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第5章 上流階級の優雅で華麗な日々

第86話 暗殺計画 The richer you are, the unsafer you become

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 俺は会社の受付係に事情を話し、パパの部屋があるフロアへ行く。
 いつもの調子で入室する。机で書類仕事をしているパパは、俺に気づき、あいさつしてくる。

「よく来たな。まぁ椅子に座れ……」
「いきなり呼び出して、なんかあったの?」
「情報局から秘密の手紙が来た。いや、ちょっと待て……」

 パパは机上の機械をいじる。俺の背後で音がして、何枚かの秘密ドアが降りる。
 これらのドアは、電波を遮ることで盗聴器を無意味化する。他にも様々な機密保護の仕組みがあるらしいが、詳しくは知らない。それよりも話を進めよう。

「パパ、ここまでするほど重大な話なの?」
「なにせ命に関わる話だ。念には念を入れんとな」
「命……?」
「本題の前に質問するが、新宿のテロを覚えてるか?」

 さっきニュースでいってたことを思い出せばいいわけだ。

「武装戦線がやったっていう、あれでしょ」
「そうだ。情報局の手紙によると、奴らの次のテロ計画は暗殺。そして、暗殺候補の一人として、お前の名前が挙がっているらしい……」

 ……マジ? マジで?

「はは、嘘でしょ?」
「局がわざわざ伝えてきた話だぞ? 嘘なわけがない」
「……(顔面蒼白)」
「まぁ落ち着け。手紙を読んだ限り、お前が狙われると確実に決まったわけではない。他の誰かが犠牲者になる可能性も充分にあり得る」
「でもリスクがあるって事実はその通りじゃん! どうしたらいいの?」
「問題が解決するまで、おとなしくするしかないな。
 外出を控え、なるべく家で過ごすようにして、どうしても出かけるなら必ずボディーガードを連れていく。他にも……」
「いやだよ、ボディーガードなんて! うっとうしい!」

 パパは渋い顔で説得を始める。

「仕方ないだろう、お前。命にはかえられんよ」
「でもさ……!」
「テロリストがいつどこで襲ってくるかわからん以上、常に警戒するしかない。だったら、多少の不自由は我慢すべきだ。分かるだろう?」
「そうだけど、いや、もぅ……! クソッ!」

 ちくしょう! あんなクズどものせいで、俺の自由が狭まるだって? そんなん冗談、死んでも認められるもんか!
 世間にはごまんと金持ちがいるのに、なんでよりによって俺がこんな目に? こんなのおかしいよ!

 これだから金持ちの生活は大変なんだ。今回みたいにテロのターゲットにされたり、誘拐されたり、いつも危険と隣り合わせの人生を強いられる。
 貧乏人はそんな苦労なんて想像すらしないだろう。そのくせ金持ちを、搾取するブルジョワだのなんだの、ボロクソ言うんだから、心底ムカつくね!

 世の中はどうしてこうも理不尽なんだろう? いじめられるのはいつだって金持ちだ。
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