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第1章 下流階級で低収入の俺が本気出したら無双してしまった
第4話 ホワイト・ダンジョン Contaminated hospital
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俺たちはタワー内部に足を踏み入れる。BGMが切り替わり、クラフトワークが作曲したような音楽が流れだす。
心を不安にする単調なメロディが何度も何度も何度も繰り返し繰り返し繰り返し。
このゲームはいつもこんな調子だ。そうでなきゃハードロックやヘヴィメタル。年がら年中、ロックンロールだ。
俺はあたりを見回して様子をうかがう。どこもかしこも真っ白で清潔、まるで病院だ。もっとも、医者も看護師もいないがな。
このぶんだと敵はいないだろう。一階のザコなんて大したことないが、大量にやってくるとうざったいからな。用心に越したことはない。
唐突にアンズさんが言う。
「みんな、装備は?」
俺が返す。
「いつも通りですよ。ハンドガンとビーム・ソード」
言いつつ、念のためにステータス画面を開いて確認する。
右足のホルスターに入っている愛用のハンドガン、ベレッタのM92。『ダイ・ハード』で主人公が使ってたやつだ。カッコいいよな。
腰にも同じのをつけてある。このゲームは低確率でジャムるから、予備がないと怖いんだよ。
そしてビーム・ソード、略してソードだが、こいつは普段はただの筒だ。ガンメタルの色をした金属の筒。それが右足に着けてある。
使うときはこの筒を手で握る。すると筒の先から光り輝く剣身が飛び出す。『スター・ウォーズ』に出てくるアレの類似品だよ。
俺が使ってるモデルはラファールって名前だ。フランス語で”疾風”って意味らしい。だから振る速度が早い。
性能的にはもう時代遅れになりつつある。じゃあなんで使ってるかって、コスト・パフォーマンスがいいからだよ。
あれ、言わなかったか? レヴェリー・プラネットは課金要素があるゲームだぞ。
今どきのゲームじゃそんなの当たり前だろ。武器も防具も特別スキンも、欲しけりゃ課金だ。
まぁそれだけじゃ無課金が寄りつかないんで、モンスターから得られる素材を集めれば、課金アイテムと同じものを作れるようになってるがな。
とはいえその道のりは地獄だ。完成まで一ヶ月ぐらいかかる。そして完成した数日後、ずっと高性能な新型が売り出されるなんて笑い話が日常茶飯事だ。
結局、買ったほうが早いんだよ。だから俺もたまに課金してあれこれ買ってる。
もっと金があれば、ラファールなんてお払い箱にしてるんだが。低収入の俺じゃ、これよりいいのは買えないぜ。チッ。
まぁ長話はこれくらいにしておこう。俺はアンズさんに聞く。
「アンズさんの装備はなんですか?」
「あたしもいつも通りだよ。ハンドガンとビーム・ソード」
「マサキングは?」
「へへ……。実は、新しいソードを買ったんだ」
「マジ?」
「おう! 見ろ、スカージだ……」
奴は自慢そうな顔をしながらそいつを取り出す。青白く輝く剣身が静かに出現する。
スカージ(scourge)。天罰って意味だったか? こないだ発売されたばかりの最新型のソードだ。斬りつけるたびに電撃を放ち、低確率で相手を気絶させる。
「カッコいいだろ?」
「……別に?」
「なんだよ、嫉妬かよ」
「うっせぇな……」
アンズさんが割って入る。
「ほら、そこまで。ケンカしないでちゃっちゃと行こう!」
少しいらついたように彼女は言い、またもや自分だけで歩きだす。
俺は「すんません!」と謝り、彼女の後についていく。マサキングの野郎も「まったく……」なんて言いながら歩き始める。
にしても、スカージか。あの輝く剣身は、カッコよさだけじゃなく美しさすら感じるぜ。
ラファールがダサいなんて決して思っちゃいないけど、それでもやっぱ、向こうのほうが良さそうに思えてくる。くそっ、金さえありゃ俺だって……。
心を不安にする単調なメロディが何度も何度も何度も繰り返し繰り返し繰り返し。
このゲームはいつもこんな調子だ。そうでなきゃハードロックやヘヴィメタル。年がら年中、ロックンロールだ。
俺はあたりを見回して様子をうかがう。どこもかしこも真っ白で清潔、まるで病院だ。もっとも、医者も看護師もいないがな。
このぶんだと敵はいないだろう。一階のザコなんて大したことないが、大量にやってくるとうざったいからな。用心に越したことはない。
唐突にアンズさんが言う。
「みんな、装備は?」
俺が返す。
「いつも通りですよ。ハンドガンとビーム・ソード」
言いつつ、念のためにステータス画面を開いて確認する。
右足のホルスターに入っている愛用のハンドガン、ベレッタのM92。『ダイ・ハード』で主人公が使ってたやつだ。カッコいいよな。
腰にも同じのをつけてある。このゲームは低確率でジャムるから、予備がないと怖いんだよ。
そしてビーム・ソード、略してソードだが、こいつは普段はただの筒だ。ガンメタルの色をした金属の筒。それが右足に着けてある。
使うときはこの筒を手で握る。すると筒の先から光り輝く剣身が飛び出す。『スター・ウォーズ』に出てくるアレの類似品だよ。
俺が使ってるモデルはラファールって名前だ。フランス語で”疾風”って意味らしい。だから振る速度が早い。
性能的にはもう時代遅れになりつつある。じゃあなんで使ってるかって、コスト・パフォーマンスがいいからだよ。
あれ、言わなかったか? レヴェリー・プラネットは課金要素があるゲームだぞ。
今どきのゲームじゃそんなの当たり前だろ。武器も防具も特別スキンも、欲しけりゃ課金だ。
まぁそれだけじゃ無課金が寄りつかないんで、モンスターから得られる素材を集めれば、課金アイテムと同じものを作れるようになってるがな。
とはいえその道のりは地獄だ。完成まで一ヶ月ぐらいかかる。そして完成した数日後、ずっと高性能な新型が売り出されるなんて笑い話が日常茶飯事だ。
結局、買ったほうが早いんだよ。だから俺もたまに課金してあれこれ買ってる。
もっと金があれば、ラファールなんてお払い箱にしてるんだが。低収入の俺じゃ、これよりいいのは買えないぜ。チッ。
まぁ長話はこれくらいにしておこう。俺はアンズさんに聞く。
「アンズさんの装備はなんですか?」
「あたしもいつも通りだよ。ハンドガンとビーム・ソード」
「マサキングは?」
「へへ……。実は、新しいソードを買ったんだ」
「マジ?」
「おう! 見ろ、スカージだ……」
奴は自慢そうな顔をしながらそいつを取り出す。青白く輝く剣身が静かに出現する。
スカージ(scourge)。天罰って意味だったか? こないだ発売されたばかりの最新型のソードだ。斬りつけるたびに電撃を放ち、低確率で相手を気絶させる。
「カッコいいだろ?」
「……別に?」
「なんだよ、嫉妬かよ」
「うっせぇな……」
アンズさんが割って入る。
「ほら、そこまで。ケンカしないでちゃっちゃと行こう!」
少しいらついたように彼女は言い、またもや自分だけで歩きだす。
俺は「すんません!」と謝り、彼女の後についていく。マサキングの野郎も「まったく……」なんて言いながら歩き始める。
にしても、スカージか。あの輝く剣身は、カッコよさだけじゃなく美しさすら感じるぜ。
ラファールがダサいなんて決して思っちゃいないけど、それでもやっぱ、向こうのほうが良さそうに思えてくる。くそっ、金さえありゃ俺だって……。
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