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第二章 森を守れ
第13話-1 少しでもあがけ
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その後、俺たちは、救援にきた部隊に助けられながら安全地帯へ撤退した。俺もエイミーもマインド・ブラストでボロボロになっていたし、ヘリエンの弾薬やエナジーもゼロになっていたから、その日はもう戦えず、休養しているしかなかった。
戦いそのものは痛み分けの結果で終わった。どちらかが勝ったわけではなく、かといって、敗者が出たわけでもない。お互いに戦力を消耗しただけだ。
数時間に及ぶ戦闘が終了した後、両軍はそれぞれの基地や拠点に引き上げ、とりあえずは相手の出方をうかがう状態になった。数時間という長さは、大戦前の旧時代に比べりゃ短時間なのかもしれん。だが、資源不足の今の時代じゃ、長丁場の戦闘なんてやってられねぇよ。弾もエナジーも大切に、だ。
ヘリエンだって大事に使わないとな。簡単に壊れてもらっちゃ困る。なにせ、ボトム・ロックの十倍の生産力や技術力がある都市でやっと年に数機が作れる、そういう話だからな。こっちも敵も無理はできねぇ。全力で戦えるのは勝ちを確信した時だけだ、それまでは元手要らずの召喚生物を使わねぇと。
翌日、午前。俺たち第二部隊は基地の一室に集まっている。メイユー隊長が話を切り出す。
「あんた達、調子はどうだい?」
俺、「特に問題はないッス」。エイミー、「大丈夫」。ダーカー、「異常ありません」。隊長は全員の返事を聞き終わり、言う。
「それならいいけどね。いつも言ってるけど、無理はすんじゃないよ。生き残ることが第一なんだから」
全員、「はい」と返答する。それを聞いた隊長の顔が少し柔らかいものになる。彼女は話を続ける。
「よし。それじゃあ次の話をするけどね。まず状況だけど、相変わらずだ。あまりよくないね」
ダーカーが質問する。
「森の部隊は盛り返せていないんですか?」
「残念だけど、その通り。敵の進撃を食い止めるので精いっぱいだよ」
「ヘリエンやサマナーの部隊は?」
「どっちも冴えない感じさ。戦闘不能はいないけど、ヘリエン部隊は弾やエナジーを使い過ぎてるし、サマナーたちは疲れ切ってる。このまま戦いが長引いたらヤバいよ」
「作戦会議では何か打開策は出なかったんですか?」
「そりゃ出るには出たけどね。どれもダメダメさ」
「そうですか……」
話の流れに乗って俺も質問する。
「隊長。ムノグチ市長の交渉はどうなったんですか?」
「そんなの言うまでもないだろ。失敗だ失敗! 軍を引き上げてくれ、なんて言ったところで、勝ち戦をしてる相手がOKするわけないだろう。あと少しで勝てるチェスをしてる奴が降参するか? そういうことだよ」
隊長の声はうんざりした調子になっている。こりゃ、体だけでなく心も疲れ切ってるな。あまり興奮させないほうがよさそうだ。
「あ~……、それで、隊長。今後の予定は?」
「お前らは待機だ、待機。いつでも出撃できるようにして、基地の中でおとなしくしてろ」
「了解です」
「たぶん今日は出撃ないだろうけど、油断せずに気合い入れとけよ。それじゃ、あたしは少し休んでくる。ふぁ……眠ぃ……」
小さなあくびをしながら退室していく隊長。あっ、あの人、上着を椅子に置き忘れてる……。後で届けるか、しょうがねぇなぁ。
ドアがバタンと小さな音を立てて閉まる。部屋に残された俺たちは顔を見合わせる。俺はつぶやくように言う。
「どうするよ……」
俺に視線を向けてくるダーカー。
「どうするよって、俺に言われてもな」
「まぁな……」
エイミーの視線も俺に向けられる。
「クロベー。いいアイデア出して」
「アイデアも何も、待機するしかないだろ」
「違う。そっちじゃない。戦いのアイデア」
「はぁ……?」
「このまま戦う、でも、ケニスに勝てない。勝利のアイデアが必要」
