VRMMO レヴェリー・プラネット ～ユビキタス監視社会～

第５章 上流階級の優雅で華麗な日々

第８５話 誰が社会を支えているのか Government of, by, for the people

　議長の話は続く。

「リトル・マザーはテロを許しません。そして、一連の出来事のきっかけがデモであったことを考え、次のように提案します。
　デモに関する新たな法律を制定しましょう。さもないと、またデモで死者が出てしまいます」

　ふーん。要するに規制強化だろ？　まったく、このババアはいつだって国民の自由を奪いたがる！　ビッチ！

「もちろん、これは慎重に検討すべきです。規制は言論の自由を狭めることになるのですから。
　しかし、どうかよく考えてください。危険なデモをなくすことと、言論の自由、どちらが大切でしょうか？
　デモは命に関わります。けれど、言論の自由がすこし減った程度で、その影響は小さなものです。ならば規制を進めるべきでしょう」

　どうせそんなのは建前だ。マザーの狙いは、自分に反抗的な奴らをぶちのめす合法的な理由を手に入れること。それ以外に何がある？

「強くお伝えしたいのは、委員会は全てのデモを無くすつもりではないということです。
　憲法によって言論の自由が保障されている以上、デモを通じて意見を表明する機会もまた、保障されるべきです。
　我々はただ、暴力的で危険なデモ、それのみを無くしたいと考えているだけです。どうかその点を覚えておいてください。
　それでは、発表を終わります」

　いいんじゃねぇの。俺は規制に賛成だね。
　そもそも、たとえ平和的なものであろうと、デモなんて必要なのか？　あんな馬鹿騒ぎは社会を不安定にするだけで、まったく無意味だぜ。

　庶民という貧乏人集団はマヌケ揃いだ、デモで民意を示せばそれが政治に反映されると考えてる。
　クズめ！　国家や社会をゲームに例えれば、金持ちの意見がまず反映されて当然だとわかるだろうが！

　ゲームは重課金者がたっぷり支払うおかげで成り立つ。だから運営は、重課金者の満足を最優先に考える。無課金や微課金は後回しだ。
　国家だって同じこと。それは高所得者の納めた税金で運営される、だから高所得者の満足が最優先されるに決まってる。

　貧乏人がいくらデモをしようと、お前らはいつだって後回しだ。どうしてそれが分からない？
　心底イライラしてくるぜ。こんなことになるなら、やっぱラジオ止めりゃよかったな……。

　まぁいい、そろそろ到着だ。パパから何か楽しい話を聞いて、気分を変えよう。