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第1部 すべては経験
第1話 冒険者らしい仕事/The Grind
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これは、剣と魔法の物語。命の炎で暗闇を照らし、その中を突き進む人々の物語。
伝説は我々に昔話を語る、「闇の向こうには素晴らしいものがある」。だが、いったいどれだけの人たちがその場所にたどり着いたのかは……語らない。
それでも冒険者たちは、伝説を信じて今日も進み続ける。
セラの街から歩いて数時間ほどのところには、エーザの湖と呼ばれる場所がある。今その場所に、冒険者風の恰好をした4人の少年少女たちの集団があって、何かを喋りながら、湖の周りにある木々の中を歩いている。時間帯は昼間。あたりは静かで、鳥の声が時たま聞こえるだけ。
集団の先頭にいる、戦士風の恰好をした、黄色肌の人間族に見える少年……ギンは言う。
「ふぅ、そろそろだ」
集団の最後尾にいる、頭に犬耳を生やした少年、リッチーが答える。
「ったく、薬草採りなんてよぉ……」
彼のすぐ前、横に長い耳と褐色の肌、黒髪のポニーテールを持つ少女……レーヴが答える。
「仕方ないじゃん、お金ないんだし」
レーヴの横にいる、横に長い耳と白い肌、長い金髪という容姿の少女……キャンディスが答える。
「いつになったらこの暮らしが終わるんでしょうね……」
彼女は小さな小さなため息をつく。そしてまたぼやく。
「薬草を採って、売って、そのお金で生活して。お金がなくなったらまた薬草採りをして。私たち、これじゃまるで植物学者みたい」
キャンディスのこの発言に対し、リッチーが返答する。
「よく聞け、俺たちは学者じゃねぇ、冒険者だ。確かに今は薬草採りしてるけどよ、金がある時はダンジョン潜って、冒険してるだろうが」
レーヴがリッチーに返す。
「でもさぁ、リッチー。冒険っていっても、ダンジョン3階があたしらの限界じゃん。4階には怖くて行けない、じゃあレベル上げしようって思っても、ポイズン・リザードが倒せない。こんなヘナチョコじゃあ、冒険者の名が泣くよ」
キャンディスの返事。
「今は我慢の時ですよ、レーヴ。お金を貯めて、いい装備を買って、戦いの経験を積んで……。いずれ私たちは、4階へ進むんです。だから、今は我慢しなきゃ。そうでしょう、ギン?」
少し不機嫌そうな声でギンは答える。
「あぁ、そうさ、その通りさ。俺たちは4階へ進む、いや、もっともっと進むんだ。誰よりも早く街のダンジョンを制覇して、街で一番の冒険者になって。いずれは大金持ち、みんながうらやむ有名人。絶対そうなるんだぜ……絶対に……」
ここはエーザの湖。街のダンジョンではない。繰り返して言おう、ここはエーザの湖、街のダンジョンではない。いくらこの場所を探索しても、ダンジョンを制覇することはできない、絶対に。
ギンたちはそれからも歩き続け、しばらくしてから開けた場所に到着した。そこは湖の手前にあって、かなり広く、いろいろな草が生い茂っている。ギンは言う。
「それじゃ、作業開始だ。危ないことがあったら大声を出してね」
四方八方にギンたちは別れ、薬草を求めてあたりを探し回る。ギンはとりあえず正面の草むらへ行き、仕事を始める。草から漂う青臭い匂いが彼の鼻をくすぐり、不快な思いをさせる。彼の手が草むらを揺らす、驚いたバッタが逃げていく。
やがて彼は何本かの草を見つける、それは膝ほどの高さがあり、小さな黄色い花を咲かせている。ギンはそれらを掘り起こしにかかる、足の防具に縛り付けてある小さなスコップを取り出し、慎重に土を掘っていく。彼の顔から小さな汗のしずくが垂れ、その手が土で汚れていく。
ついに彼はその草を手に入れる。1本10マー。(マーはこの世界の通貨単位)。安いパン1つが10マーだから、今の行動で彼はパン1つ分の稼ぎをしたことになる。