「俺にはそんなもん出せねーよ」
「頑張る。クロベーならできる。私、信じてる」
「んなこと言ったってね……」
俺はエイミーの顔を見る。うぅむ、まるで犬が飼い主を見る時のような目で俺を見ている……。どうしたもんかな。
「お互いの兵力は五分五分、ヘリエン乗りやサマナーの錬度も似たようなもんだ。これじゃあ敵陣を突破なんてまず無理。そして森の戦いは負け続き……どうしろってんだ」
「どうしても勝たなくちゃダメ。負けたら……街が壊される。物が奪われる……」
エイミーの顔が厳しいものになる。ダーカーが声をかける。
「お前、住んでた街がノーリアにやられたこと、思い出してるのか?」
「うん……」
「安心しろ、俺たちはそう簡単にやられない」
「けど、このままじゃ負けちゃう」
「少し落ち着いたほうがいい。いずれ司令官たちが何か考えだす、それに期待して、今は休むんだ」
「でも……!」
彼女の声も、小さな体も、雨に濡れた子犬のように震えている。はぁ、こういうの見捨てられねぇんだよな、俺。やれやれ……。
「わかった、エイミー。何か考えてみる」
「ほんとう?」
「あぁ」
「……信じてる」
「へいへい。みんなのため、お嬢様のため、頑張らせていただきます」
ダーカーが俺に話しかけてくる。
「安請け合いはよくないぞ」
「そりゃそうだ。俺だってそう思う。けどなぁ、いずれにしろ、ケニスに負けたら俺たちは終わりなんだ。だったら気合い入れて考えて、勝てる方法を探すしかねーよ」
「難しいと思うが……」
「たとえ難しくたって、やるだけやってみるのが俺だ」
「仮に名案を考えたとして、どうやって司令官に採用してもらうんだ?」
「まず隊長に話して、そこから司令官に伝えてもらえばいい。あーもう、うるせぇな! とにかく俺はやるぜ!」
そうだ、やるだけやってみろ、クロベー。どうせこのままじゃジリ貧、なら、少しでもあがいて勝ちへ向かうんだ。一寸の虫にも五分の魂、一人の下っ端にも五分の知恵だ。必死になれば何かアイデアが浮かぶはず。
俺は椅子から立ち上がり、部屋の前にあるホワイト・ボードの前へ行き、黒ペンを手に持つ。まずは情報をぜんぶ書き出して整理だ。
時間はあるんだ、よく考えろよ、クロベー……。
戦いそのものは痛み分けの結果で終わった。どちらかが勝ったわけではなく、かといって、敗者が出たわけでもない。お互いに戦力を消耗しただけだ。
数時間に及ぶ戦闘が終了した後、両軍はそれぞれの基地や拠点に引き上げ、とりあえずは相手の出方をうかがう状態になった。数時間という長さは、大戦前の旧時代に比べりゃ短時間なのかもしれん。だが、資源不足の今の時代じゃ、長丁場の戦闘なんてやってられねぇよ。弾もエナジーも大切に、だ。
ヘリエンだって大事に使わないとな。簡単に壊れてもらっちゃ困る。なにせ、ボトム・ロックの十倍の生産力や技術力がある都市でやっと年に数機が作れる、そういう話だからな。こっちも敵も無理はできねぇ。全力で戦えるのは勝ちを確信した時だけだ、それまでは元手要らずの召喚生物を使わねぇと。
翌日、午前。俺たち第二部隊は基地の一室に集まっている。メイユー隊長が話を切り出す。
「あんた達、調子はどうだい?」
俺、「特に問題はないッス」。エイミー、「大丈夫」。ダーカー、「異常ありません」。隊長は全員の返事を聞き終わり、言う。
「それならいいけどね。いつも言ってるけど、無理はすんじゃないよ。生き残ることが第一なんだから」
全員、「はい」と返答する。それを聞いた隊長の顔が少し柔らかいものになる。彼女は話を続ける。
「よし。それじゃあ次の話をするけどね。まず状況だけど、相変わらずだ。あまりよくないね」
ダーカーが質問する。
「森の部隊は盛り返せていないんですか?」
「残念だけど、その通り。敵の進撃を食い止めるので精いっぱいだよ」
「ヘリエンやサマナーの部隊は?」
「どっちも冴えない感じさ。戦闘不能はいないけど、ヘリエン部隊は弾やエナジーを使い過ぎてるし、サマナーたちは疲れ切ってる。このまま戦いが長引いたらヤバいよ」
「作戦会議では何か打開策は出なかったんですか?」
「そりゃ出るには出たけどね。どれもダメダメさ」
「そうですか……」
話の流れに乗って俺も質問する。
「隊長。ムノグチ市長の交渉はどうなったんですか?」
「そんなの言うまでもないだろ。失敗だ失敗! 軍を引き上げてくれ、なんて言ったところで、勝ち戦をしてる相手がOKするわけないだろう。あと少しで勝てるチェスをしてる奴が降参するか? そういうことだよ」
隊長の声はうんざりした調子になっている。こりゃ、体だけでなく心も疲れ切ってるな。あまり興奮させないほうがよさそうだ。
「あ~……、それで、隊長。今後の予定は?」
「お前らは待機だ、待機。いつでも出撃できるようにして、基地の中でおとなしくしてろ」
「了解です」
「たぶん今日は出撃ないだろうけど、油断せずに気合い入れとけよ。それじゃ、あたしは少し休んでくる。ふぁ……眠ぃ……」
小さなあくびをしながら退室していく隊長。あっ、あの人、上着を椅子に置き忘れてる……。後で届けるか、しょうがねぇなぁ。
ドアがバタンと小さな音を立てて閉まる。部屋に残された俺たちは顔を見合わせる。俺はつぶやくように言う。
「どうするよ……」
俺に視線を向けてくるダーカー。
「どうするよって、俺に言われてもな」
「まぁな……」
エイミーの視線も俺に向けられる。
「クロベー。いいアイデア出して」
「アイデアも何も、待機するしかないだろ」
「違う。そっちじゃない。戦いのアイデア」
「はぁ……?」
「このまま戦う、でも、ケニスに勝てない。勝利のアイデアが必要」
「俺にはそんなもん出せねーよ」
「頑張る。クロベーならできる。私、信じてる」
「んなこと言ったってね……」
俺はエイミーの顔を見る。うぅむ、まるで犬が飼い主を見る時のような目で俺を見ている……。どうしたもんかな。
「お互いの兵力は五分五分、ヘリエン乗りやサマナーの錬度も似たようなもんだ。これじゃあ敵陣を突破なんてまず無理。そして森の戦いは負け続き……どうしろってんだ」
「どうしても勝たなくちゃダメ。負けたら……街が壊される。物が奪われる……」
エイミーの顔が厳しいものになる。ダーカーが声をかける。
「お前、住んでた街がノーリアにやられたこと、思い出してるのか?」
「うん……」
「安心しろ、俺たちはそう簡単にやられない」
「けど、このままじゃ負けちゃう」
「少し落ち着いたほうがいい。いずれ司令官たちが何か考えだす、それに期待して、今は休むんだ」
「でも……!」
彼女の声も、小さな体も、雨に濡れた子犬のように震えている。はぁ、こういうの見捨てられねぇんだよな、俺。やれやれ……。
「わかった、エイミー。何か考えてみる」
「ほんとう?」
「あぁ」
「……信じてる」
「へいへい。みんなのため、お嬢様のため、頑張らせていただきます」
ダーカーが俺に話しかけてくる。
「安請け合いはよくないぞ」
「そりゃそうだ。俺だってそう思う。けどなぁ、いずれにしろ、ケニスに負けたら俺たちは終わりなんだ。だったら気合い入れて考えて、勝てる方法を探すしかねーよ」
「難しいと思うが……」
「たとえ難しくたって、やるだけやってみるのが俺だ」
「仮に名案を考えたとして、どうやって司令官に採用してもらうんだ?」
「まず隊長に話して、そこから司令官に伝えてもらえばいい。あーもう、うるせぇな! とにかく俺はやるぜ!」
そうだ、やるだけやってみろ、クロベー。どうせこのままじゃジリ貧、なら、少しでもあがいて勝ちへ向かうんだ。一寸の虫にも五分の魂、一人の下っ端にも五分の知恵だ。必死になれば何かアイデアが浮かぶはず。
俺は椅子から立ち上がり、部屋の前にあるホワイト・ボードの前へ行き、黒ペンを手に持つ。まずは情報をぜんぶ書き出して整理だ。
時間はあるんだ、よく考えろよ、クロベー……。
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