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第2部 闇に死す
第8話-2 無事を祈ります
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数分後、メーユイの部屋の前。カールはメーユイに会って、話をしている。彼は言う。
「そういうわけで、あの塔へ行くことになったんだ」
「すぐに行くつもりなの?」
「当り前です。面白そうな話があれば、後先考えずに飛びつく。それが冒険者という生き物なんですから」
「そう……」
メーユイは少し悲しそうな顔をする。カールは彼女を慰める。
「すぐに戻って来ます。大丈夫、大したことなんて起きやしない」
「そうだといいけれど」
「なぜそう、不安がるんです?」
「いや、不安というわけじゃなくて、うん、それもあるけど……。しばらくの間、あなたに会えない。それが嫌で……」
「……」
カールは迷う、何を言うべきかを。彼は気まずくなるのを避けたいと思う、そのために、以前からの計画を打ち明けることにする。
「メーユイさん。今度の冒険、もしかたら沢山のお金が手に入るかもしれないんです」
「本当?」
「100%そうなると決まっているわけじゃないですよ。空振りに終わって、何の収穫もなく帰ってくるかもしれない。でも、上手くいけば大儲けです」
「それで……?」
「聞いてください、メーユイさん。もし大儲けできたなら、私と結婚して欲しいんです」
結婚、この言葉はメーユイを驚かせる。
「結婚……!」
「はい。私はもう、今の生活に疲れたんです。引退したいんですよ。あなたと結婚して、冒険者をやめて、ただの市民になりたい。最後の冒険で稼いだお金を元手に、何か商売を始めて、今後はそれを職業にして生きていきたい。そう思っているんです」
カールは真剣な眼差しでメーユイを見つめる。メーユイは大きくため息をつく。
「ふぅ……。カールさん、あなたねぇ……。そんな大事な話、何も今、こんなところで切り出さなくたって……」
「すみません。今この瞬間こそ、打ち明けるタイミング。そう感じて……」
「まったく、肝心なところでダメなんだから……」
メーユイは苦笑いして、言う。
「ふふ、素敵な話……。そうね、前向きに考えておきましょうか。前向きにね」
「じゃあ……?」
「返事は、あなたが無事に帰ってきてからですよ。私はね、お金のことはそんなに心配してません。それより、あなたのことが心配。ねぇ、約束して。何事もなく帰ってくるって」
「はい」
「あなたが私との約束をちゃんと守って、たとえ大損したっていい、とにかく冒険から無事に帰ってきてくれたら……。その時は、結婚しましょう? ね?」
「はい……!」
「そうだ、これをあげましょう」
メーユイは、首からネックレスを取り外す。それは、前のデートでカールからプレゼントされた、アメシストつきのあのネックレス。彼女は言う。
「あなたからもらった物をあなたにあげるって、何か変な感じもするけれど。とにかく、これを持っていって。魔除けの力があるんでしょう、危険なことがあったって、これが守ってくれるはずです」
「いや、でもこれは……」
「いいから、持っていって。もし私に返したいなら、まずあなたが無事に帰ってくるんです。わかった?」
メーユイの目は真剣な色をしている。彼女の手にあるネックレス、紫に光っているアメシスト。カールはそれを見る、「じゃあ……」、言いながら手を伸ばし、それを受け取る。メーユイは言う。
「本当、無事でいてください。絶対、無事に帰ってきて。約束、約束ですよ?」
「はい!」
「そうだ……」
メーユイは自分の片手を伸ばし、カールの片手をつかむ。そのままそれを自分へと引き寄せ、胸のふくらみの上に置く。カールの顔は驚く。
「あの、ちょっと……」
「あなたが無事に帰ってこられたら、この服の下にある二つのお宝は、全部あなたのものになるんです。お金なんかよりこっちのほうが、よっぽどお宝でしょう?」
「はは……」
「何度でも言います。絶対、無事に帰ってきて」
「はい」
「よくお芝居なんかで、戦争に行く前日、男が女に言うでしょう。
”この戦いから帰ってこられたら、君と結婚したい”
そんなこと言う人って、たいてい死んでしまって、結婚できないものだけど。私は、そういうのは嫌い。あなたはちゃんと帰ってきて、こういうお芝居のお約束を壊すんです。わかった?」
「はい!」
「頑張って。幸運がありますように。早く帰ってきてね……?」
