1 / 6
はっぴーばーすでー
しおりを挟む
これは俺が中学3年生の時に体験した出来事だ。
短い春休みが終わり、桜が少し散り始めた頃、その不思議な出来事は起こった。その日、俺は日直のため早く家を出た。花弁が散り、まだ寒さが残る風が吹く。その中を自転車で走り抜ける。
「ハァ…ハァ…」
荒い息を吐き、自転車を降りる。
自転車置場に自転車を置き、鞄を背負う。
朝練をする遠い声を聞きながら、俺は教室へと向かった。
日直だからってこんなに早く学校に来なくても……
実際、日直の仕事は地味なもので、黒板を消したり、今日の時間割を書いたりと、やることはさほど多くない。だが、なんでこんな朝早くに来ているかというと、日直の仕事で”クラスの棚に置いてある植木鉢に水をあげる”というものがあり、これが一番面倒くさい。
枯らすと水やりをしていないのがバレ、こっぴどく怒られる。そして新しい花の種が蒔かれる。先生曰く、1年間同じものをやり遂げると達成感が湧き、クラスの団結力が上がるかららしい。
どうだか……
ジョウロに水を汲み、小さな植木鉢に水を撒く。まだ芽が少し出ているだけでこれだけではなんの花が咲くのか分からない。一体あとどれくらいの人が水やりをすればこの花は咲くのか……
1ヶ月?いや、これだけ小さな植木鉢なら、1ヶ月もしないうちに咲くだろうか。ま、その時はどんな花かだけ見てみよう。
俺はジョウロを置き、やっと窓際の一番後ろの自分の席に着く。時刻はもうすぐ8時になろうとしていた。
そこでふと気づく。
俺の席から2つ前の席。その席の机の上に、お菓子が置いてあった。
俺が教室に入ったときにはあったか……?そもそもなんでお菓子が……
興味本位で近づくと、そのお菓子には小さな文字で”Happy Birthday”と書かれていた。
日直の俺より先に置いてあったということは、朝練とかで早く来ていたやつが置いたのか?
俺はそう考えた時点で、お菓子への興味はもう、ないに等しかった。
日直の仕事も終わったし、寝るか。
机に突っ伏し、2度目の睡眠を取る。
「………ぜ!…………なんでだ!?………」
騒がしい声で目が覚める。
顔を上げると、クラスメイトがお菓子を持ちながら友達と喋っていた。
「誰が俺の机にお菓子なんか置いたんだ?お前か?」
「違うよ、俺さっき来たばっかだし」
「んじゃあ、誰が置いたんだ?俺の誕生日知ってるやつなんてお前とあとは先生くらいしか……」
「先生が置いたんじゃないか?」
「まさかー!!あのドジな先生がー?いや、でも可能性はあるな……来たら聞いてみるか」
「だなー」
俺はそこまで聞いて、再び寝てしまった。最近、よく寝ることが多い。なぜだろう……昨日は早く寝た…のに……
目が覚めると、授業の真っ最中だった。
どうやら1時間も寝てしまったらしく、これが2限目だった。
どうして起こしてくれない!?普通叩き起こすだろ……!!
文句を押し殺し、急いでノートを開く。幸いなことに2限目は始まったばかりで、すぐに内容に追いつけた。
そういえば、さっきのお菓子はどうなったんだろうか……先生が用意したのか……それともまた別の誰かか…
放課後、聞いてみよう。
「あの……!」
「ん?」
振り向き、こちらを向く。
「さっきのお菓子…誰が置いたのか分かったか?」
「んぃや、先生に聞いてみたんだが知らねーってさ。一体、誰がおいたんだろーなー、あのお菓子。まあ、素直に受け取ればいいのかもしれねーが、相手が誰だか分かんねーからなー……」
「た、確かに……」
「こんなに凝ったことをする奴だ。しかも未だに姿を現さない。もしかしたら……」
「え?」
「俺のことが好きな女子が置いたのかもな!!」
「……は?」
「それだったら納得がいくぜ!!なかなか姿を現さないのも、単に恥ずかしいからとか!こんなに探してるのに見つからないってことは、俺に見つかるのを避けてるってことだよな!?なーんだー!」
高らかに笑っているが、そんな可能性低いにも程がある……
「よ、良かったな、見つかって…」
苦笑いで言う。
「なぁ!!いつ来るかなー!?あ、それともお菓子の中に手紙が入ってたりして!!もー、どこまで恥ずかしがり屋なんだよー!」
一人で舞い上がりすぎだろ…その想像力を違うところに活かせないのか、こいつは……
「あー…俺、用事あるから、またな」
「おう!分かったら言うぜー!」
全力で手を振るあいつに、俺は疲れた顔で笑い返した。
あいつを好きとかありえねぇだろ……好きになったやつは絶対後悔するぜ……
さて……帰るか……
今日は色々あって疲れたし。
俺は自転車に乗り、一気に漕ぎ出す。
次の日。
俺はまた日直のため早く家を出た。
いつものように自転車を置き、まだ慣れていない2階へと上がる。
教室の扉を開き、自分の席に鞄を置く。
そうして一連の動作を終え、日直の仕事に取り掛かろうとした、その時。
また…………
机の上にお菓子が置いてあった。