ギンは手に入れた草たちをそっと地面に置き、自分の手を見る。どろどろになったその手は、彼の心を不愉快にする。思わずつぶやく。
「俺、こんなとこで何やってんだろう……」
伝説は我々に昔話を語る、「闇の向こうには素晴らしいものがある」。だが、いったいどれだけの人たちがその場所にたどり着いたのかは……語らない。
それでも冒険者たちは、伝説を信じて今日も進み続ける。
セラの街から歩いて数時間ほどのところには、エーザの湖と呼ばれる場所がある。今その場所に、冒険者風の恰好をした4人の少年少女たちの集団があって、何かを喋りながら、湖の周りにある木々の中を歩いている。時間帯は昼間。あたりは静かで、鳥の声が時たま聞こえるだけ。
集団の先頭にいる、戦士風の恰好をした、黄色肌の人間族に見える少年……ギンは言う。
「ふぅ、そろそろだ」
集団の最後尾にいる、頭に犬耳を生やした少年、リッチーが答える。
「ったく、薬草採りなんてよぉ……」
彼のすぐ前、横に長い耳と褐色の肌、黒髪のポニーテールを持つ少女……レーヴが答える。
「仕方ないじゃん、お金ないんだし」
レーヴの横にいる、横に長い耳と白い肌、長い金髪という容姿の少女……キャンディスが答える。
「いつになったらこの暮らしが終わるんでしょうね……」
彼女は小さな小さなため息をつく。そしてまたぼやく。
「薬草を採って、売って、そのお金で生活して。お金がなくなったらまた薬草採りをして。私たち、これじゃまるで植物学者みたい」
キャンディスのこの発言に対し、リッチーが返答する。
「よく聞け、俺たちは学者じゃねぇ、冒険者だ。確かに今は薬草採りしてるけどよ、金がある時はダンジョン潜って、冒険してるだろうが」
レーヴがリッチーに返す。
「でもさぁ、リッチー。冒険っていっても、ダンジョン3階があたしらの限界じゃん。4階には怖くて行けない、じゃあレベル上げしようって思っても、ポイズン・リザードが倒せない。こんなヘナチョコじゃあ、冒険者の名が泣くよ」
キャンディスの返事。
「今は我慢の時ですよ、レーヴ。お金を貯めて、いい装備を買って、戦いの経験を積んで……。いずれ私たちは、4階へ進むんです。だから、今は我慢しなきゃ。そうでしょう、ギン?」
少し不機嫌そうな声でギンは答える。
「あぁ、そうさ、その通りさ。俺たちは4階へ進む、いや、もっともっと進むんだ。誰よりも早く街のダンジョンを制覇して、街で一番の冒険者になって。いずれは大金持ち、みんながうらやむ有名人。絶対そうなるんだぜ……絶対に……」
ここはエーザの湖。街のダンジョンではない。繰り返して言おう、ここはエーザの湖、街のダンジョンではない。いくらこの場所を探索しても、ダンジョンを制覇することはできない、絶対に。
ギンたちはそれからも歩き続け、しばらくしてから開けた場所に到着した。そこは湖の手前にあって、かなり広く、いろいろな草が生い茂っている。ギンは言う。
「それじゃ、作業開始だ。危ないことがあったら大声を出してね」
四方八方にギンたちは別れ、薬草を求めてあたりを探し回る。ギンはとりあえず正面の草むらへ行き、仕事を始める。草から漂う青臭い匂いが彼の鼻をくすぐり、不快な思いをさせる。彼の手が草むらを揺らす、驚いたバッタが逃げていく。
やがて彼は何本かの草を見つける、それは膝ほどの高さがあり、小さな黄色い花を咲かせている。ギンはそれらを掘り起こしにかかる、足の防具に縛り付けてある小さなスコップを取り出し、慎重に土を掘っていく。彼の顔から小さな汗のしずくが垂れ、その手が土で汚れていく。
ついに彼はその草を手に入れる。1本10マー。(マーはこの世界の通貨単位)。安いパン1つが10マーだから、今の行動で彼はパン1つ分の稼ぎをしたことになる。
ギンは手に入れた草たちをそっと地面に置き、自分の手を見る。どろどろになったその手は、彼の心を不愉快にする。思わずつぶやく。
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