そう言って、メーユイは少し寂しそうに笑った。
アメシストは何も言わずに光り続けている……。
「そういうわけで、あの塔へ行くことになったんだ」
「すぐに行くつもりなの?」
「当り前です。面白そうな話があれば、後先考えずに飛びつく。それが冒険者という生き物なんですから」
「そう……」
メーユイは少し悲しそうな顔をする。カールは彼女を慰める。
「すぐに戻って来ます。大丈夫、大したことなんて起きやしない」
「そうだといいけれど」
「なぜそう、不安がるんです?」
「いや、不安というわけじゃなくて、うん、それもあるけど……。しばらくの間、あなたに会えない。それが嫌で……」
「……」
カールは迷う、何を言うべきかを。彼は気まずくなるのを避けたいと思う、そのために、以前からの計画を打ち明けることにする。
「メーユイさん。今度の冒険、もしかたら沢山のお金が手に入るかもしれないんです」
「本当?」
「100%そうなると決まっているわけじゃないですよ。空振りに終わって、何の収穫もなく帰ってくるかもしれない。でも、上手くいけば大儲けです」
「それで……?」
「聞いてください、メーユイさん。もし大儲けできたなら、私と結婚して欲しいんです」
結婚、この言葉はメーユイを驚かせる。
「結婚……!」
「はい。私はもう、今の生活に疲れたんです。引退したいんですよ。あなたと結婚して、冒険者をやめて、ただの市民になりたい。最後の冒険で稼いだお金を元手に、何か商売を始めて、今後はそれを職業にして生きていきたい。そう思っているんです」
カールは真剣な眼差しでメーユイを見つめる。メーユイは大きくため息をつく。
「ふぅ……。カールさん、あなたねぇ……。そんな大事な話、何も今、こんなところで切り出さなくたって……」
「すみません。今この瞬間こそ、打ち明けるタイミング。そう感じて……」
「まったく、肝心なところでダメなんだから……」
メーユイは苦笑いして、言う。
「ふふ、素敵な話……。そうね、前向きに考えておきましょうか。前向きにね」
「じゃあ……?」
「返事は、あなたが無事に帰ってきてからですよ。私はね、お金のことはそんなに心配してません。それより、あなたのことが心配。ねぇ、約束して。何事もなく帰ってくるって」
「はい」
「あなたが私との約束をちゃんと守って、たとえ大損したっていい、とにかく冒険から無事に帰ってきてくれたら……。その時は、結婚しましょう? ね?」
「はい……!」
「そうだ、これをあげましょう」
メーユイは、首からネックレスを取り外す。それは、前のデートでカールからプレゼントされた、アメシストつきのあのネックレス。彼女は言う。
「あなたからもらった物をあなたにあげるって、何か変な感じもするけれど。とにかく、これを持っていって。魔除けの力があるんでしょう、危険なことがあったって、これが守ってくれるはずです」
「いや、でもこれは……」
「いいから、持っていって。もし私に返したいなら、まずあなたが無事に帰ってくるんです。わかった?」
メーユイの目は真剣な色をしている。彼女の手にあるネックレス、紫に光っているアメシスト。カールはそれを見る、「じゃあ……」、言いながら手を伸ばし、それを受け取る。メーユイは言う。
「本当、無事でいてください。絶対、無事に帰ってきて。約束、約束ですよ?」
「はい!」
「そうだ……」
メーユイは自分の片手を伸ばし、カールの片手をつかむ。そのままそれを自分へと引き寄せ、胸のふくらみの上に置く。カールの顔は驚く。
「あの、ちょっと……」
「あなたが無事に帰ってこられたら、この服の下にある二つのお宝は、全部あなたのものになるんです。お金なんかよりこっちのほうが、よっぽどお宝でしょう?」
「はは……」
「何度でも言います。絶対、無事に帰ってきて」
「はい」
「よくお芝居なんかで、戦争に行く前日、男が女に言うでしょう。
”この戦いから帰ってこられたら、君と結婚したい”
そんなこと言う人って、たいてい死んでしまって、結婚できないものだけど。私は、そういうのは嫌い。あなたはちゃんと帰ってきて、こういうお芝居のお約束を壊すんです。わかった?」
「はい!」
「頑張って。幸運がありますように。早く帰ってきてね……?」
そう言って、メーユイは少し寂しそうに笑った。
アメシストは何も言わずに光り続けている……。
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