言う。

「悪い、面倒くさい」

 やる気のない保は素っ気なく告げ、わたしより先に客室へ入っていく。
 未練がましく部屋の中をのぞき込んだ姫が、そこであっと声をあげる。

「猫ちゃんっ!」

 猫?

 つられて室内をみると、開きっぱなしにしていた窓の枠に子猫がちょこんと乗っていた。

「いや~んっ、かわいい~~っ」

 子猫を可愛がる可愛いわたしという演出なのか、姫は大げさな甲高い声をあげて窓辺へと駆け寄る。
 と、抱き上げられた子猫が、がぶっと姫の喉元に噛みついた。

「ぎゃあああああああっ!!」

 出会ってから初めて太い声を発した姫が、子猫をぶん投げる。
 床にたたきつけられた姿をよく見ると、腹が破れて瞳が濁っているゾンビ猫だった。

「なによっ、このっ、このっ!!」

 ついに本性を現した姫が、子猫をがしっ、がしっと靴のかかとで踏みつぶす。
 すぐに騒ぎを聞きつけてロン毛男とバンダナ男が部屋へとやってきた。
 
「どうしたの? 姫?」
「大丈夫っ?」

 はっとしたように二人をみた姫は首を押さえて訴える。

「晶さんがっ!」

 って、わたしがいったい何したってわけ?
 唖然としていると、姫の言葉を勝手に解釈した男達が怒り出した。

「姫がかわいくて悔しいからって危害を加えるなんて最低だな」
「醜い嫉妬も大概にしろよ!」 

 ええ、わたしがいつ嫉妬を?
 
「おいっ、勝手に勘違いすんなよ」

 わたしの代わりに説明しかけた保の言葉を姫の「うわぁああああああああんっ!!」という号泣がさえぎる。
 さらに混乱に追い打ちをかけるように、その時、見回りをしていたはずの眼鏡が慌てて部屋に駈け込んできた。

「大変だ。ホテルにゾンビの大軍が迫ってきている!」

「えっ?」

 一瞬で泣くのを止めた姫が、がばっと窓ガラスに張りついて金切り声をあげる。

「ちょっと、なんで外にっ、こんなにゾンビがいるのよおおおおおおっ!?」

 わたしも保と窓辺行って確認した。
 ゾンビ猫は先触れだったらしく、木立の間だからぞくぞくと歩いてくるゾンビが見える。 
 
「どうして急にっ、ずっと平和だったのにぃいい!」
「姫っ、どうしようっ」
「凄いゾンビの数だ……」

 すっかり取り乱している姫とその取り巻き達とは対照的に、ゾンビ慣れしている保は至極冷静な態度でわたしに耳打ちしてきた。
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