73 / 227
第4章 現代の監視社会における具体的な監視方法とその運用の実態について
第70話 情報局、特別調査室 Geheime Staatspolizei
しおりを挟む
国民安全保障特別委員会、通称リトル・マザー。LM。彼女はいかにして監視社会を作り、運営しているのか?
それを理解するには、彼女直属の諜報機関である情報局について知ればいい。
情報局の特別調査室に勤める男性スタッフ、理堂真彦(りどう まさひこ)の生活を追っていこう。
まだ新人である彼が監視の知識を得る時、あなたもまた、彼と同様にそれを得るだろう。
情報局が存在するビルの中に、特別調査室の人間しか入れない区画がある。理堂は急ぎ足でそこに入り、会議室の電子錠にIDカードをかざす。
ドアが開き、彼は入室する。そこにはパーティションで仕切られたブースがいくつかあり、それらの中には一脚ずつ安楽椅子が置かれている。
理堂は手近なブースに入り、棚に荷物を置いてから椅子に座る。背もたれを倒し、まるで床屋で顔剃りをしてもらう時のような体勢になる。
そのまま頭の近くにある小さな箱へ手を伸ばし、箱から出ているコードを手にする。
コードを左耳のソケットに挿す。目を閉じ、意識を集中する。
椅子に搭載された各種装置が働き始め、理堂の脳波を読み取り、電気信号へと変換してサーバーへ送っていく。
なんとも大げさな描写だが、ようは民間人がVRMMOに繋ぐ時と同じことを有線でやっているに過ぎない。
ただし、このサーバーには危険人物を排除するセキュリティ・システムが備わっている。もし身分確認に失敗すれば、椅子が強烈な電気を流し、理堂の脳を焼いて殺す。
緊張を感じながら理堂はサーバーにアクセスする。身分確認が始まる。
"Connecting...identify...OK...permit"
成功だ。無事にサーバー内に入った。あとは上司である大伝馬玄武(おおでんま げんぶ)のもとへ駆けつければいい。
理堂の姿がチャット・ルーム内に現れる。すぐさま大伝馬が軽い怒声をあげる。
「遅いぞ!」
「すみません!」
「ったく、どうした?」
「来る途中、チーフに呼ばれたんです」
「チーフに?」
「大伝馬さんに話があるから、後で来て欲しいって……」
「話の腰を折って悪いがな。俺のことはデンマでいいって前に教えただろ? いちいちオオデンマなんて長たらしいだろうが」
「すみません」
「で、チーフの話ってのは?」
「俺も詳しいことは聞いてません。なんでも極秘事項とかで……」
「ふぅん……。だったらそいつは横に置いとこうや。それより、授業を始めるぞ」
それを理解するには、彼女直属の諜報機関である情報局について知ればいい。
情報局の特別調査室に勤める男性スタッフ、理堂真彦(りどう まさひこ)の生活を追っていこう。
まだ新人である彼が監視の知識を得る時、あなたもまた、彼と同様にそれを得るだろう。
情報局が存在するビルの中に、特別調査室の人間しか入れない区画がある。理堂は急ぎ足でそこに入り、会議室の電子錠にIDカードをかざす。
ドアが開き、彼は入室する。そこにはパーティションで仕切られたブースがいくつかあり、それらの中には一脚ずつ安楽椅子が置かれている。
理堂は手近なブースに入り、棚に荷物を置いてから椅子に座る。背もたれを倒し、まるで床屋で顔剃りをしてもらう時のような体勢になる。
そのまま頭の近くにある小さな箱へ手を伸ばし、箱から出ているコードを手にする。
コードを左耳のソケットに挿す。目を閉じ、意識を集中する。
椅子に搭載された各種装置が働き始め、理堂の脳波を読み取り、電気信号へと変換してサーバーへ送っていく。
なんとも大げさな描写だが、ようは民間人がVRMMOに繋ぐ時と同じことを有線でやっているに過ぎない。
ただし、このサーバーには危険人物を排除するセキュリティ・システムが備わっている。もし身分確認に失敗すれば、椅子が強烈な電気を流し、理堂の脳を焼いて殺す。
緊張を感じながら理堂はサーバーにアクセスする。身分確認が始まる。
"Connecting...identify...OK...permit"
成功だ。無事にサーバー内に入った。あとは上司である大伝馬玄武(おおでんま げんぶ)のもとへ駆けつければいい。
理堂の姿がチャット・ルーム内に現れる。すぐさま大伝馬が軽い怒声をあげる。
「遅いぞ!」
「すみません!」
「ったく、どうした?」
「来る途中、チーフに呼ばれたんです」
「チーフに?」
「大伝馬さんに話があるから、後で来て欲しいって……」
「話の腰を折って悪いがな。俺のことはデンマでいいって前に教えただろ? いちいちオオデンマなんて長たらしいだろうが」
「すみません」
「で、チーフの話ってのは?」
「俺も詳しいことは聞いてません。なんでも極秘事項とかで……」
「ふぅん……。だったらそいつは横に置いとこうや。それより、授業を始めるぞ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる