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第三章 冷酷非情の世界に生きる
第23話-2 さらなる犠牲者
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翌日。午前、俺がベッドでぼんやりしていると、誰かが部屋に入って来るが聞こえた。その人は足音を立てながら俺の病床がある場所へと近づき、カーテンを開けて中に入ってくる。それはメイユー隊長だ。
「よう、こんちは」
「こんちは、隊長」
「どうだ、調子は?」
「いやもう全然、痛くて痛くて……。痛み止めがないと眠れないくらいですよ」
「そうか、そいつぁなかなかキツいな。メシはちゃんと食えてるか?」
「腹を撃たれたんですよ? 食事なんて無理ですよ、点滴の栄養で生きてます」
「メシが食えねぇのは辛いな……。食事は人生の基本、幸せの根源だ。それがないってのはつまらんだろ?」
「そりゃまぁ。でも、しばらくしたら再生カプセルにはいれるって話です。そしたらすぐ良くなりますよ」
「なんだ、まだなのか?」
「かなり出血してたらしくて……」
「そんなにやられたのか……」
隊長はベッドのそばにある椅子に腰かける。カバンからメモ帳らしきものとペンを取り出し、俺に話しかけてくる。
「犯人捜しのために協力してもらうんだが。お前、襲われる心当たりとかないのか?」
「たくさんありますよ、そりゃあ。今までいろんな犯罪者を捕まえてきた、中には力ずくでおとなしくさせた奴もいる。そういう連中は、俺を恨んでるでしょう」
「だが、みんながみんな、お前に仕返しするわけじゃない。とりあえず片っ端から探してみるから、とにかく思いつことを言えって。言うだけならロハだろ?」
「そうですねぇ……」
犯罪者。力ずくでおとなしくさせる。仕返し。うん、力ずく……?
「そういえば。この間、繁華街でケンカしてる若い男がいて。そいつに拳銃ぶち込んで黙らせた、そういうのがあったんスよ」
「へぇ、それで?」
「そいつとケンカ相手、両方とも本部に連れてったんで、記録があると思います」
「よし、わかった。じゃあ早速、その男を探してみるよ」
「ありがとうございます」
「あたしはそろそろ仕事に戻るけど、夕方にはエイミーやダーカーが見舞いにくると思うから、そのつもりでいろよ」
「わかりました」
「おう、元気でな。また明日、様子を見にくるから」
彼女は忙しそうな様子で外に出ていく。お見舞いか……。ケイトさんも来てくれるだろうか? あっ、しまった、隊長にケイトさんのことを聞くの忘れちまった……。
まぁいいか、明日また来るってことだし。その時に聞こう。
同日、夕方。エイミーがお見舞いにやってきた。今、俺のベッドのそばにいる彼女は、椅子に腰かけながら話をしている。
「クロベー、大丈夫?」
エイミーの顔は不安そうに見える。それをなんとかべく、俺は無理やり笑って元気な様子を見せようとする。
「はは、心配すんなよ。ちょっと痛いが、すぐに治るって」
「ほんとう?」
「おうよ」
「でも心配」
「明日からは再生カプセルで治療できる、そうすりゃあ三日もせずに退院だろうさ」
「そうなの?」
「医者はそう言ってたぜ」
「わかった。じゃあそれを信じる」
彼女の顔が少し明るくなる。よしよし、いいぞいいぞ。ふさぎこんでると世の中つまらんからな、そうやって元気にいくのが大事だ。
「エイミー、ところで質問だが。なぜダーカーがいないんだ?」
「残業」
「えぇ? 残業って……」
「爆弾テロが起きた。パウエル司令官が狙われた」
「司令が……?」
ポール・パウエル司令官。三十代半ばに思える黒人男性の彼は、警備隊の総司令を務める人物だ。
彼が襲われたということは、すなわち、誰かが警備隊の壊滅を狙ったということだ。司令官が死ねば軍事組織は機能停止する、それは古今東西、いつでも変わらないからな。俺は話を続ける。
「何がどうなったんだ?」
「爆発の時、司令、外出してた。だから無事だった」
「なんだよ、無事なのか。安心したぜ」
「うん。でも、司令の奥さんと子ども、死んだ」
「……マジか?」
「うん」
思わず俺は長いため息をつく。
「はぁ~~~……。クソッタレ……」
「今夜は徹夜で犯人捜し。だから、ダーカーは残業」
「じゃあお前はなんなんだよ?」
「お見舞いの許可、特別にもらった」
彼女は、俺のベッドそばにある小さな置き時計を見る。
「時間が来た。もう行かなくちゃいけない」
「もしかして仕事か?」
「うん。すぐに戻って残業。みんなのお手伝い」
「ひょっとして、忙しいとこを抜け出してきたのか?」
「……ひみつ」
そう言って、彼女はいたずらっ子みたいに笑う。それから、椅子から腰を上げ、最後のメッセージを俺に伝える。
「明日、ケイトお姉ちゃんがくる。そう言ってた」
「マジかよ」
「お姉ちゃんによろしく。じゃあ、行く。元気でね」
そう言い残し、彼女は退室していった。
ケイトさんが来るのか。デートの件、ちゃんと謝らないとな。それにしても司令官が襲われるとは……。マジでシャレにならねぇ事態になってきたぜ。
これだけ連続して爆弾テロが起きるってことは、もう間違いねぇよ、どこかの街の工作員がボトム・ロックに潜伏してるんだ。それも複数。
早いとこ連中を見つけて叩きつぶさないと、また犠牲者が出るぞ……。
「よう、こんちは」
「こんちは、隊長」
「どうだ、調子は?」
「いやもう全然、痛くて痛くて……。痛み止めがないと眠れないくらいですよ」
「そうか、そいつぁなかなかキツいな。メシはちゃんと食えてるか?」
「腹を撃たれたんですよ? 食事なんて無理ですよ、点滴の栄養で生きてます」
「メシが食えねぇのは辛いな……。食事は人生の基本、幸せの根源だ。それがないってのはつまらんだろ?」
「そりゃまぁ。でも、しばらくしたら再生カプセルにはいれるって話です。そしたらすぐ良くなりますよ」
「なんだ、まだなのか?」
「かなり出血してたらしくて……」
「そんなにやられたのか……」
隊長はベッドのそばにある椅子に腰かける。カバンからメモ帳らしきものとペンを取り出し、俺に話しかけてくる。
「犯人捜しのために協力してもらうんだが。お前、襲われる心当たりとかないのか?」
「たくさんありますよ、そりゃあ。今までいろんな犯罪者を捕まえてきた、中には力ずくでおとなしくさせた奴もいる。そういう連中は、俺を恨んでるでしょう」
「だが、みんながみんな、お前に仕返しするわけじゃない。とりあえず片っ端から探してみるから、とにかく思いつことを言えって。言うだけならロハだろ?」
「そうですねぇ……」
犯罪者。力ずくでおとなしくさせる。仕返し。うん、力ずく……?
「そういえば。この間、繁華街でケンカしてる若い男がいて。そいつに拳銃ぶち込んで黙らせた、そういうのがあったんスよ」
「へぇ、それで?」
「そいつとケンカ相手、両方とも本部に連れてったんで、記録があると思います」
「よし、わかった。じゃあ早速、その男を探してみるよ」
「ありがとうございます」
「あたしはそろそろ仕事に戻るけど、夕方にはエイミーやダーカーが見舞いにくると思うから、そのつもりでいろよ」
「わかりました」
「おう、元気でな。また明日、様子を見にくるから」
彼女は忙しそうな様子で外に出ていく。お見舞いか……。ケイトさんも来てくれるだろうか? あっ、しまった、隊長にケイトさんのことを聞くの忘れちまった……。
まぁいいか、明日また来るってことだし。その時に聞こう。
同日、夕方。エイミーがお見舞いにやってきた。今、俺のベッドのそばにいる彼女は、椅子に腰かけながら話をしている。
「クロベー、大丈夫?」
エイミーの顔は不安そうに見える。それをなんとかべく、俺は無理やり笑って元気な様子を見せようとする。
「はは、心配すんなよ。ちょっと痛いが、すぐに治るって」
「ほんとう?」
「おうよ」
「でも心配」
「明日からは再生カプセルで治療できる、そうすりゃあ三日もせずに退院だろうさ」
「そうなの?」
「医者はそう言ってたぜ」
「わかった。じゃあそれを信じる」
彼女の顔が少し明るくなる。よしよし、いいぞいいぞ。ふさぎこんでると世の中つまらんからな、そうやって元気にいくのが大事だ。
「エイミー、ところで質問だが。なぜダーカーがいないんだ?」
「残業」
「えぇ? 残業って……」
「爆弾テロが起きた。パウエル司令官が狙われた」
「司令が……?」
ポール・パウエル司令官。三十代半ばに思える黒人男性の彼は、警備隊の総司令を務める人物だ。
彼が襲われたということは、すなわち、誰かが警備隊の壊滅を狙ったということだ。司令官が死ねば軍事組織は機能停止する、それは古今東西、いつでも変わらないからな。俺は話を続ける。
「何がどうなったんだ?」
「爆発の時、司令、外出してた。だから無事だった」
「なんだよ、無事なのか。安心したぜ」
「うん。でも、司令の奥さんと子ども、死んだ」
「……マジか?」
「うん」
思わず俺は長いため息をつく。
「はぁ~~~……。クソッタレ……」
「今夜は徹夜で犯人捜し。だから、ダーカーは残業」
「じゃあお前はなんなんだよ?」
「お見舞いの許可、特別にもらった」
彼女は、俺のベッドそばにある小さな置き時計を見る。
「時間が来た。もう行かなくちゃいけない」
「もしかして仕事か?」
「うん。すぐに戻って残業。みんなのお手伝い」
「ひょっとして、忙しいとこを抜け出してきたのか?」
「……ひみつ」
そう言って、彼女はいたずらっ子みたいに笑う。それから、椅子から腰を上げ、最後のメッセージを俺に伝える。
「明日、ケイトお姉ちゃんがくる。そう言ってた」
「マジかよ」
「お姉ちゃんによろしく。じゃあ、行く。元気でね」
そう言い残し、彼女は退室していった。
ケイトさんが来るのか。デートの件、ちゃんと謝らないとな。それにしても司令官が襲われるとは……。マジでシャレにならねぇ事態になってきたぜ。
これだけ連続して爆弾テロが起きるってことは、もう間違いねぇよ、どこかの街の工作員がボトム・ロックに潜伏してるんだ。それも複数。
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