迷宮の中の青春 -Soldiers of Fortune-

夏野かろ

文字の大きさ
45 / 55
第2部 闇に死す

第9話-1 冒険者レベル5

しおりを挟む
 メダルについての情報を手に入れた日の翌日。新たな冒険に必要なものを購入するため、ギンたちとカールは街へ繰り出した。今、ギンとカールは、彼ら二人のみで行動している。冒険者向けの雑貨店、小ぎれいな店内。二人は様々な商品をながめている。ギン。

「カールさん、他に必要なものって、何がありますか?」
「そうだな……。いざという時のための回復アイテムがあればいいんだが。どうだろう……」

 二人は店内を移動し、よさそうな物がないか探して回る。その結果、小さくて青い水晶を発見する。
 ギンはそれを手に取って、色々と観察してみる。形について語るなら、道端に落ちている小石のような、何の特徴もない様子である。表面はキレイに磨かれているものの、少しザラザラした部分がいくつか存在している。
 カールがそれについてコメントする。

「それは癒しの水晶だな。一回きりの使い捨てで、パーティー全体の体力と魔法力を回復してくれる」
「便利ですね……」
「全回復するわけじゃない。少しだけだよ」
「でも、これがあったら安心ですよ」
「確かにね……」

 カールは値札を見る。一つ2万マー。

「ギンくん、それ、ちょっと見せてくれないか?」
「どうぞ(手渡す)」
「うん……(観察する)」
「どうですか?」

 カールはため息をしながら言う。

「この質で2万は、ちょっとね……。割高だな」
「そうですか……」
「もう少し安ければね……」

 その時、誰かが二人の後ろから声をかける。二人は振り向く、そこには店主と思しき人間族の中年男性がいる。彼は話し出す。

「いかがです、それ? いい品でしょう?」

 カールが返事をする。

「えぇ、いい品ですよ。といっても、もう少し安ければの話ですが」
「いやいや、お客さん。それでかなり安くしてるんで……」
「そうかな。ところで店主、私は冒険者レベル5なのだが……」
「5?」

 店主は少し驚く。カールは腰につけている小型バッグから小さな金属板を取り出し、言う。

「確かめてみますか?」
「それじゃ、失礼して……(板を受け取る)」

 店主は金属板に少し魔法力をこめる。魔法で書かれた文字が板の表面に浮かび上がる。

「(板を見ながら)……これはこれは……」
「信じていただけますか?」
「えぇ、えぇ、もちろんですとも!」
「これを二つ買う代わりに、少し割引……というのはいかがですか?」
「お客さん、なかなか上手ですねぇ……。でも、こちらも商売なんで」
「そこをどうにかお願いしたいのです」
「へぇ……」

 結局、ギンたちは水晶二つを計3万マーで購入した。彼らは店の外へ出て、街の通りを歩き出す。ギンは少し興奮しながら言う。

「やっぱり、レベル5は凄いですね! あの店主が手のひら返しちゃって、びっくりです!」
「そんなに褒めたって、何も出ないよ」
「いえ、ホントもう、びっくりですよ! 俺たちもあれから強くなって、今はレベル4ですけど、やっぱ5は憧れますね!」
「私が言うのもなんだが、5になれる人は少ないからね。そりゃ、あぁいうお店の人は値引きしてくれるさ」
「強い人を優遇して、そのかわりにコネを作る」
「そうすれば、貴重なアイテムを売ってくれるかもしれない。あるいは、高い物を買ってくれるかもしれない」
「結局、レベルが物を言いますよね」
「悲しいが、それが現実だ」
「はい……」

 しばらくの間、二人は無言で歩き続ける。不意に、ギンは言う。

「俺、金持ちになりたくて家を飛び出して、冒険者になって。あの頃はバカでした、冒険者って儲かると思ってたんです。現実は、ぜんぜん違った。食べてくだけで精一杯でした」
「私も、駆け出しの頃は辛い生活だったよ」
「それでも俺、へこたれてたまるか、そう思って頑張って。やっとレベル4になれたんです」
「うん」
「カールさん。よかったら、俺と手合わせしてもらえませんか?」
「手合わせ?」

 二人は立ち止まる。ギンはカールの顔を真っすぐ見ている。ギンは言う。

「カールさんと別れた後、俺、頑張って修行しました。今は昔よりずっと強い、そう思います。でも、どれくらい強くなったか、はっきり実感できなくて」
「それで、私を相手に戦って、腕試し……というわけか」
「ダメですか?」

 カールは笑いながら言う。

「OKだ。やろう、私も、少し体を動かしたいと思っていたんだ」
「ありがとうございます!」

 ギンは頭を下げる。そして、続けて言う。

「冒険者組合に行って、訓練場を借りて戦うってのはどうですか?」
「いいね。それでいこう」
「じゃ、さっそく行きましょう! 方角はこっちですよね?」



 二人は歩き出す。勝負への緊張感を胸に秘めながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...