くたばれ重課金 VRMMO『ヘルヴァス』というクソゲーの話

夏野かろ

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第二章 死ねよ初心者狩り

第5話 ターゲットを探せ!

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 数日後、ヘルヴァス、精霊の森。今、俺とオリヴィエは、二人してぶらぶらと歩きながら時を過ごしている。あっちで薬草を採り、こっちでキノコを拾い、そっちで魔法石を集め。
 魔法石ってのは、空気の中にある魔法の力が結晶化したものだ。装備を作る時にたくさん必要なんで、こうやって日頃から収集するのが賢いやり方だ。もっとも、ここは低級の魔法石ばっかりだが……。

 不安そうな顔でオリヴィエが言ってくる。

「作戦のためとはいえ、そんな装備で大丈夫ですか?」
「あぁ、まぁ……」

 今の俺は、三番目のサブキャラであるシェンカーでヘルヴァスをやっている。このゲームじゃ、一人当たり五人までキャラが持てるんだよ。だからこれくらいはなんてことない、もっとも、三人目以降は課金しないと枠が解放されないんだけどな。
 その話はとりあえず横に置いとこう。俺はオリヴィエに返す。

「なるべく初心者っぽい装備の方がいいですからね。これでオーケー」

 シェンカーはレベル三十二の赤戦士だ。赤戦士ってのは、武器での戦いだけでなく魔法での戦いもできる万能戦士……といいたいところだが、実際は器用貧乏になりがちな職業だ。
 剣を使えば戦士に劣り、魔法を使えば魔術師に劣る。強力な装備があればどちらの職にも負けないが、そのためには重課金が必須であり、おせじにも初心者向けとはいえない。

 なのにわざわざ引っ張り出してきたのは、ものを知らない初心者に見せかけるためだ。しょぼい装備の赤戦士が歩いていれば、初心者狩りの奴ら「ゲームに慣れてない雑魚がいるぞ」と思って襲ってくるだろう。
 それに、こないだ襲われたオリヴィエもいるのだ。あのミスリル・ソードの戦士が見つけたら絶対間違いなく来る。そこを返り討ちって作戦だ。

 しかし……。

「オリヴィエさん、俺らどんだけここにいますっけ?」
「たぶん三十分くらい」
「マジすか」

 こりゃあ今日は会わないかもしれんなぁ。向こうだって年中無休の二十四時間営業ってわけじゃないだろう、リベンジしたくても相手がログ・インしてないんじゃねぇ……。
 そう思った時、俺は背後で物音がするのを感じた。素早く振り向いて臨戦態勢に入る。

「あいつが来ましたぜ、オリヴィエさん」
「はい……!」

 間違いない、あの戦士だ。ごていねいに今日もミスリル・ソードを装備してやがる。よっぽど自慢らしいな。
 彼は偉そうな顔で俺たちに言う。

「姉ちゃん、そいつぁー彼氏かよ?」
「いや全然違います」

 えっ、即答? ちょっと悲しいぞ……。

「彼氏じゃねぇならなんだよ。ボディ・ガード?」
「それよりもっとすごい人です!」

 どうやら出番っすねー。俺は剣を構えて男を軽くにらむ。

「やるんなら相手しますよ」
「へっ、そんな武器で? ただのグレート・ソードじゃねーか」

 グレート・ソードなんて、駆け出しのプレイヤーが使う安物の武器だ。レベル二十四を超えた人が使うようなもんじゃない。
 現実世界でいったらコンビニ弁当のクオリティかな。まぁまぁ役立つが、会社の上司や学校の先生にごちそうできるレベルじゃない。その程度だ、グレート・ソードは。

 そういや、この男ってなんて名前なんだろ?

「ちょっと質問したいんですがね、お兄さんお名前は?」
「あぁ? 知りたいならまずてめぇから名乗れよ」
「えー、俺は……」

 どうしよう。まさかメインの名前出すわけにもいかんしね。

「えー、シェンカーです」
「なんかギターがうまそうだな」
「そりゃどうも」
「俺はコガラシだ。覚えとけ!」

 言い捨て、コガラシが構える。そういやオリヴィエはどうした?

「れみ……、シェンカーさん。私はどうしたら?」
「とにかく下がって。あとは打ち合わせ通りに」
「はい」

 戦いが始まる。
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