HAPPY BIRTHDAY

ゆうぜん

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はっぴーばーすでー

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これは俺が中学3年生の時に体験した出来事だ。
短い春休みが終わり、桜が少し散り始めた頃、その不思議な出来事は起こった。その日、俺は日直のため早く家を出た。花弁が散り、まだ寒さが残る風が吹く。その中を自転車で走り抜ける。
「ハァ…ハァ…」
荒い息を吐き、自転車を降りる。
自転車置場に自転車を置き、かばんを背負う。
朝練をする遠い声を聞きながら、俺は教室へと向かった。
日直だからってこんなに早く学校に来なくても……
実際、日直の仕事は地味なもので、黒板を消したり、今日の時間割を書いたりと、やることはさほど多くない。だが、なんでこんな朝早くに来ているかというと、日直の仕事で”クラスの棚に置いてある植木鉢に水をあげる”というものがあり、これが一番面倒くさい。
枯らすと水やりをしていないのがバレ、こっぴどく怒られる。そして新しい花の種がかれる。先生いわく、1年間同じものをやり遂げると達成感が湧き、クラスの団結力が上がるかららしい。
どうだか……
ジョウロに水をみ、小さな植木鉢に水を撒く。まだ芽が少し出ているだけでこれだけではなんの花が咲くのか分からない。一体あとどれくらいの人が水やりをすればこの花は咲くのか……
1ヶ月?いや、これだけ小さな植木鉢なら、1ヶ月もしないうちに咲くだろうか。ま、その時はどんな花かだけ見てみよう。
 俺はジョウロを置き、やっと窓際の一番後ろの自分の席に着く。時刻はもうすぐ8時になろうとしていた。
そこでふと気づく。
俺の席から2つ前の席。その席の机の上に、お菓子が置いてあった。
俺が教室に入ったときにはあったか……?そもそもなんでお菓子が……
興味本位で近づくと、そのお菓子には小さな文字で”Happy Birthday”と書かれていた。
日直の俺より先に置いてあったということは、朝練とかで早く来ていたやつが置いたのか?
俺はそう考えた時点で、お菓子への興味はもう、ないに等しかった。
日直の仕事も終わったし、寝るか。
机に突っ伏し、2度目の睡眠を取る。


「………ぜ!…………なんでだ!?………」
騒がしい声で目が覚める。
顔を上げると、クラスメイトがお菓子を持ちながら友達と喋っていた。
「誰が俺の机にお菓子なんか置いたんだ?お前か?」
「違うよ、俺さっき来たばっかだし」
「んじゃあ、誰が置いたんだ?俺の誕生日知ってるやつなんてお前とあとは先生くらいしか……」
「先生が置いたんじゃないか?」
「まさかー!!あのドジな先生がー?いや、でも可能性はあるな……来たら聞いてみるか」
「だなー」
俺はそこまで聞いて、再び寝てしまった。最近、よく寝ることが多い。なぜだろう……昨日は早く寝た…のに……

目が覚めると、授業の真っ最中だった。
どうやら1時間も寝てしまったらしく、これが2限目だった。
どうして起こしてくれない!?普通叩き起こすだろ……!!
文句を押し殺し、急いでノートを開く。幸いなことに2限目は始まったばかりで、すぐに内容に追いつけた。
そういえば、さっきのお菓子はどうなったんだろうか……先生が用意したのか……それともまた別の誰かか…
放課後、聞いてみよう。



「あの……!」
「ん?」
振り向き、こちらを向く。
「さっきのお菓子…誰が置いたのか分かったか?」
「んぃや、先生に聞いてみたんだが知らねーってさ。一体、誰がおいたんだろーなー、あのお菓子。まあ、素直に受け取ればいいのかもしれねーが、相手が誰だか分かんねーからなー……」
「た、確かに……」
「こんなに凝ったことをする奴だ。しかも未だに姿を現さない。もしかしたら……」
「え?」
「俺のことが好きな女子が置いたのかもな!!」
「……は?」
「それだったら納得がいくぜ!!なかなか姿を現さないのも、単に恥ずかしいからとか!こんなに探してるのに見つからないってことは、俺に見つかるのを避けてるってことだよな!?なーんだー!」
高らかに笑っているが、そんな可能性低いにも程がある……
「よ、良かったな、見つかって…」
苦笑いで言う。
「なぁ!!いつ来るかなー!?あ、それともお菓子の中に手紙が入ってたりして!!もー、どこまで恥ずかしがり屋なんだよー!」
一人で舞い上がりすぎだろ…その想像力を違うところに活かせないのか、こいつは……
「あー…俺、用事あるから、またな」
「おう!分かったら言うぜー!」
全力で手を振るあいつに、俺は疲れた顔で笑い返した。
あいつを好きとかありえねぇだろ……好きになったやつは絶対後悔するぜ……
さて……帰るか……
今日は色々あって疲れたし。
俺は自転車に乗り、一気にぎ出す。


次の日。
俺はまた日直のため早く家を出た。
いつものように自転車を置き、まだ慣れていない2階へと上がる。
教室の扉を開き、自分の席にかばんを置く。
そうして一連の動作を終え、日直の仕事に取り掛かろうとした、その時。


また…………
机の上にお菓子が置いてあった。
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