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第二章 死ねよ初心者狩り
第1話 ボーイ・ミーツ・ガール。みたいな。
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ヘルヴァスがサービスを開始してからはや一年。思えばこのアルファ・サーバーだけでいろんな事件があったなぁ。
ついこの間もオリヒソがPKされて引退って大事件が起きた。噂じゃ、殺ったのはかなり格下の二人組らしい。
まったく。あんな重課金に勝つなんて、どういう手品を使ったんだか。それともあいつより課金しまくったのか?
なんにせよ凄い話だと思う。ほんと、このヘルヴァスの中じゃ何が起きるか分からない。一寸先は闇ってやつなのかも。
そういや自己紹介がまだだった。俺の名前はレミー、性別は男、年齢は……ナイショにしといてくれ。
ヘルヴァスはサービス開始からずーっとやっていて、ゲーム内ではそこそこの有名人のつもりだ。
今日は、ついこのあいだ俺が経験した、ある小事件について話をするよ。
さっきのオリヒソPKに比べたらかなりしょぼいんだけど、それでも話す価値はあると思ってさ。とにかく聞いてってくれ。
ある日、精霊の森の某所をうろついていた時だった。俺がのんきに薬草なんか集めてると、少し遠くで人間同士が争う音が聞こえた。どうやら若い男が一人と少女が一人の計二人らしい。
俺は、(様子を見に行ってトラブルに巻き込まれるのは嫌だなぁ)と思ったんだけど、いきなり少女が叫んだんだ。
「誰かーっ! 助けてーっ!」
さすがにこれじゃあ見て見ぬフリなんて出来ないわけで、俺は剣を手に現場へ急行した。
着いてみると、レベル三十くらいだろうか、魔術師の格好をした白エルフの女の子がいて、人間族の男の戦士に攻撃されている。
とりあえず男の方に話しかけてみる。
「あの、なにやってるんですか?」
「見て分かるだろ、PKだ、PK」
女の子が切羽詰まった顔で言う。
「お願いします、助けてください! この人すっごい強くって!」
はぁ、やれやれ……。どうしようか。助けに入って後で面倒に巻き込まれるなんて嫌、でも見捨てるのもなぁ。
そうやってあれこれ考えていると、またまた女の子が言ってくる。
「本当お願いです、助けてください! 私こういうのよく分かんなくて、もう死んじゃいそうなんです!」
おぉ、体力ゲージがなくなる寸前じゃないか。対照的に、男の方はピンピンしてる。このまま二人が戦ったら女の子は瞬殺だな。そいつはちょっと良くない。
俺はため息混じりに剣を構え、男に言う。
「そんぐらいで終わりにした方がよくないですか。でないと、俺が相手しますよ」
「女の子を助ける王子様ってか?」
「別にそんなんじゃないですけど」
「兄ちゃんよぉ、ちょっかい出すならそれなりの覚悟あるんだろうな?」
にやっと笑い、男はその手の剣を俺に見せつけてくる。ふむ、これは……。
「ミスリル・ソードか。なかなかいいもの持ってるんですね」
「しかもプラス七だ」
ヘルヴァスには武器防具を鍛えて強化するシステムがある。一回鍛えるたびにミスリル・ソード・プラス一、プラス二、プラス三というふうに増えていき、最終的にはプラス十まで強化できる。
こいつの言ってるプラス七っていうのは、多少は課金しないとたどりつけないレベルだ。きっと強化アイテムとか買ったんだろうなぁ。やれやれ、なかなか手ごわそうだぞ。ならば……。
「プラス七ですか。しかし、俺の剣はオンスロート。そっちより格上です」
オンスロート。英語のつづりを書くと onslaught. その意味は「猛攻撃」だ。
この剣は使い手の素早さを大きく上げて、連続攻撃を可能にする。うまく戦えば同格の相手なんて瞬殺だ。そういう話は向こうだってわかってるはず。
「オンスロートを持ってる俺と戦ったらタダじゃすまないと思いますが、それでもやりますか」
「……ふん!」
男は剣を収める。
「今回は見逃してやる。だが次はつぶす!」
男の足元に魔法陣が出現し、直後、彼はどこかに消え去る。ワープの魔法で街に帰ったんだろう。
人を襲ったら一定期間はおたずねものマークがついてみんなに狙われるんだけど、大丈夫なんだろうか。まぁ俺が心配することじゃない、どうでもいいや。
女の子が俺に近寄ってきて頭を下げる。
「ありがとうございます、助けていただいて……」
「そんな大したことじゃないよ。それにこれ、サブキャラなんだよ。たまたまオンスロート持ってたけどさ、それ以外はまるでしょぼい装備だから。もし戦ったら負けてた」
「でも結果よければすべて良しっていうじゃないですか。とにかく、本当にありがとうございました」
「いいって、いいって」
「あの、それでですね。よかったらちょっと相談に乗ってもらえませんか?」
「はぁ……」
なんだかさらに面倒なことになってきたぞ。この先どうなるんだか。
ついこの間もオリヒソがPKされて引退って大事件が起きた。噂じゃ、殺ったのはかなり格下の二人組らしい。
まったく。あんな重課金に勝つなんて、どういう手品を使ったんだか。それともあいつより課金しまくったのか?
なんにせよ凄い話だと思う。ほんと、このヘルヴァスの中じゃ何が起きるか分からない。一寸先は闇ってやつなのかも。
そういや自己紹介がまだだった。俺の名前はレミー、性別は男、年齢は……ナイショにしといてくれ。
ヘルヴァスはサービス開始からずーっとやっていて、ゲーム内ではそこそこの有名人のつもりだ。
今日は、ついこのあいだ俺が経験した、ある小事件について話をするよ。
さっきのオリヒソPKに比べたらかなりしょぼいんだけど、それでも話す価値はあると思ってさ。とにかく聞いてってくれ。
ある日、精霊の森の某所をうろついていた時だった。俺がのんきに薬草なんか集めてると、少し遠くで人間同士が争う音が聞こえた。どうやら若い男が一人と少女が一人の計二人らしい。
俺は、(様子を見に行ってトラブルに巻き込まれるのは嫌だなぁ)と思ったんだけど、いきなり少女が叫んだんだ。
「誰かーっ! 助けてーっ!」
さすがにこれじゃあ見て見ぬフリなんて出来ないわけで、俺は剣を手に現場へ急行した。
着いてみると、レベル三十くらいだろうか、魔術師の格好をした白エルフの女の子がいて、人間族の男の戦士に攻撃されている。
とりあえず男の方に話しかけてみる。
「あの、なにやってるんですか?」
「見て分かるだろ、PKだ、PK」
女の子が切羽詰まった顔で言う。
「お願いします、助けてください! この人すっごい強くって!」
はぁ、やれやれ……。どうしようか。助けに入って後で面倒に巻き込まれるなんて嫌、でも見捨てるのもなぁ。
そうやってあれこれ考えていると、またまた女の子が言ってくる。
「本当お願いです、助けてください! 私こういうのよく分かんなくて、もう死んじゃいそうなんです!」
おぉ、体力ゲージがなくなる寸前じゃないか。対照的に、男の方はピンピンしてる。このまま二人が戦ったら女の子は瞬殺だな。そいつはちょっと良くない。
俺はため息混じりに剣を構え、男に言う。
「そんぐらいで終わりにした方がよくないですか。でないと、俺が相手しますよ」
「女の子を助ける王子様ってか?」
「別にそんなんじゃないですけど」
「兄ちゃんよぉ、ちょっかい出すならそれなりの覚悟あるんだろうな?」
にやっと笑い、男はその手の剣を俺に見せつけてくる。ふむ、これは……。
「ミスリル・ソードか。なかなかいいもの持ってるんですね」
「しかもプラス七だ」
ヘルヴァスには武器防具を鍛えて強化するシステムがある。一回鍛えるたびにミスリル・ソード・プラス一、プラス二、プラス三というふうに増えていき、最終的にはプラス十まで強化できる。
こいつの言ってるプラス七っていうのは、多少は課金しないとたどりつけないレベルだ。きっと強化アイテムとか買ったんだろうなぁ。やれやれ、なかなか手ごわそうだぞ。ならば……。
「プラス七ですか。しかし、俺の剣はオンスロート。そっちより格上です」
オンスロート。英語のつづりを書くと onslaught. その意味は「猛攻撃」だ。
この剣は使い手の素早さを大きく上げて、連続攻撃を可能にする。うまく戦えば同格の相手なんて瞬殺だ。そういう話は向こうだってわかってるはず。
「オンスロートを持ってる俺と戦ったらタダじゃすまないと思いますが、それでもやりますか」
「……ふん!」
男は剣を収める。
「今回は見逃してやる。だが次はつぶす!」
男の足元に魔法陣が出現し、直後、彼はどこかに消え去る。ワープの魔法で街に帰ったんだろう。
人を襲ったら一定期間はおたずねものマークがついてみんなに狙われるんだけど、大丈夫なんだろうか。まぁ俺が心配することじゃない、どうでもいいや。
女の子が俺に近寄ってきて頭を下げる。
「ありがとうございます、助けていただいて……」
「そんな大したことじゃないよ。それにこれ、サブキャラなんだよ。たまたまオンスロート持ってたけどさ、それ以外はまるでしょぼい装備だから。もし戦ったら負けてた」
「でも結果よければすべて良しっていうじゃないですか。とにかく、本当にありがとうございました」
「いいって、いいって」
「あの、それでですね。よかったらちょっと相談に乗ってもらえませんか?」
「はぁ……」
なんだかさらに面倒なことになってきたぞ。この先どうなるんだか。
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