短い春休みが終わり、桜が少し散り始めた頃、その不思議な出来事は起こった。その日、俺は日直のため早く家を出た。花弁が散り、まだ寒さが残る風が吹く。その中を自転車で走り抜ける。
「ハァ…ハァ…」
荒い息を吐き、自転車を降りる。
自転車置場に自転車を置き、鞄を背負う。
朝練をする遠い声を聞きながら、俺は教室へと向かった。
日直だからってこんなに早く学校に来なくても……
実際、日直の仕事は地味なもので、黒板を消したり、今日の時間割を書いたりと、やることはさほど多くない。だが、なんでこんな朝早くに来ているかというと、日直の仕事で”クラスの棚に置いてある植木鉢に水をあげる”というものがあり、これが一番面倒くさい。
枯らすと水やりをしていないのがバレ、こっぴどく怒られる。そして新しい花の種が蒔かれる。先生曰く、1年間同じものをやり遂げると達成感が湧き、クラスの団結力が上がるかららしい。
どうだか……
ジョウロに水を汲み、小さな植木鉢に水を撒く。まだ芽が少し出ているだけでこれだけではなんの花が咲くのか分からない。一体あとどれくらいの人が水やりをすればこの花は咲くのか……
1ヶ月?いや、これだけ小さな植木鉢なら、1ヶ月もしないうちに咲くだろうか。ま、その時はどんな花かだけ見てみよう。
俺はジョウロを置き、やっと窓際の一番後ろの自分の席に着く。時刻はもうすぐ8時になろうとしていた。
そこでふと気づく。
俺の席から2つ前の席。その席の机の上に、お菓子が置いてあった。
俺が教室に入ったときにはあったか……?そもそもなんでお菓子が……
興味本位で近づくと、そのお菓子には小さな文字で”Happy Birthday”と書かれていた。
日直の俺より先に置いてあったということは、朝練とかで早く来ていたやつが置いたのか?
俺はそう考えた時点で、お菓子への興味はもう、ないに等しかった。
日直の仕事も終わったし、寝るか。
机に突っ伏し、2度目の睡眠を取る。
「………ぜ!…………なんでだ!?………」
騒がしい声で目が覚める。
顔を上げると、クラスメイトがお菓子を持ちながら友達と喋っていた。
「誰が俺の机にお菓子なんか置いたんだ?お前か?」
「違うよ、俺さっき来たばっかだし」
「んじゃあ、誰が置いたんだ?俺の誕生日知ってるやつなんてお前とあとは先生くらいしか……」
「先生が置いたんじゃないか?」
「まさかー!!あのドジな先生がー?いや、でも可能性はあるな……来たら聞いてみるか」
「だなー」
俺はそこまで聞いて、再び寝てしまった。最近、よく寝ることが多い。なぜだろう……昨日は早く寝た…のに……
目が覚めると、授業の真っ最中だった。
どうやら1時間も寝てしまったらしく、これが2限目だった。
どうして起こしてくれない!?普通叩き起こすだろ……!!
文句を押し殺し、急いでノートを開く。幸いなことに2限目は始まったばかりで、すぐに内容に追いつけた。
そういえば、さっきのお菓子はどうなったんだろうか……先生が用意したのか……それともまた別の誰かか…
放課後、聞いてみよう。
「あの……!」
「ん?」
振り向き、こちらを向く。
「さっきのお菓子…誰が置いたのか分かったか?」
「んぃや、先生に聞いてみたんだが知らねーってさ。一体、誰がおいたんだろーなー、あのお菓子。まあ、素直に受け取ればいいのかもしれねーが、相手が誰だか分かんねーからなー……」
「た、確かに……」
「こんなに凝ったことをする奴だ。しかも未だに姿を現さない。もしかしたら……」
「え?」
「俺のことが好きな女子が置いたのかもな!!」
「……は?」
「それだったら納得がいくぜ!!なかなか姿を現さないのも、単に恥ずかしいからとか!こんなに探してるのに見つからないってことは、俺に見つかるのを避けてるってことだよな!?なーんだー!」
高らかに笑っているが、そんな可能性低いにも程がある……
「よ、良かったな、見つかって…」
苦笑いで言う。
「なぁ!!いつ来るかなー!?あ、それともお菓子の中に手紙が入ってたりして!!もー、どこまで恥ずかしがり屋なんだよー!」
一人で舞い上がりすぎだろ…その想像力を違うところに活かせないのか、こいつは……
「あー…俺、用事あるから、またな」
「おう!分かったら言うぜー!」
全力で手を振るあいつに、俺は疲れた顔で笑い返した。
あいつを好きとかありえねぇだろ……好きになったやつは絶対後悔するぜ……
さて……帰るか……
今日は色々あって疲れたし。
俺は自転車に乗り、一気に漕ぎ出す。
次の日。
俺はまた日直のため早く家を出た。
いつものように自転車を置き、まだ慣れていない2階へと上がる。
教室の扉を開き、自分の席に鞄を置く。
そうして一連の動作を終え、日直の仕事に取り掛かろうとした、その時。
また…………
机の上にお菓子が置いてあった。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる