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第5章 上流階級の優雅で華麗な日々

第95話 索敵 Wandering

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 サンドマンが叫ぶ。

「おらぁッ!」

 彼の愛銃、シグザウエルP226が火を噴き、右手のスネイルのHPを削りとる。
 このぶんならすぐ片付くだろう。後は左の2匹を始末すればいい。俺はベレッタ92の銃口を向け、仲間たちに言う。

「チャンスだ! 撃て!」

 一斉攻撃が始まり、スネイルたちが死亡する。メセドナがしけた顔で言う。

「つまんないの……。弱すぎ」

 そりゃそうだ。俺らの実力からしたら、スネイルなんぞ現実のカタツムリと大差ないんだから。
 サンドマンがメセドナに返す。

「今回はモンハンしに来たわけじゃないんだ、しょうがないだろ」
「わかってる。狙いはあくまでスエナ」
「そうそう」
「あいつもアホだよね。わざわざ”キメラ”でモンハンして、あたしらを怒らして……」
「どうせ、誰か来たら逃げるつもりだったんだろ。よくある話じゃねぇか」

 時間は貴重だってのに、何をムダ話してるんだか。俺はイラついて割りこむ。

「ほら、さっさとドロップ拾ってさ。スエナを探しに行こうぜ!」

 間の抜けた声でメセドナが「あいよ」と返事する。はぁ、こんな調子で大丈夫なのか、本当に……。



 湿原のところどころには大きな岩が転がっている。下民地区のボロい一軒家ぐらいにはでかいサイズだ。
 目立つものが道しるべがわりに使われるのは、リアルでもプラネットでも同じこと。だからここを冒険する時は、手近な岩を頼りに進んでいくことになる。

 しかも、こういうオブジェクトのまわりにはモンスターが沸きやすい。必然的にそれを狩るワンダラーも集まりやすい、樹液にカブトムシが集まるようなものだ。
 そんなわけだから、サンドマンは「どこかの大岩にスエナがいる可能性は高い」と主張する。

 まぁその考えには賛成だけど、だからってすぐ見つかるものか。
 案の定、時間だけが無駄に過ぎていき、いったん俺たちは丘の上で小休止を取ることにした。

 こりゃ、今日の冒険は失敗かも。そう思い、俺は隣のモヒカン頭に話しかける。

「なぁ、もうお開きにしたほうがよくないか?」

 小さな双眼鏡で眼下の景色を見ているモヒカンは、ニヤリと笑い、言う。

「へへ……。そりゃ良くねぇよ」
「なんで?」
「奴を見つけたぜ! ほら、あの岩のとこ。覗いてみろ……」

 モヒカンが双眼鏡を放って寄越す。受け取った俺は、そいつを使って言われた場所を見る。
 なるほど。確かにスエナの姿が見える、仲間と一緒に休憩中らしい。双眼鏡を下ろし、みんなへ振り返ってたずねる。

「おい! ようやくマト(※標的、的)が見つかったが……。どうする?」

 即座にメセドナが「とっととやっちゃおう!」と答える。だがサンドマンの意見はこうだ。

「まぁ待て。ここはPK禁止ダンジョンだぜ、いつものやり方じゃ殺せねぇ。忘れたのか?」
「わかってるよぉ」
「ったく……。いいか、よく聞け。分裂するモンスターを探すんだ」
「具体的には?」
「そのへんにそれっぽいのがいるだろ。ほら、作業開始だ! ゴー、ゴー!」

 なんつーいい加減な指示だ。こういう時、レーヴェがリーダーだったら……。
 いや、嘆くのはよそう。ベストを尽くせばそれなりの結果になるさ。そう信じる。
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