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第2部 闇に死す
第1話 それから半年後
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ギンたちがブレイン・シェイカーに敗北してから、約半年の月日が流れた。
今ここはエーザの湖、時間は昼過ぎ。ギンたちは、武器を手に物陰に隠れ、前方にいるモンスターの様子をうかがっている。
そこにいるのは体高130センチほどの大きなイノシシ、通称「マッシヴ・ボア(massive boar)」。マッシヴの言葉が示す通りにどっしりした体と、口の横から前へと伸びる鋭い牙が特徴的な、たくましい生き物である。
ボアは魔法こそ使えないものの、身体能力に優れている。強烈な突進から繰り出される牙の一撃は、やわな鎧など簡単に破壊し、人間の骨まで砕いてしまうほどだ。
そして、ボアの肉は美味であり、なかなかの値段で取り引きされている。それゆえに、危険を承知で狙うハンターや冒険者は多く、今のギンたちもまた、そのような危険承知の冒険者になっているのだった。
ギンが喋る。
「あまり傷つけずに仕留めたいよね。リッチー、頭を狙って一撃って、無理?」
「難しいな……。やろうと思えばやれるがよ、もし外れたら、奴の体に直撃して血だらけにしちまうぞ」
「じゃあ、剣と魔法でいくしかないか……」
キャンディスの発言。
「私とレーヴさんで動きを止めます。その隙にギンさんが接近して、剣で止めを刺してください」
「了解」
「私はバインディングの魔法をかけます。レーヴさんはどうします?」
「ペラレシス(paralysis, マヒ)にするよ。バインディングした後、暴れられたらたまんないからね」
「分かりました」
リッチーが不満そうに言う。
「おい、ギン、俺の仕事は?」
「うーん……。とりあえずクロス・ボウを構えといてよ。やばくなったら出番が来ると思うから」
「了解。なぁ、俺ってさ、戦いになるとあんま役に立ってない気がするんだが?」
「そうだね。よし、みんな、いくよ……」
ギンが両手剣を構える。キャンディス、レーヴ、それぞれの手に魔法の光球が出現し、リッチーがクロス・ボウを構える。全員の準備が整う、ギンは命令を下す。
「戦闘開始だ!」
キャンディス、レーヴ、両者が魔法を飛ばす。まずキャンディスの魔法光球が着弾、魔法の縄が現れ、ボアの体を拘束する。続いてレーヴの魔法、それはボアの神経を痺れさせて、身をよじることすらできないようにする。最後に、ギンが突進攻撃をしかける。
「うおぉぉっ!」
敵を恐れず真っすぐに走って近づき、その勢いを保ったま剣撃を放つ。それはボアの眉間に叩きこまれ、頭蓋骨と脳を破壊し、命を奪う。ボアは「ブオォッ……」とうめき声をもらしながら地に倒れ、動かなくなる。
ボアが死んだのを見て、リッチーたちがやって来る。ボアの死体を見ながらリッチーが言う。
「へへっ、思ったよりちょろかったな。楽勝だぜ」
ギンが少し渋い顔をしながら返す。
「おいおい、慢心するなって」
「へいへい、わかってる、わかってる。ちょっと言ってみただけだ」
「なら、いいけど」
レーヴが発言する。
「こいつを売れば、コーメルキムの街へ行くお金、足りるかなぁ?」
返事をするのはキャンディス。
「たぶん大丈夫だと思いますよ。それにしても、あの街で本当にわかるんでしょうか、これについて……」
キャンディスは、肩かけバッグから何かの金属板を取り出す。それは扇のような形をしていて、左右の辺には欠けた部分があり、色は青緑……俗にいう、ロクショウのような色になっている。表面には謎の文様や記号があり、それは、明らかに現代のものとは違っている。
その金属板を見ながらリッチーが言う。
「あそこなら問題ねぇよ。いろんな商人がいて、学者がいて、だいたいどんなことでもわかる。なぁ、ギン?」
「俺に話を振られても……。まぁとにかく、行くって決めたんだし、行こうよ。行ったついでに美味しい物でも食べて気分転換してさ、たまには息抜きしよう」
美味しい物ときいて、レーヴの顔が輝く。彼女は言う。
「うんうん、いいねいいね! 美味しい物、ぜひぜひ食べようよ!」
遊びに行くわけではないのだが……。
今ここはエーザの湖、時間は昼過ぎ。ギンたちは、武器を手に物陰に隠れ、前方にいるモンスターの様子をうかがっている。
そこにいるのは体高130センチほどの大きなイノシシ、通称「マッシヴ・ボア(massive boar)」。マッシヴの言葉が示す通りにどっしりした体と、口の横から前へと伸びる鋭い牙が特徴的な、たくましい生き物である。
ボアは魔法こそ使えないものの、身体能力に優れている。強烈な突進から繰り出される牙の一撃は、やわな鎧など簡単に破壊し、人間の骨まで砕いてしまうほどだ。
そして、ボアの肉は美味であり、なかなかの値段で取り引きされている。それゆえに、危険を承知で狙うハンターや冒険者は多く、今のギンたちもまた、そのような危険承知の冒険者になっているのだった。
ギンが喋る。
「あまり傷つけずに仕留めたいよね。リッチー、頭を狙って一撃って、無理?」
「難しいな……。やろうと思えばやれるがよ、もし外れたら、奴の体に直撃して血だらけにしちまうぞ」
「じゃあ、剣と魔法でいくしかないか……」
キャンディスの発言。
「私とレーヴさんで動きを止めます。その隙にギンさんが接近して、剣で止めを刺してください」
「了解」
「私はバインディングの魔法をかけます。レーヴさんはどうします?」
「ペラレシス(paralysis, マヒ)にするよ。バインディングした後、暴れられたらたまんないからね」
「分かりました」
リッチーが不満そうに言う。
「おい、ギン、俺の仕事は?」
「うーん……。とりあえずクロス・ボウを構えといてよ。やばくなったら出番が来ると思うから」
「了解。なぁ、俺ってさ、戦いになるとあんま役に立ってない気がするんだが?」
「そうだね。よし、みんな、いくよ……」
ギンが両手剣を構える。キャンディス、レーヴ、それぞれの手に魔法の光球が出現し、リッチーがクロス・ボウを構える。全員の準備が整う、ギンは命令を下す。
「戦闘開始だ!」
キャンディス、レーヴ、両者が魔法を飛ばす。まずキャンディスの魔法光球が着弾、魔法の縄が現れ、ボアの体を拘束する。続いてレーヴの魔法、それはボアの神経を痺れさせて、身をよじることすらできないようにする。最後に、ギンが突進攻撃をしかける。
「うおぉぉっ!」
敵を恐れず真っすぐに走って近づき、その勢いを保ったま剣撃を放つ。それはボアの眉間に叩きこまれ、頭蓋骨と脳を破壊し、命を奪う。ボアは「ブオォッ……」とうめき声をもらしながら地に倒れ、動かなくなる。
ボアが死んだのを見て、リッチーたちがやって来る。ボアの死体を見ながらリッチーが言う。
「へへっ、思ったよりちょろかったな。楽勝だぜ」
ギンが少し渋い顔をしながら返す。
「おいおい、慢心するなって」
「へいへい、わかってる、わかってる。ちょっと言ってみただけだ」
「なら、いいけど」
レーヴが発言する。
「こいつを売れば、コーメルキムの街へ行くお金、足りるかなぁ?」
返事をするのはキャンディス。
「たぶん大丈夫だと思いますよ。それにしても、あの街で本当にわかるんでしょうか、これについて……」
キャンディスは、肩かけバッグから何かの金属板を取り出す。それは扇のような形をしていて、左右の辺には欠けた部分があり、色は青緑……俗にいう、ロクショウのような色になっている。表面には謎の文様や記号があり、それは、明らかに現代のものとは違っている。
その金属板を見ながらリッチーが言う。
「あそこなら問題ねぇよ。いろんな商人がいて、学者がいて、だいたいどんなことでもわかる。なぁ、ギン?」
「俺に話を振られても……。まぁとにかく、行くって決めたんだし、行こうよ。行ったついでに美味しい物でも食べて気分転換してさ、たまには息抜きしよう」
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