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第五章「苦しみを終わらせる者」
6、決意の光
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「デリアンを倒す……?」
とてもセドリックの口から出たとは思えない強気な台詞だった。
「ああ……! 君の苦しみの元を絶ち切りたい」
豹変ぶりにとまどいながらも私は正直な感想を言う。
「止してよ……セドリック……あなたには無理だわ……」
しかし、セドリックは一歩も引かず、燃えるような瞳を向けてきた。
「いいや、無理じゃない!
牢獄にいる間レイヴンから借りた書物の中に書いてあった。
魂を燃やす魔法剣の力は、使い手の『想い』の強さに比例すると。
僕の決意と、君への愛は、決してデリアンにも誰にも負けやしない!
誰であろうと立ち塞がる敵は打ち倒し、王位を取り戻した暁には君を妻に娶って幸せにする!」
宣言するように言って、セドリックは腰から『聖王の剣』を抜き放った。
――瞬間、強烈な純白の光が起こり、一斉に放射される――
「うっ……!?」
瞳だけではなく、なぜか心臓まで焼くようなまばゆい光に呻きながら、本能的に悟る。
この真白き光は、私の守護剣が纏う黒炎を浄化する性質のものだと。
思わず掴まれていた手を振りほどき、胸を押えて涙目で懇願する。
「……お願い、セド、眩しいから、その剣をしまって……!」
慌てたようにセドリックが謝る。
「ごめん。シア、大丈夫?」
私はといえばろくな返事もできず、肩で呼吸しながら近くの寝台に腰を下ろす。
てっきり今のセドリックは、私のように心の中が恨みの感情でいっぱいだと思ってたのに。
まぎれもなくその瞳と剣に輝くのは「正義」と「愛」の光。
一番心が近かったはずの幼馴染にして親友は、みごと負の感情を乗りこえ、至純の光を抱く遠い存在になったのだ。
ならば寂しくてもその光を濁らせないよう、心の距離を置かねばならない。
素早く思考した私は、光が引いたのを確認してから立ち上がり、セドリックの顔を睨みつけた。
「勘違いしないでセドリック、あなたの想いなんかよりずっと、私のデリアンへの憎しみは深いわ。
直接この手でデリアンに借りを返さない限り、死んでも恨みが晴れないと断言できるほどにね!
それと、王妃なんて重責を負うぐらいなら、私は気楽なカエインの愛人になる道を選ぶわ」
最後の部分は本心ではないが、セドリックにも叶わぬ夢は見せたくない。
私の完全な拒絶の言葉に、セドリックは蒼ざめ息を飲む。
「……そんなっ……シア……!?」
言うべきことを言い終えたあとは、もはや私の慰めなど必要でないぐらい強くなった彼から離れるため、急いで廊下へ飛び出す。
そうして火傷したような胸を抱え、あてがわれた部室へ戻ると、なぜか上機嫌な笑顔を浮かべるカエインが中で待っていた。
「遅かったな、シア」
すでにこの男につきまとわれるのに慣れきっていた私は、無言でベッドまで行って腰を下ろす。
「……ちょうど、いいわ。少し聞きたいことがあったの……」
「何なりと質問してくれ」
カエインも私の横に来て、長い脚を組んでベットに座る。
「魔法剣の強さについてよ」
デリアンの剣もそうだが、今見たセドリックの剣からも私の剣に匹敵するほどの力を感じた。
「……ああ、そういえば諸説伝わっているので仕方がないとはいえ、先ほどレスターが間違った知識を披露していたな」
「間違いなの?」
「まあな、たしかに魔法剣の性能には優劣があるが、狂戦士の剣は神と名がつく剣と同じ、かつて魔法の塔にいた俺の祖先が打った最上級の剣の一つだ。ついでに言うと、セドリックが持つ『聖王の剣』含める、王と名がついた剣もな」
「だったら、なんでレスター王子と戦ったとき、デリアンの剣は力を出し切れなかったの?」
私の疑問にカエインは淀みなく答える。
「それはまだ守護剣が覚醒していなかったからだ。最上位の魔法剣はただ使いこなせるだけでは真の力は開放されない。それぞれ覚醒条件があるのだ」
「覚醒条件?」
