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第2部 闇に死す
第5話-2 パズルのピースのように
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ギンたちが去った後、その日の昼下がり。カールは宿を出てイーホウ邸へ向かった。途中で市場に寄り、ペア(pear, 西洋梨)をいくつか買う。彼はそのペアたちを贈答用の小箱に入れてもらい、再び歩き出す。そしてイーホウ邸に到着する。
その時イーホウは、自分の書斎で調べ物をしていた。今、彼は、机の前の椅子に座りながら本を読んでいる。本のそばにはギンたちから預かった二枚の金属板たちがあり、それらは無造作に置かれている。
コン、コン、誰かが書斎のドアを叩く音。イーホウは返答する。
「はい、誰だい?」
「私だよ、カールだ」
「君か。どうぞ、入ってくれ」
カールが入室してくる。先ほどの小箱を手にしながら。彼は書斎の隅にあるカウチ(couch, 日本語で言うソファ)に座り、言う。
「どうだい、調子は?」
「まぁ、相変わらずさ」
「つまり、悪いんだな?」
「(苦笑いしながら)おいおい、ひどいことを言うなぁ。確かに、体の調子はいまいちだけどね。でも、悪いってほどじゃないよ」
「君は体が弱いんだから、油断していると風邪をひくぞ」
「ご心配ありがとう。気をつけるよ。それで、その箱はなんだい?」
「あぁ、これか……」
カールはカウチの前にある机に箱を置き、説明する。
「ペアさ。さっき、市場で買ったんだがね。君にプレゼントしようと思って」
「これを食べて栄養をつけろってことかい?」
「さすが、理解が早い」
「何年も君と付き合っているんだ、それくらいはすぐわかる」
「はは、そうだな」
「僕は君の本心だってわかるつもりだよ。本当はこれ、メーユイ姉さんのために買ったんだろう?」
「やれやれ、君は本当に、何でもお見通しなんだな……」
イーホウは、カールが座っているカウチのそばまで移動し、カールの横に座る。それから話を続ける。
「どうだい、姉さんとの関係は?」
「相変わらず、という感じかな」
「じゃ、悪いんだな」
「(カール、苦笑い)おいおい、さっきの仕返しか?」
「まぁね。それで、今日の用事はペアだけかい?」
「いや、違う。二つあるんだがね、まず一つ目は、これさ」
カールは服の内側から袋を取り出し、そこから金属板を出す。それは、ギンたちの金属板とよく似た形、色をしたものに思える。イーホウはそれを見て驚く。
「君、これは?」
「この間、ひょんなことから手に入れてね。昨日こっちに来たのは、これを君に見せようと思ったからなんだ。でも留守だっただろう」
「だから今日、改めて来たってわけか」
「これが何だかわかるかい?」
「まぁ待ってくれ、ちょっと説明したいことがあるんだ。こっちに来てくれ」
イーホウはカウチから立ち上がり、先ほどまで使っていた机に行く。イーホウを追ってカールも移動する。イーホウは机の上の金属片を指さし、カールに見せる。
「あれを見てくれ。君が持ってきた奴とそっくりだろう?」
「これは……!」
「今日の午前、君の友だちだっていう人たちからこれを預かってね」
「ギンたちのことか」
「そうさ。正体は何か、鑑定を頼まれてさ」
「なるほど。しかし、まさか彼らもこれを持っていたとは……」
カールはギンたちの金属板をながめる。そしてあることを思いつく。
「それ、ちょっといいか?」
「うん?」
「そいつに私の板をくっつけてだな……」
カールの手が動き、ギンたちの金属板と自分のそれを組み合わせる。合計三枚の板は、パズルのピースのようにしっかりと合体し、欠けたところのない円形の金属板……メダルが出来上がる。
「イーホウ、どうだ? これで完成だと思うんだが」
「へぇ……。なるほど、一枚のメダルだったアイテムを、三つに分割していたのか」
「これなら正体がわかるだろう?」
「いや、まだだな。これだけじゃ何とも言えないよ」
「そうか……」
「気を落とすなよ。完成したおかげで、表面の模様がはっきりした。これを手がかりにすれば、今より楽に鑑定できる」
「その言葉、信じていいのか?」
「友だちの言葉だぜ? 信じられないのか?」
「そんなことはあり得ない」
「なら、大船に乗ったつもりでいてくれよ。力の限り頑張るから」
「ありがとう、イーホウ。でも、無理はするなよ?」
「わかっているさ」
二人は顔を見合わせる。両者、自然と笑みがこぼれる。カール。
「これだけでも来たかいがあったというものだ」
「嬉しいかい?」
「当たり前だろ?」
「でも、その気持ちを壊して悪いけど……。もう一つ、用事があるんだろ? それを済ませなきゃ、完全には喜べないぜ」
「……そうだな……」
カールは軽くため息をつき、壁際へ行き、そこへ背中をつけてもたれかかる。そして、言うべきことを言う。
「メーユイさんのことでね。その、率直にいえば……。デートに誘いたいんだ」
その時イーホウは、自分の書斎で調べ物をしていた。今、彼は、机の前の椅子に座りながら本を読んでいる。本のそばにはギンたちから預かった二枚の金属板たちがあり、それらは無造作に置かれている。
コン、コン、誰かが書斎のドアを叩く音。イーホウは返答する。
「はい、誰だい?」
「私だよ、カールだ」
「君か。どうぞ、入ってくれ」
カールが入室してくる。先ほどの小箱を手にしながら。彼は書斎の隅にあるカウチ(couch, 日本語で言うソファ)に座り、言う。
「どうだい、調子は?」
「まぁ、相変わらずさ」
「つまり、悪いんだな?」
「(苦笑いしながら)おいおい、ひどいことを言うなぁ。確かに、体の調子はいまいちだけどね。でも、悪いってほどじゃないよ」
「君は体が弱いんだから、油断していると風邪をひくぞ」
「ご心配ありがとう。気をつけるよ。それで、その箱はなんだい?」
「あぁ、これか……」
カールはカウチの前にある机に箱を置き、説明する。
「ペアさ。さっき、市場で買ったんだがね。君にプレゼントしようと思って」
「これを食べて栄養をつけろってことかい?」
「さすが、理解が早い」
「何年も君と付き合っているんだ、それくらいはすぐわかる」
「はは、そうだな」
「僕は君の本心だってわかるつもりだよ。本当はこれ、メーユイ姉さんのために買ったんだろう?」
「やれやれ、君は本当に、何でもお見通しなんだな……」
イーホウは、カールが座っているカウチのそばまで移動し、カールの横に座る。それから話を続ける。
「どうだい、姉さんとの関係は?」
「相変わらず、という感じかな」
「じゃ、悪いんだな」
「(カール、苦笑い)おいおい、さっきの仕返しか?」
「まぁね。それで、今日の用事はペアだけかい?」
「いや、違う。二つあるんだがね、まず一つ目は、これさ」
カールは服の内側から袋を取り出し、そこから金属板を出す。それは、ギンたちの金属板とよく似た形、色をしたものに思える。イーホウはそれを見て驚く。
「君、これは?」
「この間、ひょんなことから手に入れてね。昨日こっちに来たのは、これを君に見せようと思ったからなんだ。でも留守だっただろう」
「だから今日、改めて来たってわけか」
「これが何だかわかるかい?」
「まぁ待ってくれ、ちょっと説明したいことがあるんだ。こっちに来てくれ」
イーホウはカウチから立ち上がり、先ほどまで使っていた机に行く。イーホウを追ってカールも移動する。イーホウは机の上の金属片を指さし、カールに見せる。
「あれを見てくれ。君が持ってきた奴とそっくりだろう?」
「これは……!」
「今日の午前、君の友だちだっていう人たちからこれを預かってね」
「ギンたちのことか」
「そうさ。正体は何か、鑑定を頼まれてさ」
「なるほど。しかし、まさか彼らもこれを持っていたとは……」
カールはギンたちの金属板をながめる。そしてあることを思いつく。
「それ、ちょっといいか?」
「うん?」
「そいつに私の板をくっつけてだな……」
カールの手が動き、ギンたちの金属板と自分のそれを組み合わせる。合計三枚の板は、パズルのピースのようにしっかりと合体し、欠けたところのない円形の金属板……メダルが出来上がる。
「イーホウ、どうだ? これで完成だと思うんだが」
「へぇ……。なるほど、一枚のメダルだったアイテムを、三つに分割していたのか」
「これなら正体がわかるだろう?」
「いや、まだだな。これだけじゃ何とも言えないよ」
「そうか……」
「気を落とすなよ。完成したおかげで、表面の模様がはっきりした。これを手がかりにすれば、今より楽に鑑定できる」
「その言葉、信じていいのか?」
「友だちの言葉だぜ? 信じられないのか?」
「そんなことはあり得ない」
「なら、大船に乗ったつもりでいてくれよ。力の限り頑張るから」
「ありがとう、イーホウ。でも、無理はするなよ?」
「わかっているさ」
二人は顔を見合わせる。両者、自然と笑みがこぼれる。カール。
「これだけでも来たかいがあったというものだ」
「嬉しいかい?」
「当たり前だろ?」
「でも、その気持ちを壊して悪いけど……。もう一つ、用事があるんだろ? それを済ませなきゃ、完全には喜べないぜ」
「……そうだな……」
カールは軽くため息をつき、壁際へ行き、そこへ背中をつけてもたれかかる。そして、言うべきことを言う。
「メーユイさんのことでね。その、率直にいえば……。デートに誘いたいんだ」
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