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第二章 死ねよ初心者狩り

第4話 血気盛んなお嬢様

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 さて、ギャラをもらったからにはそれ相応のお仕事をせにゃなるまいよ。まずは戦力の確認からだな。

「オリヴィエさん、ちょっとステータス見させてもらいますよ……。ふむ……」

 うわぁ、なんだこれは。クソの固まりじゃん。もうレベル三十だってのに武器がまった強化されてないぞ……。

「レミーさん、私の強さってどうですか?」
「うー、うん、そうだなぁ……」

 ここは慎重に答えなくては……。

「まぁ悪くはないけど、えーと、そうだそうだ。指輪っていま装備してるので全部ですか?」
「はい」

 マジで? この子、すっげぇ適当に指輪つけてるぞ……。店売りの品に安物のジェムをはめてるだけだ、増加するパラメータがばらばら過ぎてほとんど意味がない。
 たとえば、この知恵のリングってアイテムは魔力を上げるんだけど、それに筋力増加のジェムを入れてる。魔法の威力は魔力で決まるってのに、筋力なんか増やしてどうするのか。

 はぁ……。こんなへなちょこじゃ、初心者狩りされるのも当たり前だな。ひょっとしてこの子、ゲームとかあまりやったことないのでは。だとするとマジで面倒だぞ……。
 おずおずと質問してみる。

「あの……。得意な魔法ってある?」
「得意っていうか、いろんな魔法を使ってます」
「ひょっとしていろんなのを少しずつ上げてる?」
「はい」

 うひゃあ。それはやっちゃいけないことなんだよね。
 普通は、雷魔法なら雷魔法、炎魔法なら炎魔法、そうやって専門とする魔法を中心に鍛えていくもんなんだけど。医者だって内科とか外科とかに分かれてるでしょ、それと同じだよ。

 どうしていいか分かんねぇなこれ。こんなんじゃまた襲われるぞ……。しかし今さらキャラの鍛え直しってのも……。
 そうやってあれこれ悩んでいると、トモエが声をかけてくる。

「あたし思うんだけどね。いっそ身を守るとか考えず、逆に相手をボコボコにすればいいんじゃない?」
「返り討ちってことですか」
「その通り」
「しかし、どうやってやるんです」
「それをさぁ、ちょっとあんたと一緒に考えようと思って……」

 オリヴィエが言ってくる。

「私、あんな怖い思いしてすっごくムカついてるんです。もしできるなら仕返ししたいんですよ!」
「いやぁーそれはちょっと無理じゃないかなぁ……」
「なんでですか!」
「だってさぁ……」

 その戦闘力じゃねぇ……。身の程をわきまえずにケンカ売るとえらいことになるってば。

「やめたほうがいいですよ、リベンジなんて。今度こそやられちゃいます」
「でも悔しいですよ!」
「まぁ気持ちはわかりますが……。しかしなぁ、向こうは課金装備でガチガチに固めてるでしょう。かなり強いですよ。でもオリヴィエさんって無課金じゃないですか?」
「その、それは……」
「装備品を見ればわかりますよ。課金者向けのものがないですもん。たくさん課金してる奴には勝てないのが課金ゲーってものです、復讐はあきらめた方がいいですって」
「でも無課金だからって初心者狩りされるなんて、そんなのおかしいです!」

 やべぇな、話がこんがらがってきた。落ち着け落ち着け、ここはクールにふるまうんだ、レミー……。

「そりゃ俺だって初心者狩りはクソだと思いますよ。でも金があるとそれができちまうヘルヴァスのゲーム性が根本的にクソなんですよ」
「だいたいなんで初心者狩りなんて出来るんですか? だって、このゲームはレベルが下の人には挑戦できませんよね」
「たまにいるんですよ。サブキャラ作ってそいつにメインキャラの課金装備を渡して、それでやってる奴が」
「なにそれ! 不良、チンピラ、ヤンキー! 根性が曲がってますよ!」
「んなこと言われても……」
「私すっごい頭にきました! 絶対あいつやっつけます! ぶっ飛ばしますよ!」
「トモエさん助けてくださいよ……」

 彼女は「あはは!」と笑う。

「まぁ落ち着きなって、オリヴィエ」
「でも!」
「まぁまぁ……。あのさ、レミーに質問したいんだけど」
「はぁ」
「あんたもさ、メインキャラの課金装備があるわけでしょ?」
「そりゃまぁ少しだけなら」
「じゃあさ……」

 おいおい、この人は何を考えてるんだ? まさか、仕返し路線へなにがなんでも話を持ってこうってつもりなの。
 やべぇなぁ、やべぇよこれ……。やっぱギルド加入やめときゃよかったかも。
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