「そうだ、まず前提として、神と名のつく剣は、それぞれが冠する神の血を受け継ぐ者しか使い手に選ばない。
神剣が特別強いとされているのも、単に扱う者の霊力が純粋な人より高いから。ようは魂の資質の問題で、神の加護や剣の性能差は関係ない」
すると一族に伝えられている、バーン家が戦女神の末裔だという話は真実だったということか。
「その上で本題に入るが、剣を覚醒させるために必要な条件は二つある。一つ目は剣の持ち主として相応しい能力と人格を備えていること。そして二つ目が守護剣の問いに答えることだ」
私はすぐに思い当たる。
「……それって、剣に書いてあった文句のこと?」
「ああ、そうだ。あの文言が書かれているのは、覚醒することができる魔法剣のみ。お前の戦女神の剣なら『戦う意志と覚悟』を問うものだったはずだ」
それが守護剣の柄に最初あった『勇気ある者はこの剣を取れ』という言葉の意味か……。
守護剣に刻まれている文字は使い手本人のみにしか見えないが、セドリックもその問いに答えたからこそ覚醒させることができたのだろう。
そこまで理解したところで、また新たな疑問が複数起こる。
「じゃあ、レスター王子の剣が私の剣より弱かったのも、覚醒していないから?」
「いや、軍神の剣は覚醒しているし、レスターもお前が思っている以上に強い。
ただし戦いの双子神は兄が妹を溺愛していた関係で、軍神の剣は戦女神の剣と戦うときのみ力が加減される特性がある」
意外な真実に私は驚く。
「じゃあ、レスター王子は私が相手だと弱いってこと?」
「そうだ。さらにつけ足すと、剣の性質は持ち主の精神状態にも影響を及ぼす。軍神は妹神に#__懸想__けそう__#していたので、レスター王子も自然にお前に惹かれてしまうのだ」
むしろレスター王子には嫌われていた気がしたが、それが事実なら物凄く迷惑な話だ。
「同様にお前がデリアンに惹かれるのも神話にある通り、戦女神が狂戦士の剣の元となった英雄に惚れていたせいだ」
すると前世だけではなく二重の因縁にとらわれていた? ――ということは――
「まさか、戦女神の剣は狂戦士の剣にたいして弱いってこと?」
とてもセドリックの口から出たとは思えない強気な台詞だった。
「ああ……! 君の苦しみの元を絶ち切りたい」
豹変ぶりにとまどいながらも私は正直な感想を言う。
「止してよ……セドリック……あなたには無理だわ……」
しかし、セドリックは一歩も引かず、燃えるような瞳を向けてきた。
「いいや、無理じゃない!
牢獄にいる間レイヴンから借りた書物の中に書いてあった。
魂を燃やす魔法剣の力は、使い手の『想い』の強さに比例すると。
僕の決意と、君への愛は、決してデリアンにも誰にも負けやしない!
誰であろうと立ち塞がる敵は打ち倒し、王位を取り戻した暁には君を妻に娶って幸せにする!」
宣言するように言って、セドリックは腰から『聖王の剣』を抜き放った。
――瞬間、強烈な純白の光が起こり、一斉に放射される――
「うっ……!?」
瞳だけではなく、なぜか心臓まで焼くようなまばゆい光に呻きながら、本能的に悟る。
この真白き光は、私の守護剣が纏う黒炎を浄化する性質のものだと。
思わず掴まれていた手を振りほどき、胸を押えて涙目で懇願する。
「……お願い、セド、眩しいから、その剣をしまって……!」
慌てたようにセドリックが謝る。
「ごめん。シア、大丈夫?」
私はといえばろくな返事もできず、肩で呼吸しながら近くの寝台に腰を下ろす。
てっきり今のセドリックは、私のように心の中が恨みの感情でいっぱいだと思ってたのに。
まぎれもなくその瞳と剣に輝くのは「正義」と「愛」の光。
一番心が近かったはずの幼馴染にして親友は、みごと負の感情を乗りこえ、至純の光を抱く遠い存在になったのだ。
ならば寂しくてもその光を濁らせないよう、心の距離を置かねばならない。
素早く思考した私は、光が引いたのを確認してから立ち上がり、セドリックの顔を睨みつけた。
「勘違いしないでセドリック、あなたの想いなんかよりずっと、私のデリアンへの憎しみは深いわ。
直接この手でデリアンに借りを返さない限り、死んでも恨みが晴れないと断言できるほどにね!
それと、王妃なんて重責を負うぐらいなら、私は気楽なカエインの愛人になる道を選ぶわ」
最後の部分は本心ではないが、セドリックにも叶わぬ夢は見せたくない。
私の完全な拒絶の言葉に、セドリックは蒼ざめ息を飲む。
「……そんなっ……シア……!?」
言うべきことを言い終えたあとは、もはや私の慰めなど必要でないぐらい強くなった彼から離れるため、急いで廊下へ飛び出す。
そうして火傷したような胸を抱え、あてがわれた部室へ戻ると、なぜか上機嫌な笑顔を浮かべるカエインが中で待っていた。
「遅かったな、シア」
すでにこの男につきまとわれるのに慣れきっていた私は、無言でベッドまで行って腰を下ろす。
「……ちょうど、いいわ。少し聞きたいことがあったの……」
「何なりと質問してくれ」
カエインも私の横に来て、長い脚を組んでベットに座る。
「魔法剣の強さについてよ」
デリアンの剣もそうだが、今見たセドリックの剣からも私の剣に匹敵するほどの力を感じた。
「……ああ、そういえば諸説伝わっているので仕方がないとはいえ、先ほどレスターが間違った知識を披露していたな」
「間違いなの?」
「まあな、たしかに魔法剣の性能には優劣があるが、狂戦士の剣は神と名がつく剣と同じ、かつて魔法の塔にいた俺の祖先が打った最上級の剣の一つだ。ついでに言うと、セドリックが持つ『聖王の剣』含める、王と名がついた剣もな」
「だったら、なんでレスター王子と戦ったとき、デリアンの剣は力を出し切れなかったの?」
私の疑問にカエインは淀みなく答える。
「それはまだ守護剣が覚醒していなかったからだ。最上位の魔法剣はただ使いこなせるだけでは真の力は開放されない。それぞれ覚醒条件があるのだ」
「覚醒条件?」
「そうだ、まず前提として、神と名のつく剣は、それぞれが冠する神の血を受け継ぐ者しか使い手に選ばない。
神剣が特別強いとされているのも、単に扱う者の霊力が純粋な人より高いから。ようは魂の資質の問題で、神の加護や剣の性能差は関係ない」
すると一族に伝えられている、バーン家が戦女神の末裔だという話は真実だったということか。
「その上で本題に入るが、剣を覚醒させるために必要な条件は二つある。一つ目は剣の持ち主として相応しい能力と人格を備えていること。そして二つ目が守護剣の問いに答えることだ」
私はすぐに思い当たる。
「……それって、剣に書いてあった文句のこと?」
「ああ、そうだ。あの文言が書かれているのは、覚醒することができる魔法剣のみ。お前の戦女神の剣なら『戦う意志と覚悟』を問うものだったはずだ」
それが守護剣の柄に最初あった『勇気ある者はこの剣を取れ』という言葉の意味か……。
守護剣に刻まれている文字は使い手本人のみにしか見えないが、セドリックもその問いに答えたからこそ覚醒させることができたのだろう。
そこまで理解したところで、また新たな疑問が複数起こる。
「じゃあ、レスター王子の剣が私の剣より弱かったのも、覚醒していないから?」
「いや、軍神の剣は覚醒しているし、レスターもお前が思っている以上に強い。
ただし戦いの双子神は兄が妹を溺愛していた関係で、軍神の剣は戦女神の剣と戦うときのみ力が加減される特性がある」
意外な真実に私は驚く。
「じゃあ、レスター王子は私が相手だと弱いってこと?」
「そうだ。さらにつけ足すと、剣の性質は持ち主の精神状態にも影響を及ぼす。軍神は妹神に#__懸想__けそう__#していたので、レスター王子も自然にお前に惹かれてしまうのだ」
むしろレスター王子には嫌われていた気がしたが、それが事実なら物凄く迷惑な話だ。
「同様にお前がデリアンに惹かれるのも神話にある通り、戦女神が狂戦士の剣の元となった英雄に惚れていたせいだ